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2話 入学式へ

 学校までの道のりをルナリーンと話しながら歩いた。

僕よりかなり身長が高く、170程はあるだろうか。おかげで並ぶと段差が凄い。

相手の目を見るのも一苦労だが、恐らく田舎者同士辺りを見回してばかりでそれどころではなかった。


「ここって本当に広いよね。校舎まで結構あるし、

ちゃんと通えるかな……。僕朝弱いんだ。」

「確か……学生の寮は校舎に近かったですよ。」

「それは良かった。近いと通学も楽でいいね。」

「それはそうなんですが、いつも校舎に行くという訳でも無いはずですので、

便利かと言うとそうでもなかったりします。」


そうなの? と言いかけて気づく。

僕はここがどういう場所か具体的には知らない。

呪いの影響でこんな体になり、地元から逃げるようにしてここに来た。


勿論この世界の事と呪いの事を調べたかったのはそうだが、

逆に言えばそれさえ出来ればどこでも良かったまである。


「ルナリーンって詳しいんだね。」

「ルナで大丈夫ですよ。テトラさんはどう呼んで欲しいとかありますか?」

「む……一応、家族と姉貴分にはテトって呼ばれてた。」

「じゃあ私もテトちゃんって呼びます。」


友達が出来たような感覚で、正直少し嬉しかった。……ぼっちじゃないやい。

ちゃんと地元にも居るよ。二人ぐらい。

しかしちゃん呼びは流石に頂けない。


「ちゃん……って、僕は確かに若いかもだけど……。」

「可愛い生き物には全部付けてます。」

「じゃあアレは?」

「ワンちゃん。」


おかしい。首が二つでヨダレを垂らした、

全ての人類をエサとして見てそうな犬を指さしたつもりだったんだが、この世界では可愛い判定なのだろうか。

……というか、犬の事をワンちゃんって呼ぶのか。



 学校に近づくにつれ人だかりは目に見えて増えてきた。

ルナは人だかり自体が苦手なのか、ちょっと嫌そうにしていた。


「こうなってくると上手く避けながらじゃないと進めないな……。飛べればいいんだけどね。」

「え? 飛べますよ。」

「えっ……。じゃあ、最初から飛べば良かったのでは?」


それはそうなんですがと前置きしルナは事情を説明した。

聞けば体に魔力をあまり溜め込めなく、自分で作るのも遅く、飛ぶとその日はもう何も活動出来ないらしい。

帰りの寮までの道は飛ぶつもりだったとか。

普段は魔力を貯めてある水晶などから逐一補給をしているらしいが、

ここの入学試験では持ち込めず苦労したんだとか。

肝心の水晶は装備の判定をもらい一旦預かられてるとか。


とにかく様々な事情で僕と偶然出会えたみたいだ。


「なるほど……。魔力を僕が渡せば飛べる?」

「えっ……。可能と言えば可能ですが、その……良いんですか?」

「この人の壁を通り抜けるのは疲れ、かと言って待ってると日が暮れるかもしれないし。」


ルナは少し周囲を気にしている。心なしか少し顔が赤い。

はて、変な事を言っただろうか。


「……分かりました。テトさんの魔力を少し頂きます。」

「大丈夫ですよ。魔力は人より少し多いと自負しているので。」


そういって手を差し出すが、ルナは手を取らない。

頂きますとは言っても、体のどこかが触れていないと渡せないのだが……。


ルナが動いた。手は握り返されず、両肩に置かれる。

そして顔が近づいてきた。考えられるのは。


「んむっ……!」


唇と唇の接触。マウストゥーマウス。

つまり……キスだ。


それもただのキスじゃあなく、体の力を根っこから引っ張られて奪われるような。

全身を咥えられて吸われているような感覚だった。


そして不思議な事に快感も感じている。

屈んでいるルナに支えられていなければ倒れこんでしまいそうな程に心地よかった。


唇に涼しさを感じ、ようやく行為が終わった事に気づく。

舌の侵入はなかった。


「ふぁ……。」

「ご馳走様でした~。魔力の質が凄く良くて今すっ……ごく気分がいいです。」

「そ、そうですか……。」


テンション高いですね……と言おうとしたが、腕の下を後ろから抱え込まれるように持たれ、

それを認識した途端、地面や人の壁が遥か下方に見えるようになった。


そこから風を感じさせつつ緩やかに下降していく。跳躍ではなく紛う事なき飛行だ。


「このまま式のある館まで行きます! 一応、捕まってて下さいね!。」


返事と言わんばかりに腕を強く握った。

力が抜け気味なのもあったが、風の音に遮られない程の声が出せる気がしなかった。

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