異境の者
飯島拓斗。この名前はレストレリアン王国によって地球から召喚された探索者養成高校の高校生であり、勇者として覚醒する者である。
「拓斗!調子はどうだ!」
立派な鎧を見に纏った騎士団長であるフリューゲル。その男は拓斗と呼ばれた少年に向かって話しかける。
「まだまだ行けます!」
「なら、私が少し稽古をつけよう。剣の型自体は出来ているようだからな。実戦あるのみ、とはいえ、多少の恐怖に打ち勝つ必要があるからな。」
「それなら問題ありません!我々のいた星でもダンジョンがあって魔物とも戦った経験があります!」
「そうか!ではゆくぞ!」
そうして2人の剣戟を周りの者は静かに見ていた。
その修練場の隅っこで魔法の練習を続けていた者がいた。
瀬良 美帆。今代の聖女の可能性を秘めた異世界転移者。最初から神聖魔法に高い適正がある。
聖騎士団の元で神聖魔法の扱い方の指導を受けている。
「瀬良殿、神聖魔法と聞いてなにか思いつくものなどはありますかな。」
そう聞くのは、聖騎士の1人であるファルカだ。
「えっと、聖域とか、光線とかですか?」
「それらも含まれますが、神聖魔法には癒す効果も含まれるのです。例えば、【ヒール】や【キュア】などですね。それより上位になりますと、聖域や、聖光砲などがあります。これらは複数人で使う事が多いですが、聖女ともなると単独で行使することが出来ます。」
「なるほど…。ありがとうございます!では、まずは【ヒール】や【キュア】の練習から始めればよろしいですかね。」
「力添えしますよ。」
他の学生達はというと、おのおの適正のある魔法やスキルを駆使出来るようサポートを乞うことにした。
錬成に適正のあるものは錬成師の元で、治癒に適正のあるものは聖騎士のところへ、剣士に適性のあるものや弓に適正のあるものは騎士団のところへ、魔法に適性のあるものは魔法師団のところへ、バラバラではあるもののそれぞれ訓練を積むこととなった。
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イリアはいつもの服を着て、自分の国となった土地を歩いている。周りを見れば国民となった穢れの森の魔物達、それらが進化してブラッドリーウルフは血獄人狼に進化し、言葉を介するようになる。それらがイリアを見るなり平伏している。その横では何かを売っているようだ。近づいてみると、穢れの森で良く収穫されている木の実だ。
「ねぇ、この木の実、いくらで売っているのかしら。」
ふと、聞かれた店員は顔を上げる。
「ま、魔王様!どうしてこのような所に…。」
「別に…ブラブラ歩いてるだけよ。」
「銅貨4枚です。」
「そう…。じゃあ銅貨12枚ね。3つ貰うわ。」
「毎度ありでございます!」
イリアは木の実を食べながら道なりに歩いていく。
「美味いわね…。ここの木の実は相変わらず。」
イリアがこの世界に転生したての頃から森を出るまで、この木の実にはお世話になった。小腹がすいた時に探して取りに行ったり、時には取り合いになったりもした。
そんな時、イリアに直接念話が届く。
(イリア様。閃光の魔神メルームでございます。早急に伝えたいことがございます。)
(どうしたのかしら。用件を言ってちょうだい。)
(はい。先程私の管理する領域内のダンジョンにて、見知らぬ服装を着た4名の男女が現れました。突然ゲートが現れてそこから出てくるように剣やら杖を持った少年少女です。)
(なるほどね。とりあえず随時報告するのと被害が出たらこちらに伝えなさい。)
(かしこまりました。)
(ところで、メルームは誰の配下かしら。)
(私はフェイル様の配下でございます。)
(フェイル…のね。ちゃんとサポートしてあげるのよ。フェイルは強いだけで頭はそんなに良くないから。)
(かしこまりました。)
