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TS転生した吸血鬼が色んな血を取り込み平和に暮らしたい冒険譚  作者: 月姫ステラ
3章 ダリオン王国 大騒乱編
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イリアの威厳の崩壊

イリア達は稽古を続けている。

ラファエロは20周を見事完走し、バテているところを立たせて、筋トレをしてもらう。腹筋1回するのに五分くらいかかっていて、「今日中に終わらないわよ。」と言うと、水が欲しいとせがんだので、水をやる。一応スポーツドリンクだ。すると再度やる気が出たのか、ただ単に水分を補給したかっただけなのかは分からなかったが、腹筋を急激にこなし始める。腹筋200回が終わると、次は腕立て伏せ200回だ。

腕立て伏せのやり方を教えると何故か鼻血が出ていたので、どうやら何かセクシーだったらしい。【絶世の美女】はこんなところでも働くらしい。それにこの子は5歳からハレンチを覚えて大丈夫なのだろうか。

大方セクシーなところを見せてからのやる気が凄まじく、腕立て伏せ200回はおろかスクワットも懸垂も終わらせる。

まさかの4時半に終わってしまった。イリアは流石に予定よりも早く終わったことに驚きつつもやる気があるなら剣の稽古をつけてもいいと促すと、ラファエロは立ち上がり木剣を掴む。先程より木剣が上を向いており、体力や筋力がついたのだろう。たった数時間でこれとは頑張っているのではなかろうか。


ラファエロは5歳らしからぬ動きをしてイリアに向かう。しかしイリアからすればさっきと大して変わらないように遅く見え、足を動かす事無く、剣の柄の部分で弾く。しかし今度は転倒することなく、持ち堪える。先程よりは進歩したらしい。

「ほら、踏み込みが遅い!それじゃ剣で防ぐ前に斬られておしまいよ!剣をいなすのも防ぐのも全部剣をしっかり扱えるようになってから!してみたい気持ちも分かるけど最初は変な型を覚えないように基本的な型を覚えていって!さぁ!もう1回!」


イリアの指導に熱が入る。無意識のうちにイリアは龍における尾まで出していた。尻尾を振る姿を見て、イズナが尊死していた。イリアはイズナの不甲斐なさに呆れ、尻尾で頭を叩く。イズナは、「はっ。」としたのか謝罪をしたが、おそらく反省は出来ないだろう。おそらく他の四天凶も同じようなことになりそうだ。


そうこうしているうちに、ラファエロが地面に突っ伏していた。汗がダラダラなようだ。イリアはあまりそういうのには触りたくなかったので、イズナに運ばせる。稽古が終わった事を使用人に告げ、クタクタなラファエロをお風呂に入れてもらう。


「それで、どうでしたか。うちのラファエロは。」 「まぁまぁね。まぁそれなりにやる気は見せてくれたけど理由が心配ね。まだ5歳児なのにハレンチでもいいのかしら。」


「それで最初の稽古内容だけでも教えてくれたりするか?」


「単純よ。訓練場の外周20周させた後に筋トレそれぞれ200回ずつさせてそこから剣の打ち合いね。一応体力と筋力がもう少しつくまでは同じことをさせるわ。

まだ木剣だけどいずれ金属剣に切り替えるわ。そうすれば騎士が普段どんなのを装備してるか理解するでしょうね。そうすればもっとやる気が出るんじゃないかしら。まぁ私としてはただ外周を走らせるんじゃなくて、障害物と魔物を配置して、地面を泥に変えて、20km走ってもらいたいのよね。障害物は障害物で避けつつ、魔物だけを正確に絶命させていくことね。それだけ出来ればAランクくらいにはなれるんじゃないかしら。まぁ、一般的なAランクなのでしょうけれど。」


騎士や国王は絶句する。

国王はいくら騎士でもそんな20kmは走りたくないと思う。それを軽々とできるようになるまで続けさせるつもりらしい。おそらくその準備段階にすら入ってないのだろう。ラファエロの未来が心配だが、本人が強くなると言ったのだ。見届けるのもまた義務である。


そこに使用人の1人がやってくる。ラファエロが寝たらしい。おそらく疲れたのだろう。まぁ何度も言うが普通の5歳児がすることでは無い。そりゃ疲れる。疲労耐性を獲得していても疲れるだろう。ラファエロのスキルを見ていて気になるスキルがあった。


【オーダー】対象を選択し、一つだけ命令を与える事が出来る。次の命令を与えるには前の命令を解除する必要がある。使用者が王族である場合、対象が王族未満であれば命令できる。Lvが上がるとより複雑な命令を与える事が出来る。


(ヤバっ…私命令与えられちゃうじゃない。早急に王族にならないとね…。それにしても魔王だがら大丈夫なのかしら。それか種族的にはダメなのかしら。どっちか分からないから早めに王位になりたいわ。でも稽古中だし…。そうだわ。イズナに刀の稽古をして貰ってれば勝手に経験値上がるかしら。試した事はないわね。)


