15話 呪われ仲間2
ラミアとは。確かギリシャ神話が出展だったか。言わずもがな前世世界での話だ。
こちらでは別の名前があるだろうが、僕個人としてはラミア呼びがしっくりくる。
半人半蛇の容姿を持つ美しい女とされている。
とはいえ、人間が呪いで変化したのであれば美しい部分は生来の物であろうが。
「リーシャ・ユンハンスです。ご足労いただきありがとうございます。」
「そちらが奥から、リザ・ウィットナー氏とテトラ・ハミルトン氏。
呪いの調査している所を見かけご協力をして頂ける事に。」
一応立って挨拶をすると「どうか堅くならずに。」とは言われた。
それを聞くなりタバコを出す奴がいるので、制す為に僕はもう少し堅いまま。
「それで……失礼かも知れないが呪いについて伺っても?」
「勿論です。言わねば始まりません。」
リザの問いにリーシャの説明は端的だった。
簡潔に、「この指輪を付けて、気が付いたらこの姿になっていた。」と。
僕は身に着けこそしなかったが、手に持った瞬間だった。類似点はある。
姿が変わると言うのも同じだ。……僕の立場で同じとは程度が違いすぎるので言えないが。
「外すことは?」
「不可能でした。普通に外そうとするのは元より、指や腕を切り落としても直ぐに切り口が繋がりました。」
そうまでするか? とは思ったが魔物の見た目になるのだ。
死に物狂いで戻ろうとすることもあるだろう。呪い装備と言うのは往々にして外せない物だ。
それにしたって肉体を切り離してもダメというのは頑固なんてものじゃない。
外せないのであれば……隠す?
「あれはどうでしょう? 亜人に属する方々が特徴を隠すために使う。」
「いや、姿を変えて誤魔化してもだな……。」
亜人とは、人型ではあるが純粋な人間ではない種族を指す。
身近な人物で言えばサキュバスのルナとか……探せば意外と居ると思う。
確かに根本的な解決にはならない。肉体ではなく見た目を変える魔法だからだ。
やはり目指すなら呪いを解く方向性だろう。
「いえ、最悪完治と行かずとも不便な生活に留まるくらいであれば良かったのですが。」
「ですが、か。見た目の上書きも恐らくダメそうだな。」
「ええ。経験がおありで?」
ぐっと頭を引き寄せられる。
「コイツも元は――。」
「良い。そこは自分で言える。」
変なノリで紹介されるのは少し不本意だ。
それに、似た境遇であり僕より苦労をするであろう状況のリーシャさんが自分の口で言ったのだ。
僕だけが甘える訳にはいかないだろう。
「私……僕、今はこんななりですけど、リーシャさんと似たような事が起きてこの姿になりました。」
「それは……。」
「現状、僕たちが持ってる知識は恐らく遅れています。それでも、協力させてもらえませんか?
勿論、僕の身に関する期待という下心も無いとは言えません。」
エッチな意味じゃない。手伝う事で元に戻る手段が見つかるのではないかと言う期待だ。
こんな状況でそういうジョークを言うのはリザくらいだ。
「勿論ですよ。人手は足りていませんし、私としても協力者を集うのはやぶさかでありません。
むしろ対価が私の解呪で得た知識。そんな程度で済ませて良いのかと言う思いもあります。」
そういう考えもあるのか? まあでも双方合意なら問題ないだろう。
僕達は呪いの研究の手伝いが出来る。リーシャさんは人手が増やせる。
という訳で協力関係を結べた。
リーシャ・ユンハンス。青髪に青いヘビ眼の、ヘビの半身を持つ女性だ。
考えてみると結構な人が協力関係にある事に気付いた。
目的は別でも同行してくれた二人。そもそもここへ連れて来てくれたリザ。
今日出合ったばかりだが、似た境遇を持つリーシャとその従者ヒスイ。
呪いを解くためだけに力を貸してくれる人でもこれだけ居る。感謝せねば。
「……話聞いてたか?」
「全然。」
「無い胸張って言うことじゃないだろ。」
無くてええわ。
「何ボーっとしてたんだ? 考え事なんて珍しいじゃないか。」
「考え事は毎日してるよ。比率が今回は多めだっただけ。」
「そうか。で、何考えてたんだ。」
さて、協力者のうち2名ほど、少し気になっている事がある。
意図して行ったわけでなく、結果的にそうなってしまったという話で悪気はないのだが。
「ルナとミドラは、多分僕が男だった事知らないだろうなって。」
「いや? 気づいてるぞ。」
「あ?」
素っ頓狂な声が出る。脳内で「そんなバカなマン」が特殊召喚された。
そんなに男っぽさを出していただろうか。
「二人ともに相談を受けたんだがな、ルナリーンは魔力を貰ったときに違和感を感じていたらしい。」
「違和感。」
「本人も上手く言語化出来なかったらしいんだが……少なくとも女の魔力じゃあなかったそうだ。
でミドラだが……これが面白くてな。私も注意してみたら確かだったんだよ。」
「何がおかしいのかハッキリ言って欲しい。」
そんなに女っぽい振る舞いは確かにしていない。
する必要が無いからだとは思っているが、もし見る人が見て違和感を感じるなら払拭する手もありだ。
最低限、一緒に居る人に迷惑はかけたくない。
「ミドラは『あんなに強い女が足をあんなに閉じた振る舞いする筈がない』って言ってたんだよ。
どういう偏見かと思ったが確かに。女を装ってる感じがあったな。」
「……っ!」
「恐らく同じくらいの腕前の女をついさっき見たが、苛烈・大雑把と言った印象だったが、
今の、テトラちゃんを見た感じ清楚・お淑やかって感じだな。」
顔が一気に熱を帯びる。なんだか滑稽な気がしてきた。
普通ぐらいに振舞っていた筈が逆に違和感の切っ掛けになり「女を装ってる」と言われる。
そうか……僕の思っとった普通はお淑やかやったんか。そうなんか。
「あっ、逃げた。迷子にはなるなよ。」
穴があったら入りたいと心から願ったのは初めてだ。
閲覧ありがとうございます。
もしお手すきであれば、☆やブックマーク等押していただけると幸いです。




