テスタレスでの調査という名の観光 その1
久しぶりの投稿です。原神インパクトにハマり倒して遅れてしまいました。ところで見てくれている方々の中にやってるよーって人居ませんかねぇ…。
テスタレスの内部に入っていく。
中は戦争ムードなのかと思いきや、特に何も無くただ賑わっているだけのようだ。恐らく宣戦布告をした事に気づいているのはまだ国の上層部と軍だけであろう。
「上だけ暴走してる感じかしら。というかこの国になにかした覚え無いのだけれど。」
イリアは一抹の疑問を抱きながらも、調査という名の観光をする事にした。
まず入口の門を通り抜けると、住宅街だろうか。商いをしている店が見当たらない。だが先を見ると噴水が見える。
「水の国ならではの噴水なのかしら。」
噴水のところにたどり着くと、円形に開けており、噴水を囲むように、冒険者ギルドに商業ギルド、雑貨屋などがある。書店もあるようで冒険者ギルドを出た者が書店に入っていく様も見られる。
「まずは雑貨屋を見ていこうかしら。」
イリアは雑貨屋に入店する。ちなみにだが今のイリアの服装は髪の毛は特に結ぶことをせずロングで黒薔薇のようなゴシック系ドレスを着ている。と言っても血液操作で作り出したドレスなのだが。
そして歩く度にコツコツと音が鳴る赤黒いヒールだ。角は生えたままで尻尾と翼はしまっている。
雑貨屋に入ると、客をチラホラと見かけた。10人くらいだろうか。どうやら2階もあるようだ。買い物をしている人も獣人やら人間やらはてにはエルフもいる。
品物を見る。日用品などがズラっと並んでいる棚や、魔力ランプや魔力コンロなど。魔力を注ぐ事で使える家具なども置いてあった。それだけでは無い。馬車まで置いていたのだ。さすがに他の品物よりは価格は高いが、イリアからすると問題なく買える程度の価格だ。というよりも、海洋国家で馬車の使い道はあるのだろうか。買うだけ無駄ではないだろうか。
まぁそんな事は置いておこう。他種族国家なのだろうが今はいい。それよりも目を引くものがあった。
それは横笛だ。ダリオン王国にもレストレリアン王国にもなかった音楽関連の物品がここにあったのだ。
「買うのはこれにしようかしら。」
イリアは横笛を手に取って店員に話しかける。
「ねぇ、そこの店員さん、この横笛が欲しいのだけれど、いくらかしら。」
「それは金貨150枚です。」
「かなり高いわね。何か理由でもあるのかしら。」
「この横笛は金属で出来ているんです。オリハルコンで作られていて非常に丈夫でありながら吹けば七色の音色を奏でるとも言われているんです。あと、この横笛は世界的にも有名な巨匠セルメイダス様によって造られました。その希少性からもこの値段にさせてあります。」
「そう。それじゃこれを買うわ。これで足りるはずよ。」
そう言ってイリアは異空間の中から金貨を取り出して店員の目の前に渡す。店員は数を数え、正確な枚数を数え切ると。
「金貨150枚ちょうどお預かりします。では、どうぞ。」
イリアは巨匠作のオリハルコンの横笛を手に入れた。
早速、この横笛の詳細な情報を知ろうと覗いてみる。
【神秘の横笛】その笛から奏でられる音は虹を彷彿とさせる七色の音色を耳に届ける。オリハルコンが奏者の吹く息を最高率で笛の中に広げることができる。奏者の卓越した腕が求められる。その笛の音を聴いた者の精神状態を鎮静化させる事ができ、ことごとく感動へと持っていくことが出来る。
(なんだか、凄い性能をした笛ね…。配下に確か居たわね。音を操れる魔神が…。帰りにこれを届けてみるのもありね。今は私が持っておこうかしら。)
そして雑貨屋を出て、次に向かったのは書店である。書店に入ると、受付の人が居たので冒険者証を見せる。向かったのは魔法に関する書物のところだ。もしかしたらまだ知らないスキルが手に入るかもしれない。
(そういえば…【言霊】について書かれた本はあるかしら…。)
イリアは色々手に取って本を探す。冒険記やら、記録書やら、図鑑やら色々あるようだ。そしてイリアはとある本を手に取る。
タイトルは、『勇者と大賢者の記録』である。
そこには、当時、魔王エンゲルを退けた勇者とその仲間一行に関する話がのっていた。
勇者と大賢者のみが使えたとされているスキルはいくつかあると記述されている。
【神の衣】:善性の神の衣を見に宿し、己の防御力を極限に高める。
【紫炎】:悪を滅する事に特化した紫色をした炎。
【言霊】:己の実力に応じてあらゆる事象を顕現させる。実力に見合わぬ顕現の場合は己の体力を犠牲にする。
【聖剣奥義:光撃閃斬】光の如き速度で放たれる斬撃により閃光を放つ事もできる。そしてその速度に対応する肉体を得ることが最低条件である。条件が整っていない場合、発動すると同時に己の肉体は爆散する。
この4つらしい。イリアは【言霊】を使用することが出来るが、勇者ではなく魔王だ。もしかしたら【言霊】の使用可能な人物は勇者や大賢者だけではなく。魔王も使えたりするのだろうか。魔王は敢えて使ってこなかったかもしれない。
