21話 幽霊屋敷
恐怖とは正体が分からない物に対して発生すると言われている。
理解が及ばないから怖い……といった具合に。
しかし僕は理解が出来ない訳ではない。
幽霊は腹立たしい事に、想像の通りで基本見えず、壁を通り抜けたりする。
つまり物理的な接触は起こせないという事……かと思えば、
気が向いた時だけ物を投げたり直接掴みかかってきたりする。
その辺曖昧なのが非常に腹立たしい。ムカついてくる。
何より対峙した時、まともな知能を兼ね備えていれば僕のような物理アタッカーは封殺出来てしまうからだ。
だから怖い。対処手段がまるでない相手。
そんな負けイベ系が好きな奴は対処法を知っている奴だけだ。
僕は狩り取られる者以外のペナルティキャラは大嫌いだ。
*
「今何回目の悲鳴でしょうかね。」
「数えるだけ無駄だと思うが……。」
保護者と友人は外で待機していた。
前衛であるテトラとヒスイの二人と比べると自衛能力は流石に劣ってしまう。
恐らく一般的に見ればそんなことは無いのだろうが、比べる相手が悪すぎる。
味方に居れば頼もしい。敵に回れば恐ろしいの体現とも言うべき人物が恐怖で使い物にならないのだ。
いや、使い物にならない程度ならまだいいだろう。
物音がすれば即座に斬撃を放ち剣圧のみで壁を切る。
そんな致命の一撃が頻繁に飛んでくるのだ。
むしろ一緒に居るヒスイがおかしい次元に感じる。
再度、館が崩れんばかりの声が響いた。
半分以上怒りの感情が混じっているようにも感じ取れる。
もしや声だけで崩そうとしているのではないか? そんな疑念が二人の間に起きた。
「あいつ肺活量凄いんだよ。」
「道理で……よく響く声だなあと。」
「水中の探し物とかに行くことがあればアイツに頼むことになりそうだ。」
と、彼……いや彼女の苦労も考えずに暫く。
「……止んだ? まさか気絶――」
「いや、アイツは見えた通り精神はタフだ。力づくじゃ意識を落とせない。北風と太陽みたいな感じだな。」
「であれば逆に優しく接されたとか。」
「なら問題ないだろう。」
「……ですかね?」
二人の保護者がこんなにも呑気なのは互いの付き添いへの信頼からだ。
どっちが強いかと言う話は恐らく持ち出してはいけない。
*
物事を逆に考えるという事は必要な時ほど思っている以上に出来ない。
肝心な時に柔軟な発想が出来るかどうかで代わる格は一つや二つじゃあない。
僕は……こういう時以外なら出来る。胸を張れる。出来ないのは今だけ。
「こんなにも視界を奪うのを苦労した相手は初めてですよ。」
「いや……ごめん。苦労をかけた。」
見えないのであればそもそも見えている必要はない。
そして視界を塞げば感覚は研ぎ澄まされ、曖昧だった気配が明確になる。
明確になればより怖いのではないか。 否、理解が及ぶものには恐怖は湧かない。
一つだけ嬉しい誤算があったのだが、物理は通じない事は無かった。
数回だけ少し重い煙を切った感覚があり、その度に少しだけ肩の重さが消えたような気もした。
「なるほど……感じ取れたらどうってこと無いな。」
「その感覚も変だと思いますけどね。」
なんかこう……バイ〇とかにこんなモンスターが居たような。
煙の中に一か所だけ濃い部分がある。恐らくここが核なのだろう。
深く観察した感じこの核だけはすり抜けられないようだ。
と、タネが分かってしまえばなんのその。
僕は元より壁などあってないようなものなので、奴らが近づけばそのまま切ってやればいい。
物理で除霊できる。素晴らしい世界だ。
「と、いう訳で。」
「これが恐らく彫金に使われていた工具類です。何度も取りに行くのは面倒なのでこれで全部持ってきました。」
「ご苦労様です。ヒスイ。」
「よく頑張ったな。テト。」
何故だろう。今回は労いの言葉が恐ろしいほどに体に染みわたる。
数十年ぶりに言われたような気さえしてくる。
苦労……していたんだな。今回。
「それにしても魔法も使わずよく立ち回れたな。」
「半分以上ヒスイのお陰ですよ。コツが掴めなかったらここブッ壊してたかもしれません。」
「どうやったんだ?」
「集中しただけですよ。そうすれば弱点の核が感覚だけで掴み取れました。」
これは呪いがどうとかよりも十分な知見だろう。
今後霊の類と戦うことになっても立ち回れる自信が今はある。
「……いや、そんなものがあるなんて聞いた事ないが。」
「ええ、初耳ですね。」
そんな馬鹿な。
「え、ええ? 見てたよねヒスイ。」
「え……いや、視界を奪ってからは特に戦闘は起きなかった記憶が。」
「お前……何を見て来たんだ? 大丈夫か?」
微妙にかみ合っていない会話が成立しているが、今はまだ視界が戻っていない。
瞼を開いていても何も見えない状態なのだが、今しばらく現実からも目を背けたくなった。
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