表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
TS転生した吸血鬼が色んな血を取り込み平和に暮らしたい冒険譚  作者: 月姫ステラ
4章 転移者と転生者
69/84

テスタレスでの調査という名の観光 その2

遅れましたm(*_ _)m

テスタレスの冒険者ギルドの内部にはそんな技術が備わっているという事を知ったイリアは、少し技術力に関心しつつも、受付の所に向かう。


「ねぇ、私が受けられそうな依頼、あるかしら。」


ふと声をかけられた受付嬢はハッとした後、2つほど依頼書を見せてくれた。


ひとつは大枢機卿の護衛だ。この国には王族は居ないものの、海洋将軍と大枢機卿の2人が取りまとめているそうで、そのツートップのうちの一人の護衛だ。


もうひとつの依頼書は国外にある魔神戦争の頃に栄えていた国の遺跡の跡地の調査だ。近くに【死の霧】と呼ばれる窒息効果と猛毒効果、麻痺効果をもたらす霧が蔓延しているため、探索が非常に困難だそうだ。


どちらもランクはS以上が適正となっている。これなら確かにイリアにとってはうってつけの依頼だろう。ただ、大枢機卿の護衛とは言うが何をするのかは分からない。


「ねぇ、この国の大枢機卿ってどんな事をしている人なのかしら。」


返答を少し待った後、受付嬢は答えてくれた。


「このテスタレスにおける大枢機卿は軍部以外の総指揮を任されている重要な人物です。食料生産や職業斡旋、銀行関係など、諸々を管理しています。その多忙さもあって、ストレスに耐えられるメンタルを持ち、かつお金やその他にに目が暮れて不祥事を犯す可能性が限りなく低い人物が軍部の者以外から選ばれます。そしてその候補として挙げられるのが6人の枢機卿です。主に枢機卿6人の報告や大枢機卿の抜き打ちを得て、管理されています。枢機卿はそれぞれ色で呼ばれています。【赤のルシャス】、【緑のチェスター】、【青のモリソン】、【黄のトアトーン】、【白のホドモーク】、【紫のンシャーレ】の6人です。そして大枢機卿は【黒のタレス】と呼ばれています。そして先ほどツートップと言いましたが、この国では教会の数が多いです。【主神ティアース様】と【女神レイシス様】のおふたりをそれぞれ信仰しています。大枢機卿の護衛を受けるならば必ず教会本部を訪れる事になるのでお気をつけ下さい。」


「一応吸血鬼族だから気をつけろーって事よね。長々と説明感謝するわ。それじゃあもうひとつの遺跡の方についても教えて貰えるかしら。」


受付嬢は呼吸を少し整えた後、教えてくれた。


「もうひとつの依頼である遺跡調査ですが、まず大前提として遺跡の破壊工作や盗難などは辞めて欲しいとの事です。それと麻痺、猛毒、窒息の効果をもたらす霧が蔓延していますので、耐性スキルを所持していないのであれば雑貨店にある耐性ポーションを数本ずつ買うことをおすすめします。1本飲めば一日は持ちますので。それと買うものは赤と青と緑のポーションです。前回の調査では人員を抑え目で向かい、1日ほど調査しましたが、中には人間としての原型を留めていない魔物が彷徨いているとの事です。レベルは200程度だと言われています。Sランク以上となっているのはそれが理由となっています。前回の探索はBランク以上での依頼とさせていただいていましたが、その魔物の存在の発覚によりランクをSまで引き上げさせてもらいました。それにより得られる報酬も金貨100枚から金貨1500枚に増額しています。あと、遺跡の調査において取ってきて欲しいものの指定は特にございませんが書物や魔導具などがあれば取ってきて欲しいとの事です。こちらは軍部からのご依頼です。説明は以上となりますが分からない点などあればお答えしますよ。」


