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第三話 解剖


 ケース2。


 こちらが家ですと案内された木造の建物が、冗談だろってレベルでボロボロだった場合。


『長老行っちゃいましたね』


「……」


 お掃除、なんてスキルを持っているせいか、俺は昔から綺麗好きだ。いや、潔癖症と言った方がいいかもしれない。


 そんな俺が蜘蛛の巣をかき分けていける訳もなく、玄関の前で固まっているのが現状である。


『まずは掃除からですね』


「本当はすぐにでも取り掛かりたいことがあったんだが仕方ない。スキル発動」


 俺は右手を地面に近づけ、ルンパを二台とプロッペを一台出した。


 ちなみに俺はルンパの後にプロッペを作ったのだが、このフォルムがかなりお気に入りである。


 人の頭のような形のてっぺんからプロペラが生えていて、これがくるくる回って飛ぶ。かわいい。


 そして前面ではライトが顔の形に光っている。

 この表情は電池残量やモーターの調子、その他諸々で変化する。


「かわいい。な、そうだろ三号」


『先輩方! いつもお疲れ様です!』


「へ?」


 三号は突如ロボ達に向き直り、恭しく頭を下げた。


「えお前らそんな感じなん?」


『大先輩ですから!』


 プロッペが自慢げなのは表情ですぐに分かる。

 ルンパの方からも少し先輩風が吹いている気がした。


「…まぁとりあえずやるぞ。ルンパは床の汚れを、プロッペは蜘蛛の巣の処理を頼む」


『あれ、私は?』


 そういえばコイツもロボ掃除機だった。

 初仕事が魔物討伐だったからすっかり忘れていた。


「じゃあ俺と水周りの方をやろう。あるか分からんが」


『承知しました』


 斯くして俺の領主生活は始まったのである。


────────────────────────


『ふぅ…あとちょっとですね』


 あれから三時間程経っただろうか。やはりロボの力を借りれば早く終わる。


 現在我々は台所の掃除を終え、居間の手入れの仕上げを行っている。

 ちなみに風呂は無かった。どうしろと言うのか。


『お、これネズミの魔物じゃないですか。柱噛んでますよ』


「じゃ殺さないように捕まえといてくれ。あとで試したいことがあるんだ」


 えー汚いですよー、とか言いながら尻尾をつまむ三号を含めて周囲を見回したが、もう特に汚れはないように思えた。


「もういいかな。プロッペ、ルンパ、戻っていいぞ」


 という一声で、ロボ達は光を纏って消えた。


『あ、私は仕舞わないんですか』


「お前は、なんか二度と出せない気がするから」


 後々試してみた結果、二台目の三号を出せはしたものの、起動させることが出来なかった。

 やはり死の淵に立たされた時ほどの必死さがなければ起動しないのだろうか。


『で、コイツどうするんですか』


 チュウチュウと鳴くそれを見ながら、三号が問う。


「袋にでも入れてこっちに渡してくれ。解剖する」


『かいぼっ…!? なんでそんなこと…』


「別にいいだろ何でも。そうだ、畑を荒らしてたシカの魔物も捕まえてきてくれるか?」


『まさかそれも解剖するの…?』


 領主生活はまだ始まったばかりだ。


 親父達は今頃どうしているのだろうか。


────────────────────────


「ねぇ親父…なんか臭くね?」


「ワ、ワシはしっかり風呂に入っとるぞ!」


「いやそっちじゃなくて。城だよ城」


 城。そう、ここはライキルト城である。


「確かにそうだな…メイド達は何をしているんだ」


「おいそこのメイドォ!」


 玉座の前を通り過ぎようとしたメイドを、ドットが怒鳴りつける。


「はいぃ!?」


「最近城が臭いし汚いぞぉ! 掃除が行き届いていないんじゃないかぁ!?」


「そ、そう言われましても……ほら、お二人って時間を気にせず汚して回るじゃないですか。で、それで放置された汚れって落ちづらいんですよ」


「そんなの、24時間体制で見回ればいいだろ!」


「えぇ!? この人数じゃ無理ですよ、ロボットじゃあるまいし…」


 ロボット。その言葉が二人の脳幹をつついた。


「…親父、エンジニアに頼んでまた掃除ロボ作ってもらう?」


「そ、そんなの格好がつかんだろう! 全部壊した手前で!」


 王が唾を飛ばして叫んだ。


「とにかくもっとしっかり掃除せい!」


「はっ、はい! 失礼します!」


 メイドがそそくさと去っていく。


「…メイド増やすか」


「……」


 ちなみに街中の清潔も失われつつあるのだが、それはまた別の話である。



ブクマ、評価、感想は作者のモチベに直結します。



続きが気になると思ってくれた方々、☆1でもいいので是非とも評価をよろしくお願いいたします。


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