表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
67/112

まだお姉ちゃんが幸せな頃でした

 ここは学園、つまり試験がある。もちろん入学試験もあり、なんとか二人と同じクラスになることができた。

そして、今も試験勉強をしているのだが、中々捗らない。


アイリーン様に好きと言われてからずっと、前世での出来事を思い返してしまう。


「レンちゃん、好きってなんだろうね」

「いきなりどうされたのですか?」

「……いや、やっぱりなんでもない」

「そうですか」


『好き』


このたった二文字で、人を喜ばせることも悲しませることもできることを、私は小学生で知ってしまった。


◇◆◇◆◇


 あれは、私が小学六年生の時だった。


「凛花、明日俊哉(しゅんや)が来るからゆうちゃんの家行ってもらっていい?」

「いいよ。でもどうして?」

「明日お父さんもお母さんもいないじゃん。だから二人っきりになりたいんだよ」


なぜ二人っきりになりたいのか、この頃は特に趣味もなかったので、私はその答えを知る術がなかった。

だけど、明日のことを嬉しそうに語るお姉ちゃんを見て、私は素直に従うことにした。


「分かった、ゆうちゃん家に行ってる」

「ありがとう、それでこそ我が妹だ!」


お姉ちゃんは私を抱き寄せて頭を乱雑に撫でる。だけど、乱雑なはずなのに愛が伝わってきた。


「それじゃあ行ってきます!」

「あ、待って凛花! これゆうちゃんに渡して