23話 指輪の呪い
僕たちがリーシャへ、ひいては指輪の呪いに行った行為を挙げてみよう。
まず外せないと言われていた指輪を多少強引ではあるが外すことに成功した。
加えて指輪の呪い自体を解除するには至らなかったが、発生を止めることは出来た。
これにより、指輪が何にも装着されてない状態に戻せた。
ここまでの行為で指輪の事を厳密に表現するなら、「呪いの発動条件を消した」辺りが正確。
なので誰が付けても呪いは発生しない。そんな状態。
しかし既に発生した呪いの影響は呪いを止めた程度ですぐに治ったりするものではない。
ややこしいな……カードゲームのテキストを読んでいるような気持ちだ。
リーシャ本人の影響はと言うと外せた時点が一番呪いの影響が弱まった感覚があったらしい。
なので見た目だけを人にして街中を堂々と歩くことが出来るようになった。
「……とはいっても、尾はそこにあるので偶に踏まれるのですが。」
見た目と実際の肉体が違うのは苦労しそうだ。
ともあれ。
呪いの影響は徐々に弱まっていくことが確定し、後は時間が解決するという状態には持って行けた。
医者の言う「傾向は順調ですね。退院しても良さそうです。」のような評価。
これは広義的に見てもリーシャの依頼の「呪いの解呪」を達成したと見て良いだろう。
脳内で医者(の姿をしたリザ)と厚く拳を握りしめた。
「という事で、私たちが現状出来る事は全部行えたと言っていいと思う。」
「ええ。お陰様で肩身の狭い思いをしなくて良くなりました。本当にありがとうございます。」
見た目が魔物になるのは肩身が狭いで済む話じゃあないと思う。
「では改めまして。ラーニアへの依頼を達成したとして完了報告させていただきます。」
「はいよ。学園への報告だけは絶対に欠かさないでくれ。」
調査+呪いの解呪依頼という事で入学早々こんな期間の滞在が可能になっていた訳だ。
わざわざ釘を刺す気持ちは分からんでもないが、もう少し言い方があると思う。
これがサバサバ系女子だろうか。
という事で。ナーザフへの出張学習は終わった。
当初の目的であった呪いについての資料は即物性の礼として幾つかリーシャに譲ってもらった。
一応今すぐ買えるという訳ではなく、数日ゆとりがあるそうだ。
もっとも僕にはここでの用事も特にない状態なのだが。
あまり月日に関して気にしていなかったが、こちらに渡りおよそ一か月が経過していた。
指輪の呪いに関しても現状の手を尽くしたのと、依頼人がOKを出した事により完了。
長いようで短い出張も帰還の日がやって来た。
そう。帰るという事は再度船に乗るという事だ。
船に乗るという事は船に乗るという事でもある。
「そんな嫌そうな顔しなくても面倒は見てやるから安心しろ。」
「はぁ……。」
憂鬱だ。真っ当な戦闘であれば自分で言うのもなんだが横に並ぶ者などそうそういない自信があるのだが、
酒だの、乗り物酔いだの、霊だの……そういったものに弱いのが情けない。
「という訳で、留守は頼みましたよヒスイ。」
「承知。」
なんかこう、無いかな……。こんなしょうもない弱点があるのは気に食わない。
乗り物酔いは場合によっては無効化できるとは言え、長距離移動に懸念が生まれるのは何ともしがたい。
酒は口にしなければ良いとしても、こちらは優先して対処した方がいいような気がした。
前回みたいに海賊に襲われるなんてことが無いとも限らないしな。
長期的な目標が呪いで、サブの最優先が乗り物酔いか。
……でもそんな体質如何なんてどうしようもないとは思うんだけどな。
思考が現代地球人故に手段が思いつかない。ボチボチ探すとしよう。
「え? 留守?」
あんまりにも自然に口に出したので一瞬聞き逃した。違和感が生じなかった。
「はい。私この度ラーニアに向かうことになりまして。」
「はぁ……それまた一体どういう。」
「リザさんから伺っていませんでしたか?」
彼女は本当に重要な話はちゃんとするが、普通に重要ぐらいだと通達しない事が多い。
そのくせどうでもいい話はする。若干いい加減な性格だ。
説明を求めようと思ったがまた居なくなっていた。猫みたいなやつだな。
「解呪依頼の報酬なんですが、あれだけの事を協力してもらって本を数冊……というのは私としてもどうかと思っていました。
そこでリザさんから提案されたのですが、私がラーニアに知識提供に向かうことになったのです。」
「という事は?」
「私も今日から貴方の教官になるという事ですよ。よろしくお願いいたしますね。」
閲覧ありがとうございます。
もしお手すきであれば、☆やブックマーク等押していただけると幸いです。




