6話 呪いの専門家?
学校という学ぶ場所で働いているんだから雰囲気が違うのは当たり前で、それは世界が変わっても同じだった。
場所は職員室。ある人物に相談を行うためだ。
残念ながらルナやミドラは呪いについての知識はさほどなかった。
しかし僕が呪いに関してここに調べに来たのが目的の大半だと言うと、
何か情報が入れば教えてくれると言ってくれた。友達って良いな……。
「呪いの専門家か……。」
「はい。いくつか魔術の授業は受けてみたのですが、収穫は乏しくて……何方か心当たりはありませんか?」
今の会話の相手はクラーク教官。試験の担当と決闘の立会いをしてくれたり等、少し縁のある方。
また父親とも縁があったらしい。
ならばと全く見知らぬ相手より話しやすいと思い少し相談させて頂いたのだが。
「一応、一人いる。だがこの広い学園で一人というレベルだ。」
「どんな方ですか?」
「一言で言うと……変人だ。会うだけ会ってみるといい。」
変人度合いで言うと女のカッコしてる僕も大概だから大体の変人には目を瞑れる。
幾ら家族が用意してくれたとはいえ、女らしい服を着る必要も無いと言えば無いのだが……。
ほんのちょっとだけ、この境遇を楽しんでる節があるのかもしれない。
偶然今日は学校に顔を出しているらしい、呪いに関して詳しい人物を訪ねてみる事にした。
名前を「リザ・ウィットナー」。赤髪ロングの女性で、常に気だるそうな雰囲気をしているらしい。
が、会う方法が問題で……はっきり言ってこんな用が無きゃやりたくない。
「タバコか……。」
タバコは前世を含めても経験が無い。
因みにだがこの世界では酒やタバコに年齢制限が無い。
というのもどちらも主に薬として扱われており、治療を基本的に魔法で行うこの世界ではあまり危険視されていないのだろう。
依存作用は毒として治療出来てしまったりするのだろうか。
なお当然だが、未成年の喫煙は日本ではNGだ。ここは異世界。
で、肝心のリザ女史はこんな世界で珍しく喫煙愛好家らしい。
自発的に彼女を見つけようとすると困難を極めるが、タバコを吸う人には寄ってくるらしい。
それがナイスミドルのオジサンか、年端もいかない若い女子のどちらかだと面白い位引っかかるとの事。
学校側もこの方法じゃなきゃ見つけられないとか。そりゃ変人だわ。
「どうしよっかなぁ……他の方法無いって断言されちゃったしなぁ。」
流石に少し迷う。酒であれば前世で経験があったから此方でも抵抗は無かったがこれは初めて。
火は魔法で付けるとしてもそもそも吸い方が分からない。
管の物であれば分かりやすい物の見知った紙のタバコで、しかしフィルターがどっちだか分からない。
何だこの不親切なデザインは。匂いで分からないか嗅いでみたが臭いだけだ。
「吸わないのかい?」
「おわっ!」
後ろから手元を覗き込むようにして話しかけられた。
その程度では普通は動揺したりしないのだが、やはりそれほど個人的にこの物質を避けているという事か。
妙なやましさをずっと感じていた。
話しかけてきた女性を伺う。赤髪ではあるものの短髪で、気だるそうとは思えない。
髪は長→短であれば矛盾は無いのだが、この雰囲気は多分違うだろう。
気だるさの欠片もないし、あるいは双子の姉妹だろう。
それに吸う以前に火も付けてない。
「ええと……はい。」
「吸わん方が良いよ。吸わずに済むのが一番良い。意外と知られてないが猿になるんだよソレ。」
「……まだやめときますかね。」
「賢いね。」
まだ早いかなって。法が無くとも気持ち的な問題。
見れば赤髪ショートは隣に座り、流れるような動作でタバコに火をつけた。
「それで?」
「はい?」
「何でそんなもの吸おうと思ったんだ? 失恋にしたって入学から1週間じゃ早いだろ。」
「そんなんじゃないですよ。会うべき人に会うのにコレが必要ってだけで。」
タバコに紅の色が付いているのが妙にエロい。
サキュバスらしいが包み込むような女の魅力のあるルナと、
隣人で年上でだらしない姉のようなミドラ達とはベクトルが違う。
見てるとちょっとドキドキする感覚があった。
「ああ……なるほど、クラークの差し金か。女の子にこんなジジ臭い物渡すなっての。」
つまんでいたタバコをヒョイと奪い取ると……一息で吸い尽くしてしまった。
地上最強の父親でしか見た事ないぞそんな吸い方。
しかしクラークの名前が出たという事は、僕の感はハズれたのだろう。
「ふぅ……。で、私……リザ・ウィットナーに何用だ?」
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