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5話 式から一週間後

 入学から一週間後、装備のチェックが完了したとの連絡が来た。

学校側に預ける理由は幾つかある。

持っているだけで周囲に呪いを振りまく物騒な代物を持ち込まれないように検査するのと、

非人道的な武器を持ち込もうとしているのを取り締まる目的があるそう。


尤も後者に関しては法律が関わってくるらしいが、あまり詳しくはない。


先日の一件でミドラという隣人に身だしなみ関係の世話になる事になったため、

面白そうという理由で付いてこられる事になった。

一応、そうでなくとも装備の点検に出していたからどのみち行くのは変わらないらしいが……。


その後、工房に向かう途中偶然ルナとも遭遇した。目的は勿論同じ。

3人並ぶとやはり身長差が凄い。

ミドラもルナと並ぶくらいで、後ろから見ると頭の位置関係がVの字になっているだろう。


……ちっちゃくない。二人がデカいだけだ。


意外と言うと変かもしれないが、ルナとミドラは割と気が合うらしく、胃痛枠は回避できそうだ。


 武器以外の装備も受け取ったのち、興味本位で色んな場所を覗いていた。

工房と言うだけあって整備にとどまらず生産も行っており、幾つか展示品があった。


「そんな立派な武器があるのに他の物が必要なんですか?」

「これは奥の手というか、いざって時以外は使わないつもりかな。」

「そして使いどころを見定められず抱え落ち……と。」


指し示すのは僕が背中に携えている太刀。

これ皆伝を修めた者に渡される唯一品で、旅立ちの際に家族から手渡された。

始めて持った際、体の一部かと思う程妙に手に馴染む感覚があったのを覚えている。


……それにしても、僕がそんなにケチケチするような印象を何処で与えたというのか。

エリクサーだって直ぐに使うしほうちょうも開幕で投げるくらいだぞ。


暫く見て回ったが、これと言ったものは見当たらなかった。

これと並ぶ武器がそうそう簡単に見つかっても困るのだが。

そういえば二人はどういう装備を持っているんだろう。

ルナはそれっぽい事を聞いたような気がするが、ミドラとはそういう話をした覚えがない。


「と、そうだ。ルナの装備ってどんな感じなの? 水晶だっけ。」

「はい。見てみますか?」


そう言って腰に掛けてあるポーチから取り出したのは5つの水晶。

一つは色が無く他と比べて一際大きい。その他は赤、青、緑、黄と色が付いているが、少し小さい。


「これは……?」

「この大きい子が魔力を貯めておくもので、それ以外の子は属性を担っています。」


そうか、サキュバスはあまり体に魔力を貯めないんだったか。

となると一人分の魔力を担うのだから、見た目の割に結構な容量を誇るのだろう。


「先週、テトちゃんに貰った分はなんやかんやで使い切ってしまったので、今は魔法を使うときはここからですね。」

「……テト子よ、サキュバスに魔力をあげたって事はもしや。」

「……知らなかったんです。」


サキュバスという種族は魔力を採り入れる手段が限られる。

それを知らずに提案した僕のミスだ。

一応、テトラとしては初めてではないのだが、女テトラとしては始めた。

そんなものが代償に捧げられるとは思わないが、ルナが不満と言うなら『初めて』というカードをを切るつもりだったのだが……意外とそうは思ってないらしい。


「流石に女の子とは初めてでしたが……別に、本来は良くある事ですので。」


本来は……というワードと、含みのある抑揚が引っかかった。

まあサキュバスという事で大体予想は付くのだが、その辺りの事情に突っ込むのは流石に野暮な気がした。

僕だって事情は聴かれたくないしね。この世で一番聞かれたくない自信があるくらいだ。


「本来は?」


聞いちゃったよドラちゃん……いや、これは聞いても大丈夫なラインなのだろうか。

自分がやましい事を抱えてるだけに憶病になっているだけなのだろうか。


「ああえっと……ご存じかとは思いますが、大半のサキュバスは魔力を周りの生き物から取るんです。

けど……私はどうもそれが上手くできないので、こうやって外に貯める機構を用意しているんです。」


上手くできない、つまり苦手か。なんというか、正直言及しづらい。

そんな事無いよと言うのも何か違う気がする。

仮に言った場合を考えてみたが……あまりいい結果にはならないだろう。

どう切り返すか考えていた時、意外にもと言うと変だが次に口を開いたのはミドラだった。


「おお!私も魔力制御が上手くできないからさ、こうやって色々道具に頼っているんだよ。

それにそのおかげでここに来るのにテト程じゃあないが力を付ける事になったんだ。」


そういって勢いよく取り出したのは銃。

と言ってもこちらの世界で銃はめっきり見ない。魔法を使った方が速いからだ。

魔法学校では一応技術の一つとして受け入れられているが、有効的な場面が限定的すぎるというのがこの世界での認識だ。


しかしその一方で魔法が使えない人の自衛手段としても用いられる事がある。


「テトちゃんはどうでしょう? 武術に長けている人は魔術に乏しいとよく言われていますが……。」

「僕は基礎を母親に教えられたぐらい。イメージ通りで剣術一筋だったからさ。」

「と、なるとこの3人だと私が唯一と言って良い魔法使いですね。」


出身地がやや田舎であるのと、実家が剣の家である事。

この二つの要因から僕はこの世界の魔法・魔術について詳しいとは言えなかった。

ここに来た目的でもある呪いと魔法の関係等に至ってはまるで見当が付いていない。


「ルナは魔力の供給元に難があるだけで魔法はちゃんと使えるし分かるんだよね?」

「そうですね。一般的な破術と癒術は一通り。」


破術と癒術。

名前の通りに破術が破壊を主軸に造られた魔法で、癒術はそのまま癒す魔法だ。

僕の目的がそのどちらに属するかは分からないが、分からないからこそ聞いてみよう。


「じゃあさ、呪いとかって詳しい?」

閲覧ありがとうございます。


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