間話3 TS娘Ver1.1
土下座をするのは初めてだ。
前世……20や30そこらの人生では少なくとも形を真似た事しかない。
本当に申し訳ないという気持ちが無ければ形だけでは土下座にはならない。
しかし。今のテトラ・ハミルトンなら、例え焼かれようが油で茹でられようがこの姿勢を一日は維持する覚悟があった。
「本当に、本当に申し訳ないと思っています。」
「いえ……騙されたなんて思っていないので大丈夫ですよ。」
「そっかー、テト子じゃなくてテト坊だったのかー。騙されたなー。」
頭をさらに強く、地面に押し付ける。
砂利が頭にめり込み刺激を生むが、僕の謝意の前には痛みとして認識されない。
……多分宿の床では凹みが生まれるので外に出て貰っている。
「言ってないだけとは言え、結果的に非常に不愉快な思いをさせてしまいました。
どうなっても、なんとしても、この罪は償います。」
「ですから、全く怒っていませんから。ミドちゃんもふざけないで。」
「テトラってどっちかと言うと男の名前だもんなー。気づかなかった私達も悪いよなー。」
「それ以上意地悪すると怒りますよ。」
「怒りは甘んじて受けます。というか、怒ってください。」
「テトちゃんもふざけてる訳じゃないですよね…?」
ふざけてなどいない。大真面目だ。
この胸に宿る気持ちは間違いなく謝意で、ごめんなさ意だ。
「テトちゃん。」
「誠にごめんなさい。」
「テトちゃんが許される道が実は一つだけあります。」
「切腹……ですよね。罪人なので介錯は必要ありません。」
これも剣の道だと言われ教えられたが、まさか本当に必要になるとは。
疑ってごめん父さん。
「それはちょっと分かりませんが、全部丸く収まる手段がありますよ。」
*
「本当にこれでいい……の、か?」
「完璧です。」
僕に与えられた罰は至ってシンプルな物だった。
「素体が良いんですからもっと良い格好しないと。」
「でも……ああいうのって動きづらいし。」
「はい。ですのでちょっと工夫を。」
工夫とは装備に付け加えられた2種類の装飾の事だろう。
一つは剣の鞘に付ける花の装飾。黒い鞘に青の花弁がアクセントになってとてもいいと思う。
結構オシャレな感じになった。これはいい。
「これ……布が増えたハズなのになぜか不安になる。」
「不思議ですね。似合っていますよ。」
スカートの部分にも手が加えられた。
元は制服的なシンプルなデザインだったのだが、裾の部分に目を引く装飾が施された。
俗に言う……フリル。
一線を越えてしまった感覚があった。
スカートは……男も履く。問題はその見た目で、ここからは彼岸だ。
「見た目だけじゃなく性能もちゃんとした物ですから。」
「そうか……なら仕方ない、か?」
「その素材、魔力付与品って言うんだそうです。」
軽いではなく軽くなる素材なんだとか。
何かしらのそういう装備が前衛は付けるものだとか。
今までバニラ装備しか身に着けてなかったから分からなかった。
甘えだって父さんが言ってた。
それはまあさておき。
動きにくい訳ではないのだが……本来無かった部分に布があると気になる。
まあ確かに幾分男服よりは動きづらいのだが、姉が気を利かせて作ったのだろうか?
他の女服よりは動きやすい。着たから分かる。
その長所が一段と優れたのだ。身に着けない理由はは無い。
「性能がいいなら仕方ありませんよね。」
「そうかも……そんな気がしてきた。」
便利だから使う……それ以上の理由は無い。
周囲の舐めるような視線は予想に反して1割増しぐらいで落ち着いていた。
見積もりでは倍になると踏んでいたのだが……男が全員見てたとして、女も全員見ると丁度倍だ。
計算違いか……? 敬愛する姉とルナの合作の服だぞ。
「あ、教官。」
丁度いい。なんだかんだ僕の事を見ているので違いは間違いなく分かってくれるだろう。
定期健診のようなものも行っている。
知る中で一番、僕の違いの分かる人間だ。
「ど、どうでしょう。」
何がだ。
主語が無い会話をする人間は嫌われるし僕も嫌いだが、少し気持ちが分かった。
何でもいいから言及されたい。そんな感じ。
「む……アレはなんだ?」
「アレ?」
教え子のマイナーチェンジより優先するものがあるとは思えない。
が、自分には正直なリザの言う事だ。本当に何か気になる物があるのだろう。
そう思い視線だけでなく、回れ右で振り返ってみる。
背後から歩み寄る気配。そこでしてやられたと理解した。
「……いや、育っては無いな。安心しろ。」
後ろから抱くように胸を揉まれた。
「――嫌っ!」
「ぅぐっ……。」
つい反射的に肘が出た。
クリティカルな肘が並みの後衛に耐えれるはずもなく、力なく背中にもたれ掛かる形で倒れた。
捨ててもいいが、流石にそれはリザより酷いと思うので連れて帰ることにした。
「生娘か……?」と声が聞こえた気がしたが、黙らせたので気のせいだろう。
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