王との謁見、配下とのおはなし
「うむ、よくぞ参られた。此度の大狂騒において特に活躍したとの報告を受けたのでな、その報償を授与しようと思う。宰相、説明願えるか。」
宰相が国王の右前に立ち説明を開始する。
「此度の大狂騒において、優秀な活躍をした者に評する報奨の授与する。ではまず、総大将【魔皇】ヴァイラ殿、此度の大狂騒において全体指揮を務め最終的に勝利へと繋げたとして金貨500枚を授与する。」
「恐悦至極でございます。」
「続いて【天眼】のマイシャ殿、此度の大狂騒において、右翼側の指揮に務め、SSランクのシャドウドラゴン討伐に貢献したものとして金貨800枚を授与する。」
「ありがとうございます。」
「続いて、ギルド【咆哮団】の団長【咆哮】のガゼル殿、Aランク冒険者でありながらSSランクのシータイガー討伐そしてトドメに貢献したものとして金貨750枚を授与する。そして此度の活躍によりメイガスギルドマスターよりSランクに昇格が決定し此度の謁見後からSランクとして活動を始めるものとする。」
「ありがとうございます!これからも精進します!」
「そして最後に【鮮血姫】イリア・フィーリアス殿、同じくAランク冒険者でありながらソロとして活動を続け、此度の主犯と思われる巨像の魔神ギガントの単独討伐に成功。魔王エンゲルの再暴動の可能性を加味して金貨1000枚、そしてメイガスギルドマスターよりSランクに昇格が決定し、此度の謁見後からSランクとして活動を始めるものとする。」
「ありがとうございます。」
「そして同じくSSランク【光忍】のヤマト殿はここには居ないが霧を発生させていた主犯のSSランク、ミストダウターの討伐に成功したとして金貨800枚を授与する。」
(あ〜、あの霧はそんな魔物がやってたのね…そういえば霧の事忘れてたわ。)
「これにて終了である。」
そして宰相は言葉を締めくくり、陛下が話す番になった。
「では、ガゼル殿、イリア殿の2人には後で話がある。なに、Sランクに到達した者はみなこの話をせねばならん。」
「心得ました。」「宜しくてよ。」
ヴァイラ、そしてマイシャは城を出て、休息へと向かった。イリアとガゼルは王の間へと呼ばれた。
「2人ともよく来てくれた。ここには私しかいないのでな。言葉は楽にしてくれて構わない。」
と言うと、ガゼルは、「あ〜、敬語は普段話さないもんで疲れますなぁ…。というかここにいる2人とも王族かよ。」
「む?王族だと何かあるのか?」
「いや、そうじゃないんすけどね、なんかこう立場の差を感じるんですわ。」
「なるほどね、ガゼルは別にいつもの感じでいいんじゃないかしら。」
「そうか?ならそうさせてもらうが。」
「ガゼルよ、王族が2人、という事はイリア殿の種族を分かっておるのだな。」
「あー、そうだな。王位といや、凶獣クラスとも言われてるからな。イリアはまだ若いから知らないとは思うが、凶獣指定されてるやつは何体か存在するんだ。まず、悪魔、吸血鬼、天使の王位以上だ。ここら辺は有名ではあるが実物を見た事がない人が多い。そして九尾だな。尾の数が増える事に強さが増していくんだ。八尾の時点でSSS+ランクとも言われてるな。陛下もランクが高かったはずだから知ってるとは思いますが。」
「知っておるぞ。七尾の天狐とは戦ったが死闘だったな。賢者殿と剣神殿と引き分けておったからな。」
「ねぇ、賢者とか剣神って誰かしら。」
「今回のスタンピードでギガントが出たろ。あそこの親玉である魔王エンゲル撃退に貢献し、今も尚存命な2人だ。勇者と聖女は亡くなっているがな。」
「それってかなりの長寿かしら。」
「まぁどちらも人間族とは思えないくらい長生きしてるな。特に剣神殿は力こそ衰えたものの技術は上がってるみたいだからな。」
「へぇ、そうだったのね。ちょっと戦ってみたいわ。」
「さすが戦闘種族の吸血鬼だな。戦うことに関しては血に飢えすぎだっての。」
「2人とも、話を終えて本題に入っても良いか?」
「いいぜ。」「いいわよ、話してご覧なさい。」
(ご覧なさいって…。)
