ある意味ピンチです
心配そうにこちらを見るレンちゃんに、OKサインをする。
この世界にはないサインだが、私とガーラが使っているので、いつの間にかみんなの間でも浸透していた。
「よかったです。ですが、すべてマードリア様に任せてしまい、私は役に立てませんでした。申し訳ありません」
「別にいいよ。元々お兄様の相手は私一人で十分だったから。
それに、レンちゃんについてきてもらった理由は、学園内の脱出ルートの確認に協力してほしいから。もし寮母さんにバレずに出られたとしても、その途中で先生や生徒にバレたら意味がないからね。ごめんね、先に言ってなくて。それにテスト前日なのに」
「大丈夫ですよ、リリーちゃんを救うためならなんだってします。それに──」
「それに?」
「テスト範囲の勉強はちゃんと定着しているので大丈夫です!」
なんて頼もしいの。
そして、何気に私がピンチなのではないかと思い始める。
「レンちゃん、確認し終わったらテスト勉強しよっか」
「は、はい」
一番心配なのはガーラだけど、一応チコがついているから赤点は取らないでしょう。たぶん……。
それに、私はレンちゃんより良い点取らないと貴族としての威厳が……。
ということで、確認を一通り終わらせたので、リリーのことも心配だからアイリーン様とリリーの部屋にやってきた。きたのだが……
「マードリアにレンさんは静かにしているからいいとして、あなた達二人は騒ぐなら自分達の部屋で勉強しなさい!」
「だって、チコの教え方下手なんだもん」
「ガーラの理解力がなさすぎるんだよ」
「リリーに教えてもらった方が全然良いよ。もう月とスッポンだよ」
「あたしだって、レンちゃんを教えた方がやりがいがあるよ」
「なんだと」
「なによ」
「お二人とも、落ち着いてください」
「そうですよ、ここはアイリーン様とリリーちゃんの部屋なので」
勉強でピリピリしているのか、二人はしょっちゅう口喧嘩をしている。
ガーラは前世からこうだけど、チコは意外だ。
なんやかんや言いながら仲がよろしいことで。
「マードリア、なんで笑ってるの」
「あたし達のこと微笑ましいとか思ってる?」
「思ってないよ」
呆れただけだよ。
「今、呆れたでしょう」
私は深いため息をこぼす。
「二人とも、静かに勉強しようね。それに、ガーラは本当にちゃんとしないと赤点取るよ」
「え……」
ガーラは苦笑いを浮かべている。自覚があったらしいが、チコは驚いている。
もしかしてだけど、ガーラ部屋に戻ってから勉強してない?
「ねえチコ、部屋でガーラが勉強しているの見たことある?」
「ないよ。だからテストは余裕なんだと思ってた」
やっぱり、これは私の失態だ。
前世でもそうだった。ガーラは一人になると一切勉強をしない。
だけど、今まではなんとか赤点を回避できた。
しかし、今回はSクラス。
赤点はテストの難易度で変わるが、約六割未満。今のままじゃ本当にガーラは赤点を取りかねない。
そんな点数を取られては、リリーを救う為の人数が減ってしまう! それ由々しき事態だ!
仕方ない、ここは最終手段を使うしかない。
「ガーラ、もしこれから私が出す問題で八割取れなければ一夜漬け確定だからね。責任者として付き添いはチコがしてくれるから」
「あ、あたし面倒見るなんて言ってない!」
「これでガーラが赤点をとれば、放課後は補修、夏休みは追試でほぼ潰れる。だけど、追試でも受からなければガーラとチコのペアは解消されるよ。
一時間あげるから、それまでにリリーに教わって完璧にしてね」
「は、はい……」
ガーラは人が変わったように真剣に勉強をしたが、結果は……察してほしい。
次話 本日中
こんな話でも少しぐらい平和が欲しい……。
そろそろ終わるかな、この話




