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8話 発祥地に行こう

 僕がリザと知り合った翌日。ヤツはあろうことか、僕たちが住まう寮に現れた。

いや、現れるだけならいい。「教え子と飲むのが夢だ」と言っていた担任も居ないでもないし、ここでなら出来る。

しかし奴は現れるだけでなく、寮の管理教官を追い出してその役に居座った挙句、僕たちのフロアに居を構えた。


まあ、確かに呪いがいつ悪化するか分からない以上、目の届く範囲に置くべきっていう理屈は分かる。

分かるけども。


「……と言う事でリザ先生に色々見てもらえる事になりました。」

「おお~良かったじゃないかテト子。」

「そうですね。糸口が掴めたのは良い事だと思います。」


協力してくれると言ったミドラとルナの二人を呼んでご報告。

ついでにリザも来て僕の部屋に4人いる状態なのだが、そうなると流石に狭い状態だった。

机も椅子も置いていないからベタに座らせて少し申し訳ない。一応クッションは渡したが。


「しっかし色気の無い部屋だな……。隣から幾つか貸してやろうか?」

「シンプルでいいと思いますけどね。」


しかしなんというか……家に友人を招くのは久しぶりすぎて少し恥ずかしいな。

今度こういう事に備えてテーブルでも容易しておくか。

当のリザはと言うとここ学生寮が禁煙地帯のため酒を持ち込んでいた。

……変人と言うよりダメ人間だ。


一応、元々男である事は黙っていてくれるらしい。

だからこその女扱いなのだろうか……?



 さらに翌日。場所は変わってリザの()()研究室。

"リザの"とはいうがここは学校の設備の筈。しかし寮の管理を乗っ取るまではここに住んでいた様子。

乗っ取ったのもそうだがかなり我儘を通せる人物のようだった。学校側にどう思われてるかはさておき。


「よし、今日から暫く出かけるぞ。寮は開けて大丈夫だな?」

「なんですか急に。」

「はっきり言ってテトの症状が参考になるモノはこの学校にはない。実地調査を行う。」

「教官がそう言うなら従いますが……何処へ向かうんですか?」


前にも言った気がするが、いくら規模が大きい学校とはいえ無いものは無い。

資料の調達や整備に用いる素材等を調達する力も必要という名目の元生徒を使いっ走りにする事もしばしば。


「こういう技術は本流から学ぶのが手っ取り早い。今までは理由が無かったが……テトの例を出せば調査の必要があると証明できる。いや、証明する。」

「本流……呪いの総本家みたいな感じですかね。僕っ……私の症状ってそんなにレアなんですかねぇ。」


呪いについて教えられた内容を脳内で復習する。


魔法の一種で効果が極端に長いが、呪った本人に解除させると手早い。

呪いで発動している効果を維持するための魔力は僕から吸い取られている。

肉体変化及び女体化は燃費が悪く、常人の魔力であれば数分ぐらいしか持たないはず。

……これは調べたところ木箱や岩、つまり無機物であれば難易度も燃費も幾分マシになるそう。

加えて、その魔力の供給元が分からない限りはなるべく僕は魔法を使わない方がいい。との指示。


大体こんな所だったか。


「誰が何のために仕掛けたのかは分からないが、随分変わった呪いだよ。

本来不利益を被らせる為に呪うってのに、今のところ性別が変わった以外に実害は無いだろう?

魔力の無駄遣いはしない方が良いが……そこら辺はルナリーンと協力すれば大丈夫か。」

「男としては、考えうる中で最悪の呪いですがね。」

「の割には……結構楽しそうじゃないか?」


「……まさか。それで、肝心の行き先ってのは何処なんですか?」

「ひみつ。」



 重ねて翌日。


少し唐突な話。生まれ持った体質と言うのは中々変わらない物だと僕は思う。

しかし、事実として生まれ変わった僕の体質は少々厄介な事になっていた。


「うぐ……うぇ……。」

「大丈夫ですか? なるべく遠く、水平線の向こう側を見てください。」


乗り物に酔うのは三半規管が強いからか弱いからかどっちだったか。

そんな事を考える暇は実はなくて、今にも胃の中を全てぶちまけそうな状態になっていた。

ちらりと進行方向を見るが陸地はまだ遠く、まだしばらくこの不愉快な揺れを堪能させられる事を示していた。

旅路に折角同行してくれたルナとミドラに看取られる形になってしまうとは。

ミドラに看取られる……。そろそろダメかもしれないな。


「ルナ……私はもうダメ。」

「解毒が効かないなんて……。どうすれば。」


解毒か……確かに毒だ。

内臓がひっくり返りそうな程の気持ち悪さを抱くんだ。毒でない筈がない。

異世界で新しい生を受けた結果、死因は船酔いか……。


麻痺(パラリゾ)。」

「家族にはどう死んだかは伏せておいてくれ……ん? 収まった?」

「乗り物に酔ったときは治そうとするのではなく、逆に考えると良い。気持ち悪いと認識しなければいい話だ。」

「成程……勉強になります。テトちゃん、大丈夫ですか?」


息を整えてみる。現在地は船の中でも船尾の方。

今もなお揺れてはいるものの、魔法の効果かその振動が体に伝わってくる感覚は無い。

喉の奥の方に居座っていた気持ち悪さも綺麗サッパリ消えた。


「……大丈夫かも。」

「貸しプラスイチだぞ。」

「目的地、何処か聞いてませんけど……多分まだありますよね。寝ておきます。」


船の部屋なんて物は借りれない。

故にこんな所、しかも女4人での集まりの中で寝るのは危うさがあるが……。

まあ僕意外も戦えるしチンピラかゴロツキ程度なら多分大丈夫だろう。


「その方が良い。……ところで、ミドラを見ていないか?」

「私は見る余裕は無かったです。……船でタバコはマジで辞めた方がいいですよ。」

「私はずっとテトちゃんを診ていたので……。でも、船が出て暫くするまでは一緒に居ましたよ。乗り遅れてはいないです。」


二人の回答を聞くと「ならいい。」と一言。

含みのある言い方が若干気になったが、リザが怪しいのは割といつもの事だと無理やり納得する事にした。


今はとにかく休みたい。

閲覧ありがとうございます。


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