13話 異国にて
ナーザフ。ナーザフ国とは呼ばない。
アジアの東の方の文化が入り乱れた文化圏に見える。
僕たちの居たラーニアや、その魔法学院ラーニアのあるテレストを長閑と形容するなら、ここは華やか。
日本そのものという訳ではないが、魂の故郷に似通った意匠がある辺りは好感が持てる。
ちょくちょく訪れたいな……とは思ったが、船がダメだ。断腸の思いで諦めた。
あと、空気も違う。
向こうが湿り気だったのかな? ちょっと乾燥している。
匂いが違うのは当然か……。
国の空気匂いはその国の住人の耳あかの匂いだと聞いたことがある。
湿気によって質が変わるとかなんとか。事実かどうかは分からないが。
が、当然観光に来たわけじゃない。
この身をこんなにしてくれた呪いを絶つ……までは行かなくとも、少なくとも僕の身体は解放してくれると嬉しいなって。
ここまで来ておいてなんだが、具体的にどういう所に行くのかは分からない。
なんもかんもリザに任せきりになってしまうが、まあ教官なんだからそこは任せて良いだろう。
「あれ? 二人は?」
指し示す二人と言うのはもちろんルナとミドラだ。
「彼女らは別の目的がある。素材だったり機械知識だったりか。」
「同行してたのは海路だけか……。」
「宿は一緒だから落ち込むな。」
落ち込んでない……と言えば噓になる。
流石に異国で友人が居ないと言うのはちょっと寂しさがあるからだ。
「で、目的地だがこれがちょっと厄介でね。」
「厄介……とは。」
「呪いの調査のためにここに来たはいい。が、この国も私たちの国より進んでいるだけで専門の研究的な事はやっていない。」
何が言いたいのかイマイチ分からない。
「それもいい。資料に気軽にアクセスできるという事だ。
専門的な場所でしか得られないとなると手続きも面倒だし、したとて結果的に情報が得られない可能性もある。」
「それで、一体何が厄介なんですか?」
「見たほうが速いな。ここだ。」
「ここって……何?」
見た目は……本だ。本がズラリと立ち並んでいる。
それだけなら一般のご家庭で日常的にある状況だろう。
……しかし、それが建物サイズとなれば話は別だ。
なかなか攻めたデザインだ。一周回って何? と言ってしまったが、目的が分かりやすい。
「じゃあ、あとはよしなに。」
「そりゃ頑張りますが……教官は?」
「大人の用事さ。」
ここまで連れてきてくれただけでも十分にありがたい。
協力は謹んで受け取るが、基本は自分で探すのが筋だろう。
自分の事は自分で、だ。この世界で心掛けている第一か条。百まであるぞ。
図書館。生前でも使ったことが無い。
……いや、一回ぐらいはあったかも。でも記憶に残ってないから無いって事でいいか。
板っきれで検索すれば望む情報が得られる時代のワカモノだったからね。
この世界の文明レベル……というのだろうか? 技術レベルはイマイチ分からない。
電気はあり、列車もあるが、携帯はないし、ネットもない。
……元の世界の技術の歴史が分からないから推定が出来ない。
ネットが無いってあり得ないぞ……12世紀ぐらいか?
「……と、そういう調べものじゃなかったな。」
わざとらしく独り言を呟き、思考を切り替える。
図書館の、さらに魔法関係についてのフロアを見渡す。
1ジャンルで1フロアを占拠しているのだから信じられない。
そこから細かく分類されているものだと思ったのだが……。
「この壁……山……いや何だろう、何なんだろう? 逆にイラついてきたな。」
無限の壁もかくやという本棚に逆ギレしそうになる。
キレたところで状況は変わらないがどうしてくれようか。
あまり整頓されていないのか、本棚の中身は並びがかなり乱雑だった。
うちの家族が見たら発狂しそうだ。……前世も合わせて。
虱潰しに探すのは流石に効率が悪いか。
詳しい人に聞ければいいのだが、ここの司書に聞いたところ案内しかされなかった。
管理ぐらいちゃんとして欲しいなって。
……そういえば、ここに入れる期間はどれくらいなのだろう。
急ぐ必要があれば巻きで行くが、無理をするといざという時に動けない。
一日の調査量にアタリを付けるためにも知っておきたい。
小説はたしか1冊10万字だったか……それを一日で10冊が限界だったから100万字。
この世界の本はあまり分厚くない。精々教科書ぐらい。
文字数は分からないが、小説と比べてはるかに少ないだろう。
内容の濃さを考えるとややこしいのでいったん置いておく。
ま、今日のところは半分の5冊ぐらいでいいか。
関係にありそうな本を適当に見繕って借り出し申請。
宿でなら落ち着いて読めるだろう。
「サルでもわかる呪術……?」
何故かムカつくタイトルが目についた。そんなサル連れてきてみろってもんだ。
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