「ねぇイズナ。頼みがあるのだけれど…。」


「なんでございましょうか、魔王様。」


「あなたに刀の稽古をつけて欲しいのよ。早急に王位に進化する必要性が出てきたのよ。それで稽古つけたらレベル上がったりするのかと思ったのよね。」


「では今からとある迷宮に向かいますか?あの迷宮であれば魔王様のレベルも上がるかと。公爵から王位への進化には350レベル必要と記憶しています。」


「100レベル以上足りないじゃないの。というか先にチョコを食べるのよチョコを。用意できてるんでしょうね、フーバーン。」


「出来ているぞ、お前さんの大好きなチョコなら隣の部屋に用意してるぞ。」


「でかしたわ。それじゃ向かいましょうか。食べた後に迷宮ね。」


「魔王様、チョコというのはそんなにいい物なのですか?私にはよく分かりませんが。」


「少なくとも私にとっては嬉しいご褒美ね。」


隣の部屋にやってきたイリアはドアを勢いよく開ける。そこには机の皿いっぱいに乗っているチョコクッキーの山だ。イリアは椅子に座りお菓子を待つ子供のように床につかない脚をプラプラさせている。


「魔王様、子供っぽいですよ。」


「あら、私まだ1歳なのよ。別に良いじゃないの。」


「1歳はそこまで大きくありませんよ、普通は…。吸血鬼は普通に赤ん坊から育ちますからね。1歳であれば魔王様の身長の半分くらいですよ。」


「え、そうなの?同族に会った事がなくて分からなかったわ。あと2人だけの時は普通に名前で呼んでちょうだい。」


「失礼しました。ではイリア様は吸血鬼の国の生まれでは無いのですか?」


「その国がどこにあるか分からないけれど、私は穢れの森で生まれたわ。生まれた時から身長はこんなものね。進化する度に身長が伸びたけどそれでもこの前進化したら身長が縮んだのよね。」


イズナは話を聴きながらイリアの使う皿にチョコクッキーを盛り付けていく。スっとイリアの目の前に小皿を置く。


イリアは小皿の上に乗せられたチョコクッキーを1枚手に取って匂いを嗅いでから少しかじる。イリアは頬に手を添え、恍惚の表情を浮かべながら顔を少し上に上げ、脚をパタパタさせている。


「私も1枚失礼します。」


イズナもチョコクッキーを1枚手に取り、恐る恐る丸ごと食べる。苦いと感じながらもその中に感じる甘さに驚愕する。


「も、もう1枚。」


その瞬間、イリアがイズナを睨む。

「私まだ1枚目を楽しんで食べてるのにもう2枚目なの?まさか美味しくて2枚目に手を出そうとしちゃったのかしら。」


イリアの不敵な笑みはイズナを震えさせる。しかし、

「例えイリア様と言えどここにはお菓子の山があるではありませんか。まだ取ってもなくなりませんよ。」


「ダメよ、私の方が多く食べたいのよ。ダメったらダメだからね。」


イズナはそんなイリアを見て、(なんだこの子供は…美しさがありつつも可愛さが勝るとは…私の目の保養ですかこれは!!)となっていた。


イリアはイリアでチョコを前にして威厳がゼロになり、イズナもまた表情筋が崩壊し、尊死している。

そんな所にやってきたフーバーンはそんな光景を見て、別の意味で絶句していた。

「なんですかこれは…。」

そこにはチョコを完食し、寝ているイリアとその姿を見て悶絶しているイズナだ。さっきの2人の威厳はどこにも無く、ただの女の子とそこに付き従う主人大好き執事にしか見えない。


フーバーンは寝ているイリアに毛布をかけ、イズナを正気に戻す。

「はっ。私は一体、イリア様を見ていたら何故か体全体が熱くなってきた…。これではイリア様に怒られてしまう。いや、怒られてもいい。むしろ怒られたいものだ。」


もはや発言のそれが変態のそれだ。こんな配下を持つイリアを心配しつつも、魔王と言われてもにわかには信じ難い姿で寝ているイリア。ヨダレを垂らしながら寝る姿は流石年相応か。今ごろいい夢でも見ているのだろう。


どうやらさっきの迷宮に行く話は持ち越しになっているようだ。


それにしてもどうして突然王位に進化する必要性があるのか。そこに疑問点が浮かぶ。そこに正気に戻ったイズナが言う。

「恐らくイリア様は魔王なのにまだ公爵級というのは威厳が足りないのではないかと思ってるのかと私は考えております。」


「そうなのかもしれんな…。しかしイズナ様、あなたも気をつけた方がよろしい。イリア様があなたのさっきの態度を見て、あなたから少し離れていましたよ。」


「な、なんですと!?早急に態度を修正しなくては…嫌われてしまう。」




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




ラファエロが目を覚ますと、そこにはレティーシアとフーバーンがいた。

「お母様、お父様、どうされましたか?」


「体の調子はどうだ?」

「特にはなんとも…。強いて言えば体力と筋力が若干ついたかもしれないです。」

「イリア様から稽古の内容は聞いている。」

「稽古と言っても体力と筋力作りが中心でしたけど、それでも木剣での打ち合いをさせてくれました。最初は木剣の柄の部分で防がれ、筋トレや走ったあとの打ち合いでも全て柄の部分で防がれましたけど、それでも転倒しなくなりました!」


「ふむ、それは体幹がついたからだな。」

レティーシアも口を挟む。

「ラファエロ、イリア様の話をしっかり聞いて頑張るのですよ。」

「はい!分かりました!お父様!お母様!」


そんなこんなで稽古一日目が終わった。

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