一筋縄じゃいかなさそうです
私はみんなに話した。リリーが約一ヵ月前ぐらいからいじめられている可能性がある件を。
「それじゃあボク達は、犯人探しをすればいいってこと?」
「うん、そう。男子生徒の方はコリー王子様達に手伝ってもらうつもり」
三人は顔を合わせた。どこか納得がいっていないようだ。
「マードリアの言っていること、少しおかしいよ」
「どこが?」
「だって、リリーって基本的にボク達と一緒じゃん。どうやっていじめるのさ。それに、外傷もないし特に物を壊されたり汚された形跡もない。無視も基本的にボク達といるから考えられない。ならいついじめるっていうのさ」
うっ、たしかに。そう言われるとダミアが嘘を言っている可能性があるけど、けど、あの顔は嘘じゃない。
「魔法」
レンちゃんがそう溢した。
「魔法の可能性を考えれば不可能ではありません」
魔法と聞いて、二人も少し納得しているみたいだ。
「でもどうやって? ボク達はまだ自分の中にある魔力を実体に変える魔法しか使えない。本の中身もそうだよ。あとは初級回復魔法が載っているくらいだし」
「そもそも一年生じゃない可能性、いや、生徒とは限らないんじゃない?」
「でも、ダミアは生徒だって」
「そのダミアっていう子は本当に現場をみたの?」
「いや、見てはなさそうだった」
「ですがマードリア様は、リリーちゃんの様子を見た感じはいじめられている事実は本当だと思ったのですよね?」
「うん」
けど、また分からなくなってしまった。
「よし」
ガーラは立ち上がった。
「ならダミアも交えよう。もう一回ちゃんと話す。そしたらまた何か分かるかもしれないし」
ガーラが出ていこうとするのを、チコが止めた。
「それは明日。そろそろ夕食が運ばれてくる時間だし、アイリーン様も交えて話し合う。そうだよね、マードリア」
「うん。でも、そうなるとリリーを一人にするのがちょっと心配」
「分かった、じゃあ兄様をつけるから安心して。それじゃああたし達はこれで失礼するね」
カヌレ様……、大丈夫かな? でも攻略対象ではあるからまあ、いい、かな?
二人が出て行った後も、レンちゃんはずっと何かを考えている。
「どうしたのレンちゃん?」
「一つ、引っかかることがあるのです」
「どこ?」
「なぜリリーさんが狙われているのでしょうか? リリーさんはマードリア様達ととても仲が良ろしいです。
そんな地位の高い方と仲のよろしい方を、たとえ平民だろうと普通はいじめたりしないはずです。リスクが大きすぎます」
確かにそうだ。
乙女ゲームでも、リリーをいじめていたのは帝国内で最も力を持つ国、ドルチエ王国の王女であり、皇子の婚約者候補であるアイリーン様。
それに、アイリーン様がいじめていた理由って、基本男性関係だ。アイリーン様は元々が優秀だからそれ以外でいじめる理由がなかった。
その証拠に、フーリン様とビケット王子様以外の時は出てこなかった。
……このいじめ、私が考えているより結構複雑かもしれない。
次話 本日中