アイリーン様が我が家に来ちゃいました!
「で、できた……」
この世で二番目に好きな睡眠も犠牲にして、私の完璧な百合エンド攻略本ができた。
「おめでとうございます、マードリア様」
後ろから少し発揮の無い声が聞こえてきた。
「ジェリーいたの?」
「マードリア様が起きているのでしたら、私もマードリア様のことを見守ります」
「ずっと立っていたの?」
「いえ、侯爵様がわざわざいらして、イスに座るように命じられました」
ジェリーの後ろには木製のイスがあった。
「なんか、ごめんなさい」
「いいえ、マードリア様が睡眠を削るほど一生懸命になることです、とても素敵なことをなされていたのでしょう。そう思いますと、そんなマードリア様を見守ることができて私は満足です」
「あ、はは、そうかもね〜」
本当は下心満載で十年後の百合計画を立てていたなどとは口が裂けても言えない。絶対墓まで持っていかなければ……。
でも、それはそれとしてようやく眠りにつくことができる。時刻は五時を回っていた。別に今日は特にやることがないから、昼まで寝ることにする。
「マードリア様、ベッドに入る前にお風呂に入らなければなりませんよ」
お風呂……入ったら私の安眠への一歩が遠くなってしまう。
「一日ぐらい入らなくても大丈夫だと思うけど……」
「いいえ、その一日が大事なのです。さあ、行きましょう」
私は強制的にお風呂に入れられてしまった。
目蓋は重たいはずなのに、体を洗われているせいで全然閉じてくれない。
前世なら三日くらい寝なくて平気だったけど、この体に夜更かしはまだ早かったみたい。
◇◆◇◆◇
「……、……様、……ア様……」
『マードリア様‼︎』
夢? 現実? いつの間にか寝てたの? 誰かに呼ばれた気がする。
「マードリア様!」
気がするんじゃなくて本当に呼ばれてる。
「ん、んん……」
「ようやく目を覚ましましたか。マードリア様、大変です! アイリーン王女様が今いらしております。早く着替えましょう」
アイリーン王女様がいらしたのか〜。
「そっか〜早く着替えないとね……」
「あぁ、寝ないで下さい! 早く起きてください!」
「起きてるよ〜」
「口だけ起きててもダメです!」
「んん〜じゃああと十分寝たら起きる〜。おやすみ〜」
「マードリア様! 布団をかぶらないで下さい!」
ああ、お布団の中は静かだ。これでぐっすり寝られる。
またしばらく眠りの波にさらわれていると、新たに人がやってきて布団を剥がされた。
「私がわざわざマードリアの為に赴いたというのに、布団に包まっているなんていい度胸ね」
重たい目蓋を開けると懐かしい人が見えた。
「ゆうちゃん、おはよう〜。なんか小さくなったね」
私が頭を撫でると、顔を赤くして固まっている。
「わ、私はアイリーンよ! ゆうちゃんってどなたですの⁉︎」
「どなたって……」
あれ? ゆうちゃんって誰だっけ? あれ、じゃあ私が今触っている人って……。そっか、夢か。よし、それじゃあ寝よう。
「もう、起きなさい!」
両頬を思いっきり叩かれてやっと少し意識がはっきりした。
目の前には少し涙目のアイリーン様がいた。
「あ、おはようございますアイリーン様。あの、いつの間にいらっしゃったのですか?」
目の前には顔を真っ赤にしたアイリーン様が、奥には顔を真っ青にしたジェリーがいる。
「もう〜〜! 早く顔を洗ってきなさい!」
そう言ってベッドから下ろされてしまった。
さらば、私の愛しの楽園。
私はまだ半分寝ている体に鞭を打って動かし、ジェリーと一緒に顔を洗いにいく。
顔を洗うとさっきよりかは意識がはっきりする。
「お待たせしましたアイリーン様。また待たせてしまいますが、着替えてきますね」
「またこの私を待たせるつもり⁉︎ もうそのままの格好でいいわよ」
「ですが……」
「私がいいと言っているのだからいいのよ!」
さすがにそれは事情を知らない使用人や家族が見たら顔を真っ青にするだろうから、できれば遠慮したいな〜。私が悪いんだけど。
「でしたら、アイリーン様が服を選んで下さいませんか?」
「私が選ぶの?」
さすがにまずかったかな?
「まあいいわ。ただ待っているよりかは退屈しのぎになりそうだし。早くクローゼットの中を見せなさい」
「はい」
アイリーン様は私をちらちら見ながら一生懸命服を選んでいる。
「これとかいいんじゃないかしら?」
アイリーン様が選んだのは、緑色の少し丈が短めで動きやすいドレス。
「ではそれにします。ジェリー、お願い」
「かしこまりました」
緑のドレスを着て、いつもの黄色いリボンで髪を纏めれば終わりだ。
ジェリー的には王女様相手だからもっと手を入れたかったと思うが、その王女様が目の前で待っているのだからそんなことはできない。
「アイリーン様、どうですか?」
「私が選んだのだから良いに決まっているでしょう」
何を当たり前のことを。という顔でこちらを見てくる。
「そうですね。ありがとうございますアイリーン様」
アイリーン様は照れたのか顔を逸らした。
「別に、次からは私にこんな手間を取らせないようにして頂戴」
「はい、気をつけます」
「ま、まあ、たまになら別に良いけど」
素直じゃないな〜と、少し微笑ましく思う。
「その時はお願いします。それでアイリーン様、本日はどのような用事でいらしたのですか?」
「あ、あなたが私と仲良くなりたいって言ったからわざわざ私の方から会いにきてあげたのよ!」
ああ、昨日のか。来るとは思っていたけど流石に昨日の今日で来るとは思わなかった。
「わざわざお越しいただきありがとうございます。アイリーン様は何か私としたいことはありますか?」
「特にないわ。だからマードリアが決めなさい」
これまた困る回答をくださる。
「では、庭を案内しますね」
「え、庭?」
「嫌でしたか?」
「いいえ、構わないわ。行きましょう」
私とアイリーン様、ジェリーとアイリーン様のお付きの者で一緒に庭へと出た。
前話の後書きの続きです。
フレーバ→フレーバー
ミーク→ミルク
エグラメル→エッグとカラメル(材料から)
スーウィツ→スウィーツ
ドルチエ→ドルチェ
ディザート→デザート
シャティ→ クレーム・シャンティイ(ホイップクリームの別名)
ラップ→シロップ(シを無くしてロをラにした)
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次話 (中途半端に終わったので今日投稿するか検討中)