9話 発祥地に行こう2
とても……とてもくだらない事を考えていた。
強盗が「動くな! 武器を捨てろ!」と言った際、
「動いてはいけない」と「武装を解除しなくてはいけない」の二律背反になるのではないか……と。
テトラかリザ辺りに話たら多分、人質でもいない限り力で解決するだろうな。
ルナリーンは……そういばアイツがどういう戦い方をするのか分からない。
でも多分、私より上手く立ち回れるんだろうな。
……まあ、何と言いますか。
「ボス、こんな新人居ましたっけ。」
「ぁあ? 銃持ってんなら仲間だろ。下らねえこと言ってんじゃねえ。
いつも通り一番強そうな客を最初に狙う。お前らの見立ても一応聞いておこう。」
噂には聞いたことがある。
航海中の船を乗っ取り、乗務員は亡骸を海へ、客は奴隷へ。
海上の人攫い組織……要は海賊。それもトップが女ときたのであれば、該当するのは一件。
『氷の髑髏』。
なんて間の悪さだ。
見える範囲に仲間は居ないか? 上手く連携すれば未然に――。
「アタシは……アイツだな。あのデケえ刀抱えて座って寝てる奴。お前もだろ? 新人。
さっきからチラチラ見てる。いい感してるな。」
「え、ええ? 怪しいとは思いますがあんな小っちゃい女ですよ?」
「タッパは兎も角アタシらだって女じゃねえか。じゃあ何で見てたんだよ。」
グイっと襟をつかまれかなり顔を寄せられる。噛みつかれるかと思った。
「いいか新人。ハッキリ言ってお前は見たことがねえ。……が、手伝わせてやる。
銃が好きならこれ以上ない名誉だろ?
逃げ場のない船で裏切ればお前も勿論奴隷だが
……お前は正直売っぱらうより手元に置いておきたいタイプだ。」
「ひっ……。分かってらっしゃった……?」
「たりめーだ。部下の顔覚えてねえ奴が仕事できっかよ。」
しかしどっちにしても私なんかに手の内を明かして、敵と味方の境が曖昧だ。
相当な馬鹿か、実力者か。
「好みだっつってんだからちったあ喜べ。」
「ひゃ、ひゃい!」
……まあ、こんなのに遭遇した以上、テトラ達でダメならデッドエンドって事で。
許してくれ。売ったわけじゃあない。勝てると信じてけしかけただけだ。
*
一発の銃声が鳴り響いた。場に不相応な焦げ臭い匂いと共に。
意識を落としている状態での出来事であれば流石に驚いていただろう。
目が覚めたのはほんの数分前だ。
誰かに顔を見られている気がしたのだが……その誰かは恐らくドラちゃんだ。
で、そのドラちゃんの隣の女性が発砲したって訳。
「静まりな! 乗務員は消したし、動力室は抑えてる。悪いが……行き先を変更させてもらうよ。」
船のジャックってなんて言うんだったか……。
発砲者はいつの間にか帽子と目元のマスクで顔が伺えない。
まさかこうなるとは思っていなかったので、一瞬見た顔を覚えていなかった。
「ど、どういう事でしょう? 一体何が。」
船酔い対策の麻痺を調整しつつ、試行錯誤をしていたルナも困惑している。
ミドラは何故その立ち位置なのかは分からないが、人質って訳ではなさそうだ。
残る仲間はリザだが……どうせ外でタバコ吸ってんだろう。
「そこのお前。死角から打ったのに避けるたあ大した奴だね。」
「寝てた人に当てれないなんてそっちは大した腕じゃないね。」
「言うじゃないか。……縛りな。抵抗すると――。」
「どうなるって? 言っとくが、知らない人が死んでも気の毒に思うだけだ。」
第一にルナだ……彼女の安全は守らないと。そう判断し肩に抱え全力ダッシュ。
屋外であれば多少は状況が良くなるだろう。基本的に魔法使いは屋内戦に弱い。
道を塞ぐ位置に居る海賊に飛び蹴り。普段と違ってルナ分の重さも加わっている為かなり重いだろう。
1+1で200パワーの飛び蹴りで案の定海賊はサッカーアニメのように吹き飛んだ。
隙ありと見て甲板へ駆け上がった。
甲板へ逃げてきたは良いものの、犯人の供述通り船員は影も形も無かった。
こうなると通りがとても良くなった潮風は気持ちが悪い。
「目的地まであとどれ位だ? ……っていうか何処行きなのこの船。」
「行き先はナーザフで、もう見えてます。船でどれくらいかかるかは分かりません。」
「飛ぶとどう?」
「3人は持てません……。片道はすぐですが。」
リザの姿が無い。焦りを感じる。
「焦るな。」と言う思考が増殖し、脳の処理が徐々に落ちていく。
ぴと……と、頬を両手で挟まれる感覚。ルナの両手だ。冷たい。
CPU使用率が100%になる直前で引き戻された。
「焦るのはきっと正しいです。けれど思考を止めるのが一番ダメ。
私は人間じゃないから簡単には死にません。だから焦りは抱えたまま落ち着いて。」
……そうか。
優先順位はルナ>リザ>ミドラ>僕だ。僕は他の客をも守るヒーローではない。そこだけは順守。
「リザは……多分生きてる。アイツは多分私が殺しても死なない。次にミドラだけど、どういう状況か分からない以上手が出しづらいし、私達の逃走に対する重しとして選ばれてるのかもしれない。」
「となると?」
「頭をブッ飛ばすしかない。」
「分かりました。手伝います。」
閲覧ありがとうございます。
もしお手すきであれば、☆やブックマーク等押していただけると幸いです。




