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全員で帰ります!

♢ 以降は視点がリリーになります。

 三人が安堵の息をもらす。リリーの顔を見ても上手くいったようだ。


「マードリア、終わったの!」


褒めて欲しそうな目でこちらを見つめる。

私はよくお姉ちゃんにしてもらったように、ノワールの頭を撫でる。


「うん、そうみたいだね。ありがとう」

「私の魔法に耐性をつけていたと気づいた時は焦りましたが、ノワール様が来てくださって本当によかったです」

「色々と聞きたいことがあるけど、まずはすぐに片付きそうなことから質問するね。ノワールってどんな精霊なの?」

「ノワールわね、すごい精霊なの!」


手を高く上げて自分を誇示しているのが、子どもらしくて微笑ましい。

しかし、それだけでは分からないので、ラミスの方をみる。


「ノワール様は最上位精霊の中でも最も若く、これから伸び代のある精霊でありながら、強力な力を秘めているお方です。全精霊の中でも三位の実力を持っているのです」 

「最上位精霊って五人くらいしかいないんじゃなかったっけ?」

「はい、この洞窟内ではの話です。世界で見るともう少しいます。けど、流石に三桁はいませんね」

「つまり、そこにいるガットって精霊は、その最上位精霊の中で最弱ってこと? それともこの洞窟内だけ?」

「世界です」


ラミスはそれだけ答えると、ガットの首根っこを掴んでこちらに連れてきた。


「ガット、説明するの! どうしてこんなことしたの!」


ガットは罰の悪そうな顔でこちらを見ているが、ノワールがこちらについている以上抵抗はできないのだろう、くだらない理由を話し始めた。


「ラミスにムカついた。あとお前が俺と契約しなかったから、試しに呪いをかけた。以上」


以上じゃないよこのクソ精霊! 悪ガキよりタチが悪い。


「以上じゃないの! そんなくだらないことで呪いをかけちゃダメなの!」

「そうよ。それに、実力がないのは自分自身のせいでしょう。訓練をサボっていたのだから、弱いのは当たり前じゃない。最上位精霊になれただけいいと思うことよ! そんなくだらないことで一人の命を奪いかけ、ノワール様の手を煩わせるなんて許せないわ!」


おお、二人が私の代わりに綺麗な言葉で怒ってくれている。

だけど、私には足りない。


「ねえラミス、悪いけどノワールの耳塞いでて」

「え、ええ」


私は立ち上がってガットに近づく。ガットは後ずさりをするが、岩壁に当たってこれ以上後ろにいけなくなった。


「ねえあんた、自分勝手な横暴で人の、私の大事な友人の命を奪おう、いや、苦しめた挙句、そんなくだらない理由で呪いをかけたことに謝りもしないなんて一体どういう神経をしてるの? 

謝れ。額を地べたにこすりつけて土下座しろ。私は優しくないけど、私以外のみんなは優しいから、中和させてこれくらいで許してあげはしないけど、今回は見逃してあげる。さ、早く謝れ。リリーに向けて、ラミスとノワールに向けて、私と協力してくれたみんなに向けて謝れ」


ガットは震えているのが分かるくらい大きく震えている。


膝を曲げ、手を前の方でつき、頭を地面につくまで下げる。


「も、申し訳ありませんでした。以後、このようなことはいたしません」

「うん、当たり前だよね。──ラミス、もういいよ」

「は、はい」


ラミスは唖然としたまま、ノワールの耳から手を離した。


「ねえねえ、何を話していたの?」 

「ノワールがもっと大きくなったらね。それと、さっきのリボン貸してもらえる?」

「いいの」


ノワールはリボンを服の中から取り出した。

私はそのリボンを受け取って、ノワールの前髪をかきあげるようにつける。


「これで、前髪邪魔にならないよ」


ノワールは自分の頭を触ると、嬉しそうにはしゃいだ。


「ありがとうなの! マードリア大好きなの!」


ノワールは私に飛びついてきた。


「私も。──ラミス、私の体に戻って。そろそろ帰るよ」


ラミスが体に戻ると、ノワールは寂しそうにする。


「帰っちゃうの?」

「うん。必ずまた会えるよ」

「本当なの?」

「私、嘘はつかないから」

「それじゃあ待ってるの。あいつはノワールがちゃんと見ておくから安心するの!」

「うん、お願いね。バイバイ」

「バイバイなの!」


 私はリリーを背負って外に出る。

外は明るくなっていたから、結構時間が経っていたのだと静かに驚いた。


「星空は見えなかったか」


私は馬車に乗り込んで、再び学校へと戻っていく。



◇◆◇◆◇


 体に染み渡る揺れで目を覚ますと、一番にマードリア様の寝顔が目に入ってきました。

どうやらここは、フレーバ家の馬車の中のようです。


以前、マードリア様が言っていたメイドのジェリーさんと思わしき方も、向かいの席で眠っています。


頭だけは柔らかい感触に包まれ、額にはマードリア様の手が添えられています。

マードリア様のいい匂いが私を包み、私に安らぎを与えてくれます。


私は欲張りです。

マードリア様達が私を死の呪いから解放してくれたことは、この状況からして間違いないでしょう。

そんな私のために奮闘してくださったマードリア様に、甘えたいと思ってしまうのですから。

私は空いているマードリア様の手に私の指を通します。


「今だけは許してください、私の愛しい人(マードリア様)


私は再び馬車に揺られながら、静かに眠りにつきました。

次話 本日中


今回の話の後日談的なやつです。

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