イリア、質問攻めを受ける
マジックショーを終えた頃には夕方になっていたので、城で夕食を摂る事になった。ガイオンは色々やる事があるからと自国に戻って行った。ヘスティとベルマストは自国に戻っていった。
(そうねぇ…そういえばあの子に褒美を与えないと…。)
クラスメイト達は各々食堂に向かっていた。イリアも歩きながらではあるが呼び出す事にした。
「ガーネシア、褒美をあげるから来なさい。」
少し時間が経ったのち、メルームから話を聞いたであろうガーネシアがゲートを使ってここにやってきた。
「な、なんでございましょうか…。魔王様…。」
「あなたがガーネシアね。ダンジョン内で異物を排除したと聞いたのよ。それで褒美があってね。」
「褒美…でしょうか。」
「何がいいかしら。今は手元に一つだけ神水があるから使ってもいいのだけれど…。」
「そのような高価な物を頂けるほどの活躍を私はまだ出来ておりません…。ベルマスト様にお使いになられてはいかがかと具申します。」
「何が希望は無いのかしら。」
「それでしたら、神狼の魔神フェイル様の傍で仕えさせていただきたいと思います。」
「それだけでいいのかしら。私今気分が良いからもうひとつくらいいいのよ?」
ガーネシアは色々考えたがやはり必要ないと答えた。まぁ本人がそれ以上望まないのなら無理にする必要は無い。
「じゃあ一つだけ気をつける事ね。フェイルって頭がほんの少し悪いからサポートしてあげなさい。」
「かしこまりました!至極の褒美、ありがたく頂戴致します!」
ガーネシアは戻って行った。イリアはまた1人になった。
食堂に向かった。食堂に着くと思い思いの席で食べていた。窓際を確保して食べてる人もいればど真ん中で食べてる人もいるし、出入り口近くで食べている人もいる。それだけではなく、兵士の人たちと話しながら食べてる人もいる。
「どこで食べようかしら。」
イリアも食堂で飯を貰い、席を探す。すると離れた場所に3人の男子がいた。クラスの中ではオタクに位置する立本、天羽、内川である。クラスメイトみんなと接点を持てば向こうが悩んだ時に聞きに来てくれるだろうと考え、その3人のところに向かった。
3人は話していた。
「な、なぁ天羽。俺ら非戦闘職が何かできるとは思えないんだが…。他の奴らは一端の力を持ってるし、技術があるし、飯島なんて勇者だし。」
「わかるわかる。フリューゲルも流石に非戦闘職である俺らの指導なんて出来てなかったな。その道のプロ任せなのはしょうがないと思うけど。」
「異世界あるあるの鑑定とかアイテムボックスとかが俺らには無いんだよな…。」
3人はため息をついていた。
「あれ、なんかこっちにあの吸血鬼近づいてきてね?」
「え?まさか〜。あんなゴリゴリの戦闘種族がこんな非戦闘職の俺らに来るわけ…。え?ほんとだ。」
そこでイリアは天羽の横に立ち、
「お隣座ってもよろしいかしら。」
「い、いいですよ。」
「ど、どうぞ。」
3人がとてもたどたどしい…。そりゃそうだろう。クラスの中で高嶺の花である瀬良以上の美女であるイリアがここに来たのだ。カーストが違うからだろう。
イリアは特に気にすることなく、1口食べ、3人に質問する。
「ねぇ、あなた達は何の職業かしら。」
ステータスを覗かず敢えて聞くことで会話を引き出そうという初歩的な考え方である。
天羽は答える。
「お、俺は薬師だ。薬の材料さえあれば効能をある程度の範囲で決めて作る事が出来る。それだけだ。攻撃に使えるとしたら微量の麻痺毒の薬を作るくらいでほかは特に何も出来ない。」
立本も続いて答える。
「俺は加工師だ。物の加工を得意としているくらいだ。鉱石類は加工できないけどそれ以外ならできる。」
内川も続いて答える。
「俺は付与術師だ。バフを付与したりデバフを付与したりするくらいだ。」
すると、イリアは食べている飯の手を止め、飲み込んでから答えた。
「天羽は瓶を使って投げればいいんじゃないかしら。火炎瓶?みたいにすればそれなりに使えると思うわ。それと、立本は加工のやり方次第で敵の足止めとか古典的なトラップの作戦も出来るし。それに鉱石以外で加工が可能なら自分の防具なり武器なり作れるんじゃないかしら。別に武器は全て金属という訳ではないし、鞭なんかもありなんじゃないかしらねぇ。最後に内川。あなた普通に戦闘職じゃないの。付与術師の最大の魅力は自分自身にもバフを付与できることと、その応用性の高さにあるのよ?武器に付与すればいつもの武器よりさらに強くできるし、自分の体に付与すればいつもより早く動けたりするし、まぁ体力があればの話だけれど。」
「そうねぇ…。【創造魔法】【限界突破】を作成っと。それで、内川、立本、天羽の3人に【付与魔法】で付与してっと…。あなた達、ステータスを確認してみなさい。」
3人は慌ててステータスを確認すると、スキルの欄に【限界突破】が追加されていた。
「え、スキルをくれたのか…??」
「神じゃねぇか…。」
「女神じゃん…。あ、あの、好きな人とか居るんですか!?」
さすがに最後の質問に驚き、「えっ。」と反応してしまう。
「そんなのは居ないわ。」
「俺らからも質問いい?」
と立本と天羽が言ってきたので「いいわよ。」と言うと喜んで色々質問してきた。
