表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖女オリヴィアは二度死ぬ  作者: あまつや
7/45

魔族も複雑


「私はどの種族になりますか?」


気になる。


「そうだね」

と、小首を傾げる。


「魔力がそのまま生命体になる、なんてとても珍しい話だ」


言葉を選ぶ、というか探す様に続ける。


「言わば、精霊族なんかに近いかもね」


シュナも後ろで、音を出さず笑顔で拍手をしてくれている。

不思議と照れる。


「精霊、ですか」


「あえていうなら、だね。君は君でいいと思う。この国では種族にこだわりを持つ人は少ないからね」


区切りがついたのを察してくれたのか、

「あったかいうちに食べなよ」、とご飯を勧めてくれる。


こうしていると、王族と会食しているって感じがしないな。本当に、親しい友人とご飯を食べいるみたい。

まぁそんなことしたことないから想像でしかないけど。

そんな気分になれるだけでも本当にありがたい。


しかし公の食事でもないからだろうが、付き人が少ない。と言うかいない。

魔王様とシュナ、そして私しかいない。

まぁこの辺も文化の違いだろう。

いちいち聞いても仕方ないか、と思っていると、


「オリヴィア、聞きたいことがあったら何でもきいていいんだよ」


ここまでくると魔法で心を読まれてるのかな、と思ってくる。もしくはそんなに顔に出てるのか。


まぁいいか、なんでも聞いちゃおう。


「お言葉に甘えて。人間の王族の食事はもっとかしまってたし、なにより人が多くいました。それに比べて人が少ないな、と思いまして。魔王様に奥様はいないんですか?」


年齢も若そうだし、何より結婚している空気感が無い。先立たれてってパターンは無いだろう、と思い切ってきいてみる。


ところが、魔王様はおろかシュナまで吹き出した。

まぁ結婚だのなんだのっていうのは人間や動物的な価値観だし、もしかしたら魔族には余りない文化なのかな。

感覚が違うのは今更だしな。


「失礼。私は一応〝女〟だよ。よく間違われてね。シュナにも身だしなみに気を配れって、よく叱られるんだ。」


「失礼しました。本当にごめんなさい」


これは失態だ。人間だの魔族だの関係ない。


「いや、いいんだ。舐められまいとわざとこうしてる節もあるし」


「オリヴィア、本当にいいんです。寧ろもっと魔王様に言って差し上げてください」


「ハハ、シュナは手厳しいな」


楽しそうに笑う二人。まるで家族の食卓の様だ。

私の失敗ではあったのだけど、この二人の様に距離が縮まればと、考えてしまう。

もし、許されるならば。

そう考えてるとまた涙が溢れた。

これでは二人にまた気を使わせてしまう。


「オリヴィア、君がどれほど辛い思いをしてきたかは、真に理解することはできない。だがもし、生まれ変わった〝魔精オリヴィア〟と楽しい思いを重ねていけるなら、君がそれを許してくれるなら、そんな未来を望んでいる。もちろんシュナもね」


だめだ。涙が止まらない。


「どうして」


それしか紡げない。


「もし君の過去に罪があったとして、君は既に死によってそれを償った」


「これ以上苦しむ必要はない。魔族は遥か昔、強大な力を持つあまり人間に虐げられてきた。そこには争いもあったしどちらかが悪だとは言わない。〝個〟として強い魔族も〝群れ〟として強い人間に次第に押されていった。故に我々も種族を超えて群れを築き、人間に対抗してきた。その為には多くの血も流れている」


「拭えない過去を持つ者は君だけでは決してない。だがその者達もいまでは食卓を囲んでいる。オリヴィアだけがそうなってはいけない理由なんてないんだ」


肩を揺らして泣く私をシュナがそっと抱きしめてくれる。

私は魔王様の話に何度も頷いた。


「は…い」


やっとの思いで声を出す。

いいのかな。

とても血塗られた私だけど幸せを望んでも。

こんなにも幸せをあたえて貰っても。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