18話 2人の異変
呪われ者同士偶然会ったはいいが、お互い色々な理由で目を引く。
一方は異常な長さの髪、もう一方は立場上。
そうでなくとも路上で立ち話をするのもなんなので、近くの茶店に入った。
着席後、「で、どうしたんですか。」と言う声が重なった。
お互いに見た目の変化が気になっていたらしい。
とりあえず会話のイニチアチブは譲った。
「その髪、どうなさったのですか?」
「かくかくしかじかで……。」
ハテナマークを浮かべてる。そりゃ伝わらんわ。
「寝てるうちにこんなになってて、正直全く見当が付かないです。」
「それはまた災難な……。」
髪が伸びるという現象自体は普通の人間の生理現象とも言えるだろう。
不可抗の現象だ。誰にだってある。はずだ。
しかし以前までは髪の長さは一定をキープしていた。
女になってからの二年間、切り落とした時以外は全くと言っていいほど伸びなかった。
それがこうなった。極端にも程がある。
「いえまあ、結局のところ実害らしい実害は邪魔以外は無いので大丈夫なんですが。」
「十分異常ですよ。」
"異常"とハッキリ言われ少し委縮する。
呪われた側同士だからこそ言ったのだろうか。
「髪が伸びただけ、等と思わないほうが良いかと。これが翌朝には蛇になっていたりしたらどうしますか?」
「どうも……出来ないですね。泣き喚くぐらいしか出来ないかと。」
「であれば、もう少し自分の身は大事にした方が良いかと。貴方以上に、貴方を思ってくれている方は苦労します。」
耳が痛い。仲間は大切にしていると胸を張れるが、自分の身はちょっと怪しい。
呪いで苦労をしている故の警告だろう。説教が身に染みた。
「ヒスイはどうですか? 正直に、苦労したかどうかを言って欲しいです。」
「率直な話、稼働が増えて疲れてはござるが、それも主の為故。」
「とのことです。主従関係でこれですので、友人関係となるとすぐに破綻するかと。」
音もなくその問答の為だけに現れたヒスイは面白かったが、彼女の証言はきちんと肝に銘じた。
「それで、リーシャさんは。」
適当に飲み物を口に含んで話題を切り替える。
物を切るのは得意なのに話を切り返すのは苦手で嫌になる。
「指はあの後生やすことが出来ました。それよりは指輪と切り離したことが原因でしょうが、
今までは上手くいかなかった隠蔽魔法が使えるようになったんです。」
隠蔽魔法とは、その名の通り見た目を誤魔化す魔法。
肉体を変える訳ではない為使い勝手ははいいが、魔術的な検査でバレやすいと言うデメリットがある。
僕の肉体変化はその上位に当たる。が、最近は肉体変化かどうかも怪しいとの談。
「だから外出が……本当に良かったですね。」
「ええ、これもヒスイやお二方の協力あっての事ですよ。」
そうは言われても僕がやった事と言えば指を切っただけだ。
他の人で代用できそうな役割を担っていると、お礼を言われても少し遠慮してしまう。
「そんな、私はただ……。」
「私、結構痛みには弱くて暴れるタチなんですよ。」
「あの身体で暴れられるのは勘弁して欲しいですね。」
「テトラさんのお陰ですよ。」
そうか……僕のお陰か。無理矢理にでもそう思うか。
「であれば、今度は私が協力する番ですね。」
「協力……ですか。」
「はい。何時になるかは分かりませんが、解呪に当たって人手が必要とあらば馳せ参じましょう。」
これは人生で大事な三つのネ。コネカネマネのコネの部分だろうか。
そんな邪な考えは置いておいて、協力してくれる約束が取り付けられたのだ。
謹んで受け入れるべきだろう。
「分かりました。もし困った事があったら相談させてください。」
翌日。今日は休みだ。
いくら調査を急がなければならないと言っても休みなしに稼働するわけにはいかない。
呪いの前に疲労で死んだら元も子もないからな。
休みの日は自由行動を取っている。そもそも年頃の人間が海外に来ているのだ。
仕事しかしないというのはフラストレーションが溜まって仕方がないだろう。
もっとも、僕の場合は魂の出身地に似ているからワクワクの方向性は別なのだが。
だからと言って僕も自由時間が嫌いな訳ではない。
誰だって友達と過ごす時間は楽しいしな。
さて、誰と過ごすか……。
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