Q「どうやってその強さを手に入れたのか。」
A「戦い続けたからね。」
Q「最初から美女だった?」
A「そうよ。」
Q「好きとまではいかないけど気になる人とかは居た?」
A「2人くらい居たけど片方は奥さんが居たし、片方はやんわり断られたわね。」
Q「どういうのをよく食べているのか。」
A「血はもちろんのこと、魔物の肉も食べるし野菜も食べるし、人肉でも問題なく食べる。血肉は野菜とかご飯より美味しいわね。」
Q「吸血鬼の弱点なにか残ってたりしないの?」
A「ほかの吸血鬼を見た事が無いから分からないけれど、日光は問題ないし十字架も銀も普通に触れるし見れるし、水も火も光も大好きだし呼ばれないと入れないとかは特に無いわ。」
Q「魔王って言ってたけど、実際配下の数とか配下の強さとか大体分かってるの?」
A「数は分かってるけど強さはあまり分かってないわ。それでも感覚で私より全員弱い事だけは確かね。」
Q「付き合って欲しい。」
A「なんでそんな質問が出てくるのよ。答えは絶対にNoね。」
Q「ステータス見せてくれたりするの?」
A「私が良いと判断したら見せているけれどあなた達に見せる必要が無いから却下ね。」
Q「双剣を使って戦ったことってある?」
A「ほとんど無いわね。篭手だけ使ったり何も使わなかったりが多いわね。」
Q「自分より強い相手に出くわした時はある?」
A「1度だけあったけど強くなって殺したわ。ついでに食い尽くして強くもなれたわね。」
Q「食い尽くすってまさか…アソコも…?」
A「…。この質問は答えなくていいかしら…。」
Q「この恥ずかしがる姿見てたらたまに横に立ってる女性の配下が甘やかすのも分かる。」
A「それ質問じゃないわ。」
Q「どこまで強くなるつもり?」
A「私が1番強いと判断できるまで。」
Q「次はどこの魔王を倒すの?エンゲルを倒すのは確定として。」
A「吸血鬼の魔王がいるからそいつを殺そうかしら。別に2人も要らないから…。」
Q「そうなったら戦争になると思うけど大丈夫そう?」
A「そうなる前に片付けるわね。」
なんか色々質問された気がする。途中卑猥すぎて無言になっちゃったけど…。よくよく考えたら性別が男の魔物も全部食べてきた気がする…。普通に恥ずかしいんだけどどうしようか。こいつら3人とも食い殺すか。別にそんなことをする気はさらさらないんだけど。
「明日の修練、そっちの様子も見に行くから動き方とか考えてなさい。」
イリアはもくもくと食べていたので3人より早く食べ終わって食堂を出た。
「やっぱり食べてる時の所作綺麗だよな…。」
「天羽、お前ずるいぞ。隣とか最高じゃねぇか。」
「すげぇいい匂いだった。実はお前らが質問してる時とかもたまに嗅いでた。」
「天羽、変態じゃねぇか。でもわかるわかるその気持ち。いきなり隣に女の子来たら気になるよな。」
「俺さっきスプーン落として拾おうとして下覗いたらパンツ見えた。最高だった。」
「結局立本も変態じゃねぇか。てかイリアちゃんって警戒心強いわりにそういうところ抜けてるよな。」
「わかるわかる。」
3人はそのトークで盛りあがっていた。
イリアは食堂を出て部屋に戻る途中に一応盗み聞きしてたけど、髪の匂い嗅がれてたり、パンツ見られてるとは思わなかった…。
「私やっぱり警戒心薄いのかしら…。恥ずかしい…。ヘスティ。相談があるの。」
ヘスティがすぐに駆けつけた。
「どうしたの。」
「やっぱり私警戒心薄いのかな…。」
「うーん、イリアちゃんはとりあえず周りがどう見てるかをちゃんと知ろうか。それで何があったの?」
「生徒たちの中で交流深めようって思ってまだ話してない男3人のところに行ったの。」
「それでそれで?」
「3人に色々質問攻め受けて、色々答えてたけど、途中卑猥なのも来て少し答えたくなくて黙り込んじゃった。」
「何でもかんでも答える必要なんてないよ?それで他には?」
「私がいち早く食べ終わって食堂出て部屋に戻ろうと思ってたけど3人が何かまだ話してたりしないかなーって思って盗み聞きしてたら、横にいた男の子に髪の毛の匂い嗅がれてたり、向かい側の男の子がスプーン落とした時に机の下行った時に、パンツ見られてたり…。そう言う経緯で、警戒心薄いのかなって。」
「とりあえずその2人始末してもいい?」
「ダメよ…一応異世界の子なんだから。」
「うーん、とりあえずイリアちゃんは美少女なの。そりゃ女がいても居なくてもそんな美少女が隣に来たら否が応でも注目しちゃう。そういう時に絶対に注意することは、距離近すぎたりしたらダメ。あとちゃんと、脚を閉じて見られないようにする。これ最低限ね。」
「うん、分かった。でもちょっと恥ずかしかったから一緒に寝て欲しい…ママ。」
「ママ!?そう呼ばれるなんてもう最高!いいよ!いつまでもそうしよう!」
「いつまでもはダメ!明日もやる事あるから。3人に【限界突破】を付与したからそれ以降、どういう動き方をしていくか聞いてないから。」
「でも今日は一緒にお風呂行って寝よっか。」
イリアはヘスティと2人で風呂に行ってあがって寝た。ヘスティは横で静かに息を立てて寝てるイリアも見て頭を撫でたりして少し見た後、寝たのだった。
「イリアちゃんと寝れるの最高…。」




