ただいま戻りました×2
大きな振動があり、私は驚いて目を開ける。
いつの間にか眠っていたようだ。
右手に細く柔らかい感触がしたので目線をやると、無意識にリリーの手を握っていた。
「マードリア様?」
リリーも起きたようで、まだ開ききっていない目でこちらを見てきた。
「お、おはようリリー。ご、ごめんね、なんか無意識に手を握っていたみたいで」
手を離そうとすると、リリーの握る力が少し強くなった。
「許していただけるのでしたら、まだこのままでいてもよろしいでしょうか?」
「──うん、いいよ」
きっとリリーも呪いで不安だっただろうし、疲れているのだろう。
それに、断る理由なんてないのでそのままの状態でいる。てか可愛すぎる! 何、美少女のおねだり? うん、死。
そんな邪な感情と共に頭を撫でていると、耳が赤くなったような気がする。
リリーも少し恥ずかしいのかな?
それに、なんだか脈が早い気もする。
「リリー大丈夫? 顔も赤い気がするし、脈も早い気がするけど、どこか具合でも悪い?」
「い、いえ、大丈夫です。もしかしたら疲れがまだ残っているのかもしれません」
そう言ってリリーは、私の腹部? に顔を埋める。
本人はなんともないって言っているから、私もこれ以上話しかけるのはやめよう。
リリーも疲れてるって言ってるし。
「マードリア様、ホワイト様、学園付近に到着しました」
馬車を出ると、夕日が沈みかけているのがよく見える。もうすぐ日が暮れる時間だ。
「本当に今回はありがとう。もうすぐ長期休みだから、その時までご機嫌ようだね」
「私からも、ありがとうございました」
「いえ、マードリア様の幸せを維持することが、我々使用人の役目ですから。ホワイト様、これからもマードリア様のことをよろしくお願いします。
マードリア様、またお会いできることを心待ちにしております。それでは、失礼いたします」
馬車は屋敷へと帰っていく。
「私達も帰ろう」
「はい」
出ることしか考えていなくて、寮に入る時の対策を取っていなかったが、校則違反は校則違反なので、バレたらちゃんと罰を受けよう。
そう心に決めて学園に入った瞬間、笑顔で私たちを出迎えるエンス先生。
「おかえり、フレーバ、ホワイト。それじゃあ、話し合おうか」
こうして私たちは先生の部屋まで連行された。
先生の部屋には、女性陣全員集合していた
「みんなもいたんだ」
「あはは、バレちゃった」
「フレーバ、ブライト、口を慎め!」
「「はい、すみません」」
エンス先生はイスに座って私達を一瞥する。
「まあ、理由を聞いていたから気持ちも分からなくはないが、違反は違反だ。しっかりと罰は受けてもらう」
『はい』
「まずは全員、夏休みまで外出禁止だ。ホワイトの命を救ったんだ、これで手を打ってやる」
顔をあげると、エンス先生は仕方ないなと言いたげに微笑んでいる。
「今後は、時間外の外出を希望する場合は教師に話して許可証をもらうように。いいか!」
『はい』
「ならアウダーとブライト以外は戻って良い」
二人なら何かしら問題を起こしていても不思議ではないと思ってしまう……。
二人を残して私たちは部屋を出る。
「まずはこれを言わないとね。二人とも、おかえりなさい」
「「ただいま戻りました」」
「お二人とも元気で戻ってきてとても嬉しいです」
「レンちゃんも協力ありがとうね」
「いえ、私は対したことをしていません」
約一日離れていただけだけど、このやりとりが懐かしく思えてしまう。
「それよりも、二人はまた何かやらかしたの?」
「ああ、やっぱりそういう評価になりますよね」
三人で苦笑いをしていると、二人が出てきた。
「お、やっぱりいた」
「聞かれる前に言うよ。ボク達の成績が入学時より下がったから呼び出されたの」
「え⁉︎」
ガーラは分かるけど、どうしてチコも?
「そう、なら早く帰りましょう」
「リリーさんも疲れていると思いますしね」
誰も触れないなら、私も触れないでおこう。
「戻ろうリリー」
「はい、戻りましょう。お二人も」
「だね」
「帰ろう帰ろう」
誰一人欠けることなく日常が送れる。そのことに幸せを噛みしめながら、みんなで部屋に戻る。
次話 2月23日
長かった話も終わりです!




