ダリオン王国の王族達との団欒
夜6時になり、8階に降りる。
降りてくると、他の団体さんがいた。
『今日はバイキングとなっております。』
と、ホテル従業員が告げる。
「ラファエロお兄様、王室の食事とどのくらい違うのでしょうか。」
「僕も初めてだから分からないけれど、王国最高峰のホテルだからそれなりにいい味してると思うよ。」
どうやらこの国の兄妹のようだ。
横にいるのは国王か何かかな。
ホテル従業員が慌てて、ドアを開ける。
「へ、陛下!こちらのお席でございます!」
「うむ、ラファエロにアリアよ、好きなものを選んでくるといい。ワシもふたりが選んだ後に選ぼうかの。」
「分かりました。お父様!ラファエロお兄様!いきましょう!」
陛下と呼ばれた男は、見慣れない姿をしている女性を見つける。
「そこの黒薔薇の服の女性。」
「何かしら…。そこのおじ様。」
「もしや同じキングルームか?」
「えぇ、そうだけれどあなたもそうみたいね。家族水入らずで楽しんでくださいな。」
イリアは周りを気にせず、メニューを見る。
「地球で見たバイキングのメニューに似てるわね。スープに、パスタにパンに野菜に…。色々あるのね。」
そこに、二人の子供が話しかけに来る。
「あ、あの!そこの黒い服の女性の方!このパスタなのですが、見た事がなくて、これが何か分かりますか?」
「ラファエロと呼ばれてたわね。あなた。一応イカスミパスタって書いてあるわね。私も食べた事がないから分からないのだけれど、取ってあげようかしら。」
イリアはラファエロの分のパスタを取り分ける。そして自身の分も取る。
「あ、あの!どうしてキングルームにこられたのですか?」
「私は、ただのAランク冒険者なのだけれど、この服のおかげなのよね。」
「失礼かもしれないのですが、お名前を教えていただけると嬉しいです!」
「えぇ、いいわよ。それであなたからよ?」
「はい!私はダリオン王国第一王子ラファエロ・フォル・ダリオンです!」
横から妹みたいな子がちいさな声で話す。
「私はダリオン王国第一王女アリア・フィー・ダリオンです。」
「あら、2人とも名乗ってくれたのね。私も名乗ろうかしら。私はね、Aランク冒険者のイリア・フィーリアスって言うのよ。またどこかで会うかもしれないけどよろしくね。」
「冒険者ですか!あの、同じ席で食べてもよろしいでしょうか!」
「そちらの席に座ってもよろしいのかしら。だってそちらは王族でしょ?」
子供たちはメニューをある程度取り、机に向かう。私は子供たちのいる机に向かう。そこに先程いたおじ様が言う。
「おや、そこの黒薔薇の美女よ。どうかしたのか?」
「この子達がね、一緒の机で食べたいって言うのよね。だからいいかしら。名乗るのであれば、私はAランク冒険者のイリア・フィーリアスって言うのよ。」
「済まないな、私はダリオン王国現国王フーバーン・フォン・ダリオンと言う。」
「私はフーバーンの妻のレティーシア・イル・ダリオンよ。一緒に食べてもいいわよ。」
「ではお言葉に預かり、一緒に食べようかしら。」
イリアはアリアの横の席に座る。
イリアはいつも通り食を進める。その姿や所作が美しいからか、アリアが食べる手を止めて、目をキラキラさせながらこちらを見る。
そこに国王が言う。
「フィーリアスという家名を聞いたことは無いが、別の国の家名なのか?」
「なぜそう思ったのかしら。」
「食事の際の所作が非常に美しいのでな。」
「答えを言うならば私は別に貴族ではないわよ。けど所作に関しては単に覚えただけかしらね。」
(特殊スキルにメイドがあるからかしらね。礼儀作法LvMaxのおかげね。)
「あの!お姉様!」
「ふぇ!お、お姉様!?」
「はい!イリアお姉様!アーンして欲しいです!」
「こら!失礼よアリア。」
「で、でもお母様…。アーンして欲しい…。お姉様が居ないから…。」
「いいわよ、やっても。私は別に構わないわ。ところでどうしましょう、このイカ墨パスタでいいかしら。」
「それをお願いします!お姉様!」
(お姉様とかお姉ちゃん呼ばわりされるのは嬉しいわほんと。実際はアリアちゃんの方が歳上なのに。)
「ほら、イカ墨パスタですよー。アリアちゃん。ほら、あーん。」
アリアは笑顔で口を大きく広げ、「あーん!」
アリアの口の中に1口サイズのパスタを入れる。
美味しそうに嬉しそうに食べている。余程姉という存在に飢えていたようだ。
「おいしい?アリアちゃん。」