念話が終了する。どうやらどこからかゲートでこちらの国のダンジョンに入ってくるようだ。
「それじゃあ私はレストレリアン王国とやらに向かおうかしら。」
イリアは翼を広げ【神速】を使い、レストレリアン王国へと向かうのだった。
一方、ダンジョン内では…。
「宮内!入った途端、ここのレベルが跳ね上がったぞ!」
「なに?外からの計測ではせいぜいEランクの計測だぞ。で、今のランクは…。」
「それが、振り切れてるんだよ…。」
「は?振り切れ…て…いる?お、おい待てよ。それってSランクじゃねぇか。」
「佐伯!眞能!気をつけろ。生きることを最優先に動くぞ…。」
「わかったわ。」
「りょーかい!」
4人は遺跡と思しきダンジョンを歩き回る。
そして、4人は大きな空間を発見する。
「なんだ、この石像は。」
「一体の女の石像を囲むように25体の石像が膝まづいている。祭壇みたいなのがあるな…。」
宮内と呼ばれた男ともう1人の男は祭壇周りを残り女2人は周りの警戒をする事にした。
「何語かサッパリだ…謎解き系のダンジョンか?」
「女の石像を崇拝しているのか?」
「分からない…だけれど、この異質さ…それに常に魔力が円を描くように流れ続けている。」
すると、眞能と呼ばれた女が武器を構える。
「3人とも!なにか来る!警戒態勢!」
4人は来るであろう方向を向き、武器を構える。
「グルルルゥゥゥ」
狼のようだ。しかし周りに赤い玉を浮かせている。それが4体だ。
「なんだこの魔物は…。狼だろうが、赤黒いな。佐伯!鑑定だ!」
「りょーかい!【鑑定】!」
名前:なし
種族:ダークブラッドウルフ
レベル:189
「レベル189!?ダークブラッドウルフなんて聞いたこともない…!!」
「かなり高レベルだなおい。ほかの三体はどうだ!」
「他もレベル188、191、187よ。かなり高いわこいつら。」
「まさかこのダンジョンはザコ敵でこいつらが出てくんのか?やばいな。これだと、佐渡にあるSSランクダンジョンに匹敵するぞ。」
「くる!【霧雨流・五月雨斬り】!」
攻撃を放つも、狼はそれを軽々しく避ける。そのまま壁に張り付き、宙に浮いていた赤い玉を槍のように変形させて飛ばしてくる。
4人は辛うじて避けるも狼が多いこと…それに赤い槍の速度への対応に精神を裂かれ、ついに被弾してしまう。
「グッ!グハッ…。」
「隊長!足が…。」
「まだだ…。こいつらを何とかしないと逃げるに逃げれないぞ…。」
その時、祭壇の奥から声がした。
「あら、この子達に押されるほどの雑魚がどうしてこの遺跡に…。」
その女の声に狼4匹が近寄り地べたに座り込む。その女は狼達を撫で4人を見る。赤い髪に赤い目、赤い耳をした狼を人型にしたような女だ。
「私など魔王様に比べれば足元にも及ばないと言うのに…。その私より弱いこの子達に負けるの?」
「俺は…まだ負けてない。」
「汗がすごい出てるのに?それに疲れてそうだし。何より隊長さんの右足、無くなっちゃってるじゃん。」
「佐伯!見えるか!?」
「えー!見えるわ!」
名前:ガーネシア
種族:真紅の赤狼
レベル:422
称号:狼を従えし者、変異種、魔王の配下、二十魔将・閃光の魔神メルームの配下、最終進化者
「レベル422!?種族もまた聞いた事ないやつだし…。」
「もういきなりSSランクのボス級かよ…。」
「何言ってるか分からないけど、私はこの遺跡のボスではないわ。私なんて一介の指揮官のひとりにすぎないもの。」
「あ、そうそう。逃がすなんてことはしないから。【赤狼陣】」
突然地面から現れた半透明な狼に食われる4人。内側から出ようと攻撃を仕掛けるも攻撃が通らない。
「じゃ、さようなら。異境の冒険者さん。【陣浄化】」
4人の冒険者は陣諸共光の破片となって消滅した。
「これは、昇進させてもらえたりするのでは!?」
ガーネシアは1人嬉しそうに報告に向かうのだった。