まぁ、そんなこともあるが、そういえば大賢者はまだ存命していると聞く。もし会うことが叶えば聞いてみてもいいかもしれない。
イリアは書店を後にして、次は冒険者ギルドに入る。
入った瞬間、扉の上にあるランプが紫に点滅した。
なんだろうか、よく分からないがもしかしたら入った人の種族を判断してるのかもしれない。
ランプが紫に点滅するや否や、中に居た冒険者達が背中に担いでいた剣を握り出したり弓を構え出す。
「えーと、これはいったい何かしら。何かの演劇か何か…という訳ではなさそうね…。」
「お前は何者だ。」
「私は冒険者なのだけれど…。ところでこの上のランプが紫に光ったのだけれど、何か分かるかしら。」
「冒険者?よその国の冒険者か?なら知らないだろうな。そのランプは犯罪歴の有無、そしてあった場合の罪状レベルに応じてランプが青、緑、黄、橙、赤、紫、黒に変わる。青は問題ない。犯罪歴が無いって事だ。緑はあるにはあるが、イタズラや衛兵を困らせることをしでかしたやつが来た時に付く色だ。黄は暴力行為、詐欺行為などだ。橙は殺しはしていないものの、拷問などをやっている奴らに多い。赤は殺人をやっているやつに付く。これがここでの一般的な常識だ。」
イリアは推測した。
私の場合は紫色に点滅した。もちろん記憶はある。冒険者を1人殺した事、そして大地がボロボロになるほどえぐった経験があること。だが、冒険者を殺したのは冒険者になる前の私がただの魔物だった時の話だ。あの時は相手が攻撃してきたからやり返しただけだ。後にその親にもあったけれど、別に反省はしようとは思わない。生存本能なのだがら。それに、大地がえぐれるほど破壊したのもボロスやバハムートの時だ。そこまで迷惑はかけていない気がする。
「それで…、紫と黒って何かしら。」
先程説明してくれた冒険者のひとりは大剣を片手で構えながらも教えてくれた。
「紫は…簡単に言うなら災害を振りまく者。こういうやつに多い。その振りまいた災害は甚大な被害を与える。過去にヴィクターと呼ばれた冒険者史上最悪の黒魔導師などが例だ。そして、黒。これはかつてこの冒険者ギルドに魔王エンゲルが入ってきた事があった。その時、その場にいたSSランク冒険者の【光忍】が対応してくれたおかげで被害は抑えることは出来た。黒の基準は簡単だ。絶対に滅ぼさなくてはいけないほど悪意に満ちた極悪人の権化だ。これで分かったか?なぜ俺らがお前に対して武器を向けているか。冒険者と自称しては居ないだろうな?」
「それなら簡単な事ね。私が紫なのは種族のせいよね。それはしょうがない事だわ。後、ちゃんと冒険者よ。これが冒険者証ね。そこに種族を載せてるから確認なさい。」
そう言ってイリアはその大剣を持つ男の足元に向かって、冒険者証を投げる。投げられた冒険者証は床に半分以上突き刺さる。
男は床に突き刺されていた冒険者証を取ると中身を確認する。
「…!?」
「これで分かったかしら。別に私は観光に来ただけよ?勝手に武器なんて向けないでもらえるかしら。不愉快なのよね。」
「分かった…。お前ら、武器をおろしてくれ。どうやらこの人はS級冒険者のイリアだ。」
「イリア…だって?…。」
「もしかして…あの…。」
「【鮮血姫】か…。」
「確かに、そんな大物なら紫になるのも分かる…実力の証明になるな…。」
「それにあんた…王位吸血鬼かよ…。」
「えぇ、そうよ。お気に召したかしら。」
周りは凍りつく。当然だ。冒険者ということが分かったとはいえ、【凶獣】に指定されている魔物の一角が目の前に、人が5人分くらいの距離に居るという事実に対して…。
「やっぱり王位にもなるとみんな驚いて固まるのねぇ。でも今はそんな事は良いのよ。返してもらえるかしら。」
男は剣を背中に担ぎ直すとイリアへと歩み寄っていき、手渡しで冒険者証を返した。
「ありがとうね…名前は分からないけれど、あなたの事だけは覚えておくわ…。」
少しの沈黙の後、男は話してくれた。
「俺はダイン、Aランク冒険者で【怪力】の2つ名を持つダインだ。」
「そう…ダインって名前なのね。あなたの職業は剣士ってことでいいのかしら。」
「いや、俺は魔剣士だ。そういうあんたは魔闘士って書いてあるがそれでいいんだな?」
「えぇそうよ。だが、1つ気になる事がある。聞いてもいいのか?」
どうやら何か聞きたいことがあるらしい。
「別に聞いてもいいわよ。答えてみなさい。」
「年齢の一覧に『2』って…書いてるんだが…これ本当なのか…?本当だとしたら…若すぎないか?」
「えぇ、本当の事よ。そんなに気にする事かしら…。」
「だって…たった2年で王位吸血鬼まで成長したって事になるんだぞ…?」
「確かに…前にも言われた事があるけれど、それは確かにヤバいと思われるわね…。」
「まぁ、観光に来たって言うんなら…別に俺はこれ以上何も警告する事はしねぇ。」
「ありがとうね、ダイン。」
イリアは少し微笑んだ。
ちょっと騒動があったけれど何とか丸く収まってよかったわ…。とりあえず色々とやることがあるし…宿も確保しないといけないわね…。