「美味しいです!もう1回お願いします!」
「いいわよ。それじゃ、あーん。」
国王と王妃はその光景を微笑ましく見ていた。ラファエロもアリアが笑顔ならと微笑ましい様子で。更にホテル従業員も見ていた。
「本当に姉妹みたいね〜。あなたアリアの姉にでもならない?」
「それはお断りするわね。私は旅がしたいのよ。でもあとこのホテルに20泊するから今度アリアちゃんにでも会いに行こうかしら。」
「あら、もっといてくれてもいいのよ?イリアちゃんもまだ若いでしょう?」
「それと、アリア、ラファエロ。今度は種族学でしたね。」
ラファエロは言う。
「確か魔族や吸血鬼にも爵位持ちが居るんですよね。お母様。」
「えぇ、そうよ。なんでも爵位を持たない魔族や吸血鬼は爵位持ちの1000倍近く居るそうね。侯爵や公爵なんてほんのひと握りらしいわ。」
「そういえば昔、メリザという吸血鬼が居たようだな。確か公爵級吸血鬼だったな。この国があった土地で魔神戦争の終戦に貢献したあと、穢れの森に居たボロスという竜王とともに王国の発展に貢献していたという記録があったな。」
そこにイリアは驚いている。
(ボロスって、この国の発展に貢献してたのね。案外良い竜王だったのね。それにメリザって吸血鬼もやっぱり良いやつなのね。)
フーバーンは更に話を続ける。
「メリザという吸血鬼はこの国が誕生した10年後に亡くなったそうだな。記録には残ってないが、その時には家名を自分で作ったそうだな。」
そこにラファエロは疑問に思ったのか質問する。
「自分で家名を作り出すというのはそれほど難しいことなのでしょうか?」
「魔物としての格を上昇させるわけだからな。当然それに対応する代償を支払ったに違いない。」
「それがもしかすると寿命ということなのでしょうか。」
「かもしれんな。」
イリアもある意味関係する事なので真剣に聞いていた。
「イリアよ、済まないな、食事中にこのような話を。」
「いいえ、私も色々と学べて良かったわ。」
「あと文献にはメリザは最後まで日光に完全な耐性を有する事は無かったらしい。そのことから恐らく王位吸血鬼以上が無効を持っているのだろうな。」
ラファエロは更に質問する。
「公爵級吸血鬼の次は王位なのは今知りましたがそれ以上はあるのですか?」
フーバーンは質問に答える。
「王位吸血鬼の次が帝位吸血鬼、そして最後に真祖吸血鬼だ。もちろんこれは悪魔も天使も該当する。他はないぞ。悪魔と天使と吸血鬼だけがこの進化方法を辿る。」
イリアは内心考えていた。
(私の当面の目標は王位吸血鬼ね。ここまで来れば最低限、格がありそう。でもその時には今のステータスのまま数値が表示されてるかしら。そろそろ桁がやばい事になってるから、変なマークが出たりするかも。それにあの双剣を使えばさらに成長するから本当にやばいわね。)
ラファエロはフーバーンに言う。「ご高説ありがとうございます!」
そして、イリア達はこのまま風呂に向かう。風呂は
34階にあるらしく、みんなで向かう。そして男性と女性に分かれる。アリアとレティーシアとイリアの3人で風呂場へ向かう。風呂場に入ると、とても広く、この星では珍しくシャワーを設置していた。イリアとしてはとても見慣れたものだが、レティーシア達は物珍しそうにしている。
「イリアちゃん、綺麗な白銀の髪ねぇ〜。それに綺麗なルビーみたいな目をしてるわね。」
「レティーシア様もスタイルがよろしいですのよ?アリアちゃんもいずれレティーシア様のようになりそうね。」
「お母様みたいになりたいです!」
「ねぇ、アリアちゃん。髪を洗ってあげようかしら。」
「良いのですか!?お願いします!」
イリアはアリアの髪の毛を丁寧に洗う。アリアちゃんは気持ち良さそうな声をあげている。余程嬉しそうだ。さっきのあーんといい、姉に飢えているのは更に確定的になっている。
イリアはアリアちゃんの髪をシャワーで綺麗に流す。
すると、アリアは「お姉ちゃんの髪も洗いたいです!」
と懇願してきた。
イリアもアリアの笑顔を見て、折れたように返事する。イリアも少しぎこちないものの頑張って洗ってくれた。
3人は体を洗い、風呂に浸かる。
アリアは、「ふえ〜〜」となりながら浸かっていた。
レティーシアがイリアに聞く。
「イリアちゃんはこれまでどんな冒険をしてきたのか教えてくれたりする?」
「まぁところどころであればいいわよ。」
イリアは種族的な特徴などを鑑みて、内容に少し修正しながら話した。魔神を倒した話もした。
