ハーレムってなんであんなに気持ち悪いんですか?
「僕、なろうで小説読むのが好きなんだ」
なんて。
絶対他人には言えない。
その理由は、俺Tueeeからの、異常なハーレムが売りのサイトだからである。 (この話でハーレムと定義するのは、主人公に恋愛的な好意を持つ女のみとする)
なろう好きの僕からすれば、いや違う、もっと奥が深いから!
と、反論したいところだが、やはり総合のイメージはそんなものだろう。
だって現に、そんな作品がうじゃうじゃしているのだから。
そしてその”俺Tueee”や”異常なハーレム”は、明らかに一般の娯楽ではない。
言うなれば、夜の娯楽に近い。
人間の欲をそのまま体現したものだからだ。
人間の欲は醜い。それをオブラートに包まないのだから、嫌悪する人が出て当然である。
砂糖の入った袋を持ってきて、「俺砂糖好きなんだ」なんて言いながらそれを口に流し込む人がいたら、「うわぁ……やばいなこいつ」と思う人が大半だろう。
そのくせ、お茶と和菓子を食べている人がいたら、「きちんとしているなぁ」なんて、むしろ感心するまである。和菓子だって砂糖の塊でしかないのに。
つまり、一般に受け入れられる欲というのは外側を綺麗に包装して表したものなのだ。
なろうは、その綺麗に包装された娯楽と、いわゆるエ○ビデオのような欲剥き出しの娯楽の、ちょうど中間辺りに位置している。
だから嫌悪されるし、「なろうが好き」と胸を張って言うことが出来ない。
まあここまでは誰かが言ってそうなことなので、前置きとして。
なぜ、”なろう”のハーレムはあそこまで気持ち悪いのか。
俺Tueeeの気持ち悪さですら、ハーレムの気持ち悪さには遠く及ばない。
だって、俺Tueeeはハーレムがあってこそのものなのだから。俺が強いことに快感を求めるのはもちろんなのだが、最終的にそんな俺に惚れるヒロインを求めることに意味がある。
俺Tueee自体はそこまでギラギラした欲ではないのだ。
そもそも俺Tueeeは世間一般でもそこまで嫌われていない。
ナルトやワンピースだって俺Tueeeを含んでいるのだ。
俺Tueee代表格である転スラだって認められつつある。
無駄に無自覚か、激しいハーレム要素か、イキりまくる主人公が気持ち悪いだけなのだ。
バトルで薄められた俺Tueeeは、もはや好かれるまである。
だがハーレム。
お前は駄目みたいだ。
未だにハーレム要素ありありの作品は、ライトノベル出身のものぐらいしかない。(もちろんあるにはあるのだが…)
鬼滅の刃、君の名は、進撃の巨人、東京リベンジャーズ……
一般に受け入れられる作品では、主人公に恋をするヒロインは一人以内と、そう決まっている。
ハーレムを含めば女性受けしないという理由もあるのだろうが……。
やはり、ハーレムは世間一般で特に嫌われている。
僕だけじゃないはず。
ハーレムは気持ち悪い。とにかく気持ち悪い。
なんて言いながら、それでもなろうでハーレムものを読む自分がいる。
しかし読めば読むほど気持ちが悪くなる。胸焼けしそうになる。
それでも読みたい。
――酷い矛盾だ。
そこで気付いた。
ハーレムが嫌いなわけじゃない。
ハーレムという題材自体には需要がある。
つまり、ハーレムの一員であるヒロインが嫌いなのだ、と。
――これも矛盾している。
が、しかし、それが割と真理をついている気がする。
「えへへ。太郎にだったらなんでもしてあげる」
「そんなことないよ、太郎は凄いよ!」
「太郎は私のだから!」
「太郎とデートしたいよぉ」
ハーレムもののセリフではこんな甘々ヒロインが次々と出てくる。
思うに、このセリフが”気持ち悪い”の元凶だ。
「なんでもしてあげる」
なんて。
全世界の男共が言われたいセリフでしょ?
だから、気持ちが悪い。
自分の妄想そのまま文字にしてセリフにするから、可愛いはずのヒロインも気持ち悪くなる。
前置きで述べた通り、欲は醜いのだ。
ハーレムものは読みたいのに、そんな醜いセリフで溢れたノベルしかない。
正直、見ていて辛い。ストレス発散に読むものなのに、逆にストレスがかかる。
辛くないハーレム小説もあるにはあるのだが、少ない……少なすぎる。
じゃあ自分で書いてやんよと、そう思った。
のだけれども。
無理だった。難しすぎた。
ハーレムを中心としたノベルを書こうとすると、あら不思議。
気持ちの悪いセリフしか思い浮かばなくなる。
つまりは、主人公をモテる設定にしてしまうと、セリフがどうしても甘々になってしまうのだ。
嫌気がささない、それでいて主人公への好感を示すことは、非常に困難なのだ。
ハーレムと気持ちの悪いヒロインには、切ってもキレない関係があるということだ。
恐らく、そんな苦悩から生まれたのがツンデレ、ヤンデレ、毒舌。
それならば気持ち悪さが幾分ましになる。
「別に太郎が好きってわけじゃないから」
もはやテンプレになりすぎて気持ち悪くなってきたザ・ツンデレセリフだが、「太郎のこと……す……好き」よりはまだ受け入れられる。
主人公にべた惚れするヒロインよりは、よほどいい。
「ねぇ、どう?太郎のためにポニーテールにしたよ。似合ってる?」
「うん、似合ってる」
みたいな。
主人公のセリフも含めて、これもまた気持ちが悪い。
そこで素晴らしいのがヤンデレ。
「痩せ気味で小柄。ややタレ目のおっとりとした性格。ポニーテール。オタク気質あり。怖がり。運動が苦手。絵が得意。太郎の検索履歴からタイプを調べたよ。ねぇ太郎太郎太郎――」
そう。
やりすぎてしまえば、いっそ清々しくなる。
怖くはあるが、気持ち悪くはない。
「無理。キモい。近付かないで」
毒舌。
こちらもそこまで嫌気が刺さない。
決して変な性癖があるわけではないはずなのだが、少なくともデレデレヒロインよりは毒舌ヒロインの方が可愛く思える。
あの、デレデレセリフ独特の気持ち悪さは感じない。
さて。
なんだか言いたいことを言っただけになったが、とにかく、大半のハーレムのヒロインは気持ちが悪い。
剥き出しになった欲の塊のようなセリフ……。
しかし、ハーレムものである限りそれは仕方がない部分でもある。
”その妄想したセリフを、どこまで綺麗に包めるか”
それが、ハーレムの気持ち悪さを薄めるのに大切なことだと思う。
極端に言えば、「好き」というセリフを使ってはいけない。
遠回しにそれを伝えて、痛くない程度で主人公への愛を表す。
だがそれは難しい。非常に難しい。
しかしそれが出来なければ、ハーレムは永遠に嫌悪の的になったままだろう。
主張が乱反射したが、共感できる部分があっただろうか?
非常に反感を買いやすい書き方だったが、ハーレムという題材に諦められないからこその思いだ。
皆が心に抱える悩みをドヤ顔で語っただけかも知れないが……とにかく。
「洗練されたハーレムものが読みたい」
というお話でした。