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17話 異変

 女になってから朝目覚めて気にするのは第一に髪だった。

女になる前は短く、さらにその前は丸坊主だったので鬱陶しくて仕方ない。

一度自棄になって切り落とした事もあったのだが、どういう訳か翌日には戻っていて気味が悪かった。


気になる。という事は何か異変があれば第一に気づく。

寝相とかの次元でなく、今朝の髪の調子は一段とおかしかった。


「リザ、起きてくれ……頼む。」

「もう働けん……。」

「そのパターンは初めて見たが起きてくれ。」


寝ぼけているか夢の可能性もあるので、二者以降の誰かに見てもらう必要がある。

……というか最近稼働しすぎだよなリザ。最初会った時目のクマとか無かったもん。


「ちょっとだけ、目開けて異常無かったらすぐ寝ていいからさ。」

「……。」


対変態教師用の最終手段。

リザの手を物理的に、生で借りた。


「……異常事態かっ!」

「そうなんだ……助けてくれ……。」


効果は抜群で寝起きと言うのに眼光鋭く、独特な声の濁りは抜けていた。

あまり使いたくないが今回は本当に異常事態なのだ。

流石と言うか、僕の診てほしい事が即座に分かったようだ。

……というより、分からない奴は目が見えないレベルなのだが。


「テト、直立。」

「はい。」


背筋を伸ばし真っすぐ立つと、奇怪な重さが頭に掛かる。

数回、遠慮しがちに引っ張られ顔の角度が変わった。

明らかにヤバい物を見る目になっているのだが、この人の場合はそこまで不快じゃない。

なんというか、変なものを共有している感じ。


「……ちょっと私の頬をつねってくれないか?」


両方のこめかみを拳で挟んで力を入れてみた。

圧力がかかるように中指だけ少し開くのがコツ。

夢ではないって分かって頂けて何よりだ。


「地にはギリギリ付かないんですよね。」

「丁度……()()()()か。」


髪が一晩にして足首まで伸びた。明らか何らかの異常がこの身に起きている。



 髪は意外と重みがある。純粋に重みがあるのもそうだし、

ぶら下がっている事で頭に変な荷重がかかる事もあるのだろうか。

これでは人が殴れ……はしないだろうが、絞める道具にはなるだろう。そんなレベル。


戦う上では邪魔なのはさはさりながら、ここまでくると前衛後衛とか言ってる場合じゃなく日常生活に支障が出そうだ。


「ミドラ、切れる?」

「出来るは出来るけど……聞く限り切ってもすぐ戻りそうじゃないか?」


だよなあ。僕もそう思います。


「考えられるのは……別の呪いに触れた事か?」

「ありえそう。自信は無いけど心当たりはそれくらいかも。」

「なら……本体と指輪どっちにも触れないほうが良さそうか。」


いっぱい食べてその分伸びるなんて面白い体はしていない。

何かしらの影響を受けてしまったと見るのが妥当だろう。

であれば調査からは身を引くのも道理……ではあるのだが。


「それは嫌。」

「……って言うよなぁ。」


いくらそこに危険が孕んでいようと、だからと言って全て任せきりにするのは嫌だ。

乗り掛かった舟じゃないが、ここで降りる訳にはいかない。

道理は通っていないだろうが、筋は通っているつもりだ。


「気持ちは分かるが、頻度は落とせ。」


心配しすぎだと少し交渉してみたが、最終的にここに着地した。



 異国の地で一人、とうとうする事がなくなってしまった。

皆自分の仕事をしている。僕も例にもれず今は「何もしない」が仕事。


何もしないと言うのは一見楽に見えてこれが数か月続くと精神的に非常に厳しい。

特に、身の回りの人が頑張っている中自分だけ……となると真面目な人ほど堪える。

自分は真面目な自信は無かったのだが、数日で音を上げたのだから自分は真面目だと思うようにした。


とは言え今回は何もしない日一日目。まだ気は確か。


「どうしよっかなぁ……。」


迷わなくなった大通りをほっつき歩きながら考えていた。

これは実体験なのだが、寝っ転がって考えると一日が終わる。

故に外に刺激ときっかけを求めて外出したのだが……髪が邪魔過ぎる。


視線は体感でさらに2割増しだ。

服で2割増し、髪で2割増しだから4割増し……と思いきや4割4分増しだ。


言葉と数字のマジックに翻弄されるTS娘の剣士になりながら、

どうせだから調べものでもしようかと奇抜な図書館に足を向けたその時だった。


「おや……誰かと思えばテトラさんでは?」


聞き覚えのある声がした。だがその声の主はここに居るはずがない。

異国に居るはずがない……と言う意味ではない。こちらで出会った人物だ。

だが、その人物は現在外に出れない理由がある。故に声はおろか姿を見ても確信が持てなかった。


「その髪……どうなさったのですか? お陰で全然分かりませんでしたよ。」

「え……リーシャさん? その脚は一体。」


柑橘系の匂いを思わせる甘い声の持ち主は記憶の中ではリーシャしかいない。

実際に振り向いて姿を確認したのだが、確かに一部以外の姿はリーシャ本人だった。


ただし……足が生えている。

閲覧ありがとうございます。


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