「Sランクに到達した君たち2人にはこれから国からの依頼が舞い込む時がある。既にヴァイラ殿やマイシャ殿にヤマト殿などはそういう依頼をこなしている。そしてこの依頼は基本的には断れん。断れずかつ拘束日数も長くなる代わり、報酬が他より多いのが特徴だな。イリアなら分かるはずだ。ロウガ殿、アレン殿、イルガ・ブライトネス殿がSランクだからな。この前の神殿攻略より難易度は高いからな。」
「あれより難易度が高いのね。まぁそれはそれでいいわ。今のところ力で叩き潰してるだけだもの。」
「本当に外見に似合わぬ暴力性だな、ハハハ。」とガゼルとフーバーンは笑う。
「確かに外見だけなら少し幼い美少女だしな。そういや戦闘の時思ったんだが、日光影響無いんだな。」
「えぇ、日光無効があるから特に気にしてなかったわ。」
「あとイリア、マイシャから聞いたが、お前まだ1歳くらいなのにお酒を飲んだんだってな。ダメだぞ、さすがに若すぎる。」
「そ、それは少し飲んでみたかったからよ…。」
少し恥ずかしがりながら言い訳をしているイリア。
「あ、そうだわ!せっかく私の詳しい種族を説明してるんだし、言ってもいいかしら。」
「もしやイリア、あれを言うつもりか。」
「ガゼルはもう信頼してるから大丈夫よ。」
人差し指を口に添えてウインクしてる。
「な、なんだ?めちゃくちゃ重要な話か?」
「そうだなガゼルよ。今から言う事を他言すると最悪末代まで首が飛び続けることになるかもしれないな。」
「さすがにそんな事しないわ。デタラメはダメよ。飛ばすにしても本人だけよ。」
「飛ばしはするんだな。」
「私ね、魔王なの。」
「え?ま、まおう?何を冗談を言ってるんだよ…。ちょっと待て、陛下の顔がマジだ…。え、嘘じゃないんだよな…。」
「嘘じゃないわ。私は破滅の魔王イリア・フィーリアスよ。」
「え?魔王が冒険者やってるのか?ソロで?」
「だって、冒険者してたら色んな人と知り合いそうじゃない?その方が楽しいじゃないの。あと強者とも戦える機会があるし。」
「まぁ、それはそうなんだが、や、ヤベぇ、情報の規模がやばすぎてパンクしそうだ。でもまぁ、魔王だったら魔神討伐できたりあの強さだとしても納得がいくなぁ…。となるともしかして配下とかいるのか?」
「いるわよ。何人呼んだらいいかしら。」
「ガゼルよ、私は以前、配下を1人見たが、そのお方もかなりの強さを保有していた。それに近しい者が居るんじゃないのか?」
「なら3人見せてくれ。」
「3人!?かなり欲張りね…。そうね。分かったわ。」
「イズナ殿以外で呼べそうなのは居るか?」
「見た目を気にしなくていいのなら呼んでもいいかしら。」
「大丈夫だ。俺はイリアの友だからな!」
ガゼルのいい笑顔だ。イリアもこれには好印象だ。
「じゃあ呼ぶわね。ベルマスト!ネバルタス!ヘスティ!ゲート開くから来てくれるかしら。」
そしてゲートを開け、そこから出てきたのは、
鉄を身にまとった甲冑を着て手が4本ありそれぞれに刀を帯刀した鉄の魔神ネバルタス。
次にゲートから出てきたのは、灰や石灰、硫黄などを空中に浮遊させながらまるでマジシャンのような様相で歩いてきた単眼の灰の魔神ベルマスト。
そして四天凶に匹敵する強さを有するイリアの秘書兼参謀を務める秘書の魔神ヘスティであった。
「うお!なんか強そうなのが3人も!しかもその刀を装備したこいつかっけぇなぁ。」
そこに反応したのかネバルタスは、
「む、そこの御仁、この刀の良さが分かるか。お主は今は戦意こそ無いものの闘気は目を見張るものがあるな。なんだか戦友になれそうだ。」
「確かにその刀、鋼虫で作ってるだろ。そりゃその見栄えにもなるな。甲冑着てるからあれだがいいやつじゃねぇか。」
「ハハハ、今度手合わせ願いたいものだな。そして失礼しました。イリア様、そこの御仁との会話を楽しんでいてイリア様に気づきませんでした…。呼ばれたにもかかわらず、申し訳ない。」
「別にいいわ。だってあなたのおかげで王位になれたもの。感謝はしてるのよ?」
「それでは希望として修練場の拡張をお願いしたく思います。」
「魔力2億あれば十分かしら。」
