正体に勘づく者とイリア
イリアはギルドマスターの部屋に入る。
「単刀直入に聞こう。君は吸血鬼だね?」
「それがどうかしたのかしら。特に関係は無いと思うのだけれど。」
「君は魔の気配を出しまくっているよ。私ほどの使い手ならばすぐに魔族側と分かるからね。それで何をしに来たんだい。」
「ハーヴェイさんの護衛任務でここの王都に来ただけよ。特に何も予定はないわ。後でロイヤルホテルに行くだけかしらね。」
(それにしても魔の気配。そういうのがあるのね。抑え込もうとしたら抑え込めるのかしら。)
「ねぇ、聞きたいのだけれど、魔の気配はどうやって抑えるのかしら。」
「それを人間族である私に聞くのかい?同族に聞けばいいだろう。どうせお前たちは吸血鬼の国から来たのだろうし。」
「何それ、そんな国があるのね、知らなかったわ。あとで行ってみようかしら。」
「ん?君は吸血鬼の国の生まれでは無いのか?」
「私は森生まれよ?何を言ってるのかしら。」
(何だこの女は。ただ魔力を感じないから大方、吸血鬼の国の一般市民かと思ったが、あの濃密な魔の気配。それに森生まれ…。まさか…。)
「君、名前は。私はヴァイラ。SSランク冒険者で『魔皇』と呼ばれる者だ。」
「私はイリア・フィーリアスっていうの。よろしくね?あと私はAランク冒険者よ?」
「君はAランクなのか。失礼した。ひとつ聞きたい。君は高位吸血鬼か?」
「そんなに低く見られてるのかしら。悲しいわね。力を見通すことも出来ないなんて…。これでSSランクなら私はとっくに凶獣指定されそうね…。」
「まさか、爵位持ちか。」
(爵位持ちだと!?男爵か!?子爵か!?いや、まさか、ありえないと思うが伯爵級なのか?)
「何度も聞いてすまないが君は伯爵級吸血鬼か?」
(はぁ…SSランクって聞いたからてっきり私の爵位わかるかと思ったのだけれど、これだとボロスよりダメそうね…。)
「私はね。侯爵級よ?あとさっきからあなたの考えてること丸分かりなのだけれど、別に魔力は完全に制御してるだけよ?出そうと思えば出せるわ。だけど私は強くなる事が目的ではあるけれど、本質は私が自由に色んな種族の人と交流したいのよね…。そんな時に強い方が信頼が持てそうでしょ?特に獣人族は力比べが大好きらしいし…。本で見た知識だけれどもね。」
「まさか、君は読心のスキルも持っていたのか。しかし侯爵級か。だとしたら尚更分からないな。なぜ上位貴族級の吸血鬼たる君が人間の街にいる。君ならば貴族として過ごしていれば色々な種族と交流があるだろう。貴族には色々やる事があるが、その中に他種族との交流も含まれてるんだ。君ならばそちらを選ぶかと思うのだが…。」
「今の話を聞く限りだと、とてもつまらなさそうね。私は最近ね、戦うことが生き甲斐のひとつになってきたのよ。もちろん反抗する奴は問答無用で殲滅するわ。例え竜だろうと魔神だろうとね…。」
「でも反抗せず、本気でぶつかりに来てくれた竜王には感謝しなきゃね…。彼が居なかったら私ここまで強くなれなかったかもしれないし…。」
「なるほど、君に今のところ敵意はない事は伝わったよ。ではギルドマスターとして、いや、国民として、この国を愛してくれないか。」
「国を愛する事は別に構わないわよ?でもその愛する国の中の反抗的な奴は消し去るから安心してね。」
「まぁ、ひとまずこの話はおしまいにして、最後に聞きたい。君ロイヤルホテルの場所分かるのかい?」
「あ、分からないわ。さっき受付嬢に教えてもらったのだけれど、外見がどんな感じなのか全く分からないわね。」
「だと思ったよ。それでその服装で行くんだね。」
「私はずっとこの服装よ?この服に関しても、貰ったものだし…。」
「え、黒薔薇を貰う…?なんの冗談を…。黒薔薇の服はこの国の国庫の2割くらいの値段がするんだぞ…。その譲った人は…なかなか肝が座っているな…。」
「その服を着ているだけで明らかに大物に見られるから、例えばスラムとか行く時は注意するといいよ。」
「そういえば、こちらも聞きたかったのだけれど、あのマイシャと呼ばれていた受付嬢、冒険者か何かなのかしら。」
「あー、マイシャはSSランク『天眼』のマイシャと呼ばれている。今は冒険者兼受付嬢をしてもらっている。彼女は実務が得意なようでね。」
「私もいつかは2つ名で呼ばれてみたいわね…。名声?が手に入るんでしょ?」
「まぁいつか勝手に呼ばれ出すさ、有名になれば必ずね。」
「あー、それと冒険者証なのだけれど、これ簡易的に表示させる機能ないかしら。」
「あるよ。名前と職業とレベルと種族だけ表示させる機能。そういう感じに設定したいのかい?」
「それをよろしくお願いするわね。」
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「とりあえずこれで設定したよ。とりあえず自分で確認して見てほしい。」
名前:イリア・フィーリアス
種族:人間族
レベル:177
職業:魔闘士
(さすがにレベルは偽装しないといけないわね。レベル14は低すぎるから疑われかねないから。)
「えぇ、ありがとう。」
「とりあえずロイヤルホテルの外見だけどね、オリハルコンの壁で作られていて、入口にロイヤルホテルって書いてあるから分かりやすいと思うよ。かなり広いから、色々あるから楽しんでおいで。」
「えぇ、ありがとう。それじゃ失礼するわね。」
イリアは笑顔で退室する。
その足でそのままこれから泊まる予定のロイヤルホテルに向かった。
次回はロイヤルホテルの回です。ホテル名が思いつかないのでとりあえずロイヤルホテルで。思いついたら改名します。




