19話 休日
此方にきて何度目かの自由行動の日。
一人で過ごすのも悪くは無いのだが、先の「何もしない」日のせいで飽きた。
なので誰かの元へ遊びに行こうと思う。
「教官。」
「同級生と遊んでなさい……。」
フられた。
「なんでですか。」
「休みは寝る。一日中寝る。」
「一日を無駄にしたっていう謎の徒労感に襲われますよ。」
「あの二人はどうした。」
「かくかくしかじかで……。」
「なら仕方ない……か。水を差すのも野暮だしな。」
何で伝わるんだよ。
というのもどうも最近、彼女らは仲がいい。
女同士の友情は初めて見たが、あのノリに付いていくのは不可能だ。
故に一番接しやすいリザの元へ来た。
「セクハラはするのにデートの誘いは断るんですか?」
「教え子に手は出さん。同意があったらダメだろう。」
「無い方がダメだと思う……。」
なんだかんだ言いながらも外出には付き合ってくれた。
とても心優しい先生だと思う。
肉体労働には塩分が有効的なように、頭脳労働にも有効的な成分が存在する。
即ち、糖分。より正確には甘味。別名甘シャリ。二つ名は余分三兄弟の自分が一番長男。
リザは基本タバコを嗜んでいるが、甘い物も良く食べているのを見かける。
が、こっちの甘味は趣味に合わないのか、糖分摂取の回数は減っていた。
であれば、これはチャンスだ。
調査で籠ってる彼女の代わりにほっつき歩いた成果を存分に振るうべきだろう。
「何処へ行くつもりだ?」
「教官が今一番求めているものがある場所です。」
「タバコなら十分あるが……。」
煙たい。路上喫煙は辞めて欲しいものだ。
「煙吸うよりいい物ですよ。」
「大体全部当てはまるな。」
場所を移して喫茶店。先日リーシャさんと話した場所だ。
木材の茶色と白の壁紙が分かりやすいくらい和風だと主張している店舗だが、
思った以上に提供している商品の幅が広い。
教えてもらった場所をさらに誰かに教える。所謂伝道だ。
それとこれは完全に忘れていたのだが……お金の持ち合わせが無い。
出世払いという事にしてもらおう。ソレが何かは知らないが。
多分ブリの親戚だろう。この世界にブリって居るのかな。
「わざわざ連れ出して何のつもりだ? 手持ちも無いのに。」
「労うつもりだった。」
「ツメが甘かったな。」
こんなつもりではなかった。
改めて考えると何もしないにしても何らかの仕事を拾ってくれば良かったのだ。
世渡りの下手さは死んでも治らないという事か。
「まあいい。半分拘束してるのも私だしな。金が要るなら言ってくれ。」
「ほどほどにします。」
当然だ。と一言言いながら食べる手が止まっていない。
どうやらお気に召したようだ。
「太りますよ。」
……と言うと流石に怒られると思ったのでやめておこう。
それはそうと前から聞きたいと思っていた事を聞こうと思った。
「教官って欲しい物ないんですか?」
この人との関係は最終的には僕の呪いの解呪を目的としている。
であれば、達成した暁には何かしらの義理を通すのが道理と言う物だろう。
僕はこの手の物を考えるのが苦手なので、変に考えず直接聞くことにした。
「美少女かな……。」
ダメだこの人。早く何とかしないと。
「……最初、クラーク教官からどういう人物か聞いた時なんですけど、
ナイスミドルか美少女の二択って聞きましたよ。もう一方は何処へ。」
「男はもういい。愛想が尽きた。」
髪型の違いはそれだろうか。
テンションの違いもタイプとそれ以外でクッキリ分かれていると考えれば違和感も無い。
哀れ也クラーク。こんな美人に気だるそうに相手されるか。
「じゃああげる美少女を探すところからか……。」
「待て、お前何を考えている。」
「私が男に戻れた時のお礼ですが。」
生憎だが人間を用意する手段は持ち合わせていない。
異世界といえば奴隷という物も恐らくあるにはあるんだろうが見たことが無い。
仮に奴隷でも何でも美少女を用意したとして、恩人にちゃんと役立てるかも確定していない。
僕が恩返しに行ければいいのだが、その頃には男に戻っている。
新しいジレンマとしてどこかに登録したい気持ちだ。
「そもそも報酬目当てで動いていない。自分の得意分野で自分の力が及ばない物がある。
それだけで調べるに値する物だよ。」
「真面目なんですね。」
「……恩師の志を8文字で済ませるんだなお前は。」
感想文は苦手だ。
「僕を男に戻すと教官に恩を返す美少女が居なくなってしまいます。」
「戻りたくないのか?」
「そうでなく。礼が出来ないのは私としても不本意です。」
「それで、何が言いたいんだ?」
「もし私が男に戻れる方法が確立出来たら、の話です。
戻す前に……その、私を自由にしてもいい、っていうのはどうですか?」
「ブフッ――!」
頬張っていたクリームが散弾の様に吹き出され、僕の顔面に着弾した。
拭き取られる時、彼女が妙に顔を赤くしていたのは気のせいじゃないと思う。
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