「それだけあれば拡張も色々できましょう。ありがとうございます魔王様。」
そしてイリアはベルマストの方をむく。
「初めましてベルマスト。タンドラの討伐おめでとうね。今まで言いそびれてたから今日言うことにしたわ。」
「いーえいえ、これはこれは恐悦至極にございます。私の手品やマジックで相手を翻弄して倒しました。」
「やっぱりあなた服装から思っていたけどマジシャンなのね。」
「えぇ、ですのでマジックの道具が欲しいというのが希望です。」
「分かったわ。何が欲しいか具体的に決まったら教えてちょうだい。」
「了解しました。今から考えます。」
そしてイリアはヘスティの方をむく。
「えーと、ヘスティ…。」
するとヘスティは、イリアを見て、
「以前イズナから聞いたけど、母役をやって欲しいんだっけ?」
「え、あ、今なんでそんな事を…。」
「いつものお嬢様言葉が無くなってるぞ、イリア。」
「別にいいよイリア。親がいないんでしょう?なら私達が親代わりになってあげる。ほら呼んでみて。」
さすがにイリアはガゼルやフーバーンが周りに居る中でそれを言うのは恥ずかしいらしいが、へスティが両手を差し出して待ってるので決意したみたいだ。
「マ、ママ。」
「まぁ、可愛いわ、イリアちゃん。抱き枕にして寝たいくらい。」
「え!抱き枕はダメよ!」
「あら、そう?それなら仕方ない。甘えてくれてもいいのになー。」
「あ、後で甘えるから…。」
「よし!確約!聞いたか、ネバルタスにベルマスト。」
「はい、しっかりと聞きましたぞ。」
「しかと聞き届けましたぞ。」
「後で甘えるのか。魔王って聞いたから驚いたけど普通に子供じゃねぇか。」
「たまに子供らしいところあったが今が絶好調かもしれないな。」
5人に囲まれて恥ずかしさのあまり、イズナを呼び出して後ろにしがみついた。
「な、なんでしょう。いきなり呼び出して後ろにしがみつくとは…。」
「こっち見ないで…。」
「分かりました。それでヘスティどうしたんです。」
「いやぁそれがね、前イズナが言ってくれたじゃん?イリア様は親が居ないから親代わりになってみてはどうかと。あれで早速ママって呼ばせちゃって。それで恥ずかしくなったのかな。」
「さすがに2人きりの時に言わせてからじゃないといきなりはさすがに恥ずかしいでしょう。ここには2人もお嬢様の言葉遣いの分かる方が2人もいるのですから、秘書の作業は出来るのに、こういう事は点でダメですか。」
そこでイズナに対してフーバーンが尋ねる。
「先程まで、名前しか分かりませんでしたが、そちらよ御三方の説明をしてもらってもよろしいか?」
「かしこまりました。そちらのガゼルという御方のためにも自己紹介からさせていただきます。わたくし四天凶の1柱、刀の魔神イズナと申します。そして左から順に、私達四天凶と同等の強さを有し、イリア様の秘書を務める秘書の魔神ヘスティ。そして、鉄の魔神ネバルタス、以前聞けば私を尊敬しているようなので私からも今度刀について教えようと思っています。そして最後に龍魔王タンドラを殺害した灰の魔神ベルマストです。ベルマストとネバルタスは二十魔将の1人です。」
改めて3人はフーバーンとガゼルに礼をする。
「さすがは魔神の統率者…。イズナ殿、二十魔将はみな魔神になったのでしょうか。」
「えぇ、全員魔神になりましたね。そしてイリア様の出自を調べていくうちに分かったことがございます。」
「え?私の出自がどうかしたのかしら。」
イズナの後ろにしがみつきながら聞く。
「はい、イリア様は、ここダリオン王国建国に貢献したメリザ・フィーリアス殿の遠縁に当たることがわかりました。どうやらメリザ殿の墓場に残されていたメリザ殿の血とイリア様の血が血縁関係を示す反応を示しました。試しにほかの吸血鬼の血も検証したのですがほかの吸血鬼とは反応せず、メリザ殿とだけ反応しました。恐らくはイリア様が穢れの森で生まれたのもメリザ殿のおかげでは無いでしょうか。」
「そ、そうなのね…。知らなかったわ…。だからボロスは私にフィーリアスを入れてくれたのね。」
イリアは少し感傷に浸っていたのだった。