「魔神を倒したの!?それは凄いわ!褒賞物ね。もしかしてその功績でAランクに?」
「えぇ、そうなのよ。でもAランク以上の人達は無名であってもほとんどの人が2つ名があると聞いて、私もいつかは2つ名で呼ばれ出すのかなと思っているのよね。」
「頑張っていればいずれそう呼ばれるんじゃないの?私達は応援しているわ。」
「イリアお姉ちゃんの事を応援します!」
「それじゃあ私もアリアちゃんが将来立派なお嬢様になれるように祈っておくわ。」
3人は談笑しながら風呂をあがった。上がるとラファエロとフーバーンのふたりが外で待っていた。
ラファエロは風呂上がりのイリアに少し色気を感じたのか、少し顔を赤くする。
フーバーンはそれに気づいたのか、こっそりとジュースを買いに向かった。
5人はジュースを飲み、ぷはぁ。となっていた。
「最近は肩が凝るなぁ…。事務作業が溜まっているからかなぁ。」
「適度に休憩は必要ですよ。ラファエロにそういう勉強も教えられてみては?」
「ラファエロの歳なら色々と吸収するんじゃないかしら。」
2人に言われたからか、ラファエロは言う。
「お父様の助けになるなら覚えてみたいです!」
「それは嬉しいな。しかし学問や修行との両立も忘れてはならないぞ?」
そんな話をする中、アリアちゃんが欠伸をする。とても眠そうだ。
「あら、アリアはもう眠そうなのね。それじゃアリアを寝かしつけてくるわ。ラファエロ、ママは先に戻ってるわ。」
「分かりましたお母様。おやすみなさい。」
2人は自室へと戻っていく。
フーバーンとラファエロとイリアの3人だけが残る。
「私は明日は色々と観光しようと思うのよね。」
「であれば宝石店や呉服店などもあるな。そこも見に行ってはどうかな。」
「そうしたい所なのだけれど、なにぶん今は所持金が不足してるのよね。だから依頼を受けるついでの観光って感じなのよね。」
「それならば、今度はイリア嬢に依頼でも出そうかな。例えばラファエロの稽古とか。」
「本当にそんな依頼送ってきそうね。」
イリアは少し笑いながら返答する。
「ラファエロ、現役の冒険者に稽古をつけてもらえるのはいい機会だぞ。騎士との違いも学べるからな。」
「はい!お父様!もしその機会があればぜひお願いしたいです!」
「まぁこの20日間のうちのいずれかの日に行こうかしらね。」
「それじゃあ私はそろそろ寝るわ。」
イリアは自室へと戻る。
男2人になり、フーバーンはラファエロに聞く。
「もしかしてあれか?ラファエロ、風呂上がりのイリア嬢に惚れたか?」笑
「ほ、惚れてません!」
「顔が赤くなっていたぞ?まぁいいじゃないか。しかし、イリア嬢は1人で泊まりに来たのだな。Aランクならば何かしらのギルドに所属しているかと思ったが、ソロのようだな。」
「ソロだと何かあるのですか?」
「ん?冒険者はな、大抵Cランクくらいでギルドに所属するんだ。Bランク以上でソロのやつはほぼ居ない。SSランクで名高い、魔皇や天眼ですらギルドに所属している。それに大賢者や剣神ですらギルドに所属している。だからAランクでどこのギルドにも所属せずにソロを続けているとなると相当な実力者かと思ってな。」
(それにイリア嬢からはかなり抑えられほとんど漏れていないがら少し魔の気配を感じる。まさかとは思うが魔族側の可能性もあるな。依頼を出して見極めてみるのも一興だな。)
2人は自室に戻った。
一方、イリアは自室に戻り、寝間着姿でベランダに出て、外の風を浴びていた。
「夜の景色も綺麗ね、街の灯りが減って少し暗くなっているけれど、月が綺麗ね、今は半月かしら。まぁ、正直地球に居た頃の記憶なんて断片的にしか残ってないし、自分がどういう人だったかなんて覚えてないけれど、忘れるってのも感慨深いわね。」
「そろそろ寝ようかしら。」
イリアはベランダから部屋に戻り、ベッドへダイブする。
「ふっかふかねぇ〜。とても気持ちいいわ。それにこれは低反発枕かしら。毛布を被って寝ようかしら。」
イリアは灯りを消して目を瞑る。
しかしイリアは念の為に結界を張る。侵入させないような結界を作り、それを部屋一体に広げ、配置する。
結界は1度作れば消費しないので便利だ。
(もし、国王達に呼ばれたら城内に転移ポイントを設定しようかしら。いざってときに便利だし。)
イリアはそのままスヤスヤと寝た。
次は狩りを行います。城内への依頼は狩りの後になります。