「今の聞いた感じ、軍部と枢機卿の依頼が1つずつって事なのね。ところで護衛というのは期間って設定されてるかしら。」


「それが期間の指定が無いんですよね。もしかしたら1ヶ月以上依頼に拘束される場合もありますし。」


「そうなのね…。枢機卿の護衛も良さそうだと思ったのだけれど、期間が長引くとめんどくさいわねぇ。かと言って遺跡の調査なんて、遺跡が脆かったら私が何か魔物に攻撃するだけで破壊しかねないわ。どちらも悩ましい欠点が存在しているわね…。」


(でも大枢機卿の護衛をするという事はもしかしたら軍部と接触があるかもしれないわね。期間は分からないけれどなるべく短いことを願うしかないわね。)


イリアは少し考えた後、大枢機卿の護衛依頼を受注する事にした。受付嬢は依頼書にサインしたのち、イリアに渡す。今から向かってくれて構わないそうだ。


とはいえ、また入口のところに行ってランプを光らせるのはしのびないので、噴水の所まで転移する事にした。


「それじゃあね…。依頼が終わったらまた来るわ。」


イリアは受付嬢を背に噴水前に転移した。


受付嬢は言いそびれていた事があったらしく、冒険者ギルドの扉を開けて名前を呼んだ。


「何か言い忘れていたことでもあったのかしら。」


「最後に1つ言い忘れてました。扉のランプの事ですがイリアさんが通っても光らないようにしておきましたので今後は扉から通っていただいて大丈夫ですよ。あと、中央本部へと向かってください。」


「それは助かるわね。ありがとう。」


イリアは中央本部へと向かった。




■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■




中央本部にて



大枢機卿テュータレスは事務作業をしていた。机の上には書類が山積みとなっており、時折頭を抱えていた。その上、立場としての役割はとても重く、それでいて軍部とは仲がいいのかと問われればある程度均衡を保っているだけだと答えざるを得ない。


「テュータレス様、護衛の依頼を受理した者が現れました。」


「何者だ?」


「Sランク冒険者で【鮮血姫】の2つ名を持つ魔闘士のイリアという者です。」


「聞いた事があるな…容姿端麗でダリオン王国において大狂騒スタンピードの鎮圧を指揮し、魔神を屠ったとされる。」


「聞く限りでは英雄…ですね。ですが本人は王位吸血鬼だ、と公言しているそうです。そして、相手が誰であれ敬語は一切使わないそうです。」


「なんと!?」


「凶獣の階級でありながら冒険者をやっていると。冒険者になってからまだ2年半程だと聞き及んでいます。今こちらに向かっていると報告を受けました。」


「軍部の者に見つからぬよう、裏門へと向かうよう案内してくれ。」


「かしこまりました。」


そういって秘書は部屋を出る。


(これで、軍部との集中会議まで安寧が保たれるやもしれん。あと3日、耐えるのだ。軍部の単独の暴走の原因を突き止めねば。)



中央本部裏口にて




(ここに向かうよう指示されていたわね。誰か待っていたりでもするのかしら。)


イリアが歩みを進めていき、城塞とも呼べる壁にポツンとドアがひとつあった。その近くにおそらくイリアを待っていたであろう女性が立っている。


「お待ちしておりました。Sランク冒険者のイリア様でお間違いないでしょうか。」


「えぇ、そうよ。」と言ってイリアは冒険者証を見せる。女性が冒険者証を拝見する。


「確認しました。ではこちらへ付いてきてください。詳しい依頼内容はテュータレス様の目の前で説明させていただきます。」


「わかったわ。」


イリアは女性について行く。長い廊下を歩き、書庫と思しき部屋へと入る。その中をさらに進み、ひとつの本棚の前に到着する。その女性は本棚の真ん中の1番右の本を奥にやり、本棚の1番左上を手前に動かす。


すると、本棚の横の壁が開き、人二人分が通れるほどの道が出来上がる。そしてその道を通っていくと、先ほど開いていた後ろの道が閉まる。隠し部屋のようだ。


「こちらでございます。」


そう案内されたのは古そうな金属の扉だ。


「テュータレス様、Sランク冒険者のイリア様をお連れしました。」


「入ってくれ。」


「失礼します。」と言ってドアノブをひねりドアを開ける。内開きのようだ。


「お入りください。」と女性がドアを開けたまま案内する。イリアが部屋に入ると、おしりを後ろに向けたままドアを閉める。所作はいいようだ。


そこにいたのは白い髭を生やし、老眼鏡を掛けた厳格そうな老人が座っている。老人は立ち上がり、こちらに挨拶する。


「依頼を受けてもらって非常に助かる。早速依頼内容の説明をしても構わんかね。」


「問題ないわ。」


「では、私から説明させていただきます。イリア様には今日から4日後の軍部との集中会議、そして集中会議終了後の2日間の計6日間の護衛をしていただきます。護衛するのはこちらにおります大枢機卿テュータレス様でございます。

そして護衛の理由としましては、建国されて新しいフィーリアス魔神国に対する軍部の独断専行の宣戦布告の調査でございます。軍部がどのような経緯から宣戦布告をするに至ったのかを調べていただきたいというものでございます。」


「軍部の中で目をつけている人とかっているのかしら。」


「3人おります。1人はこの国のトップのひとりである海洋将軍のジグルド様です。軍部の行動の最終決定の判断を下しています。それでいてここ20年で軍部を急成長させた張本人でもあります。長らく停滞していた軍部の実力を10倍以上も底上げしたのには何かしらバックになにかの存在が居るのでは、というのが枢機卿側の予測となっております。

そして2人目は軍務局の長官であるシュネガー様です。海洋将軍ジグルド様の直属の配下であり、ジグルド様の命令であれば全て請け負う役目を担っています。彼の行動には特に注意していただきたいと思います。

最後に3人目は一兵卒ではありますが、ドルスタン二等兵です。ドルスタン二等兵は、何者かと交易を行い、利益を上げ、それをシュネガー長官へと横流ししているという噂です。二等兵という低階級の者でありながら長官の部屋への入退室が目立っています。

以上、3名の調査依頼と教会へと向かう業務もございますので、テュータレス様の護衛依頼でございます。何か分からないことなどございますでしょうか。」


「なるほどね…。その取引をしているであろう下っ端は、こちらが調べているのが分かったら真っ先に始末されそうな立ち位置ね。それで長官がもみ消す形になりそうね。軍部にもきっと暗部みたいな存在がいるわね。なら長官が何を受け取っているのかを、それで何を話してるのかを盗み聞きでもしようかしら。後は分からない事があるとするなら、大枢機卿の業務の護衛とあるけれど、簡単にどんな業務があるのかしら。」


「それに関してはワシから説明しよう。主な業務は3つだ。軍部との調整と、枢機卿達の業務の指示や業務報告を受けた書類の精査、それと、聖国ヒストリアが融資の元、設置された教会の司祭との対話だ。お主の種族を聞いて、少し懸念があるとするならこの教会内での護衛だ。教会とは神聖な場所で悪を拒む傾向にある。元来、【神聖魔法】に弱い吸血鬼族や悪魔族を排他的に扱う事が少しある。そして救済と謳ってお布施を要求することもあっての、その調整がめんどくさいのだ。それで教会の司祭ともなるとどこも驕りがすぎる事があっての、神聖さの欠片を感じることが出来ぬところがある。もちろん聖国ヒストリア内部の教会ではそのような事はないのだが。」


「軍部との調整で過去にトラブルとかあったりしたのかしら。」


「過去に【闇梟】と呼ばれる軍部所属の暗部がこちらの枢機卿に対し、暗殺未遂を行った事がある。今は武力の均衡は取れているが、もし更に武力をつけた場合、こちらに被害が及び、内部分裂を起こし、軍部による独裁支配を起こしかねない。」


「その【闇梟】に注意するのもひとつなのね。分かったわ。」


「依頼内容の確認は済みました。依頼を受けた者とみなします。これ以降、依頼終了までにバックれるなどの行いをした場合、報酬は無いものと思っていただきます。」


「そこら辺に関しては問題ないわ。」



そしてイリアは護衛依頼を受けたのだった。









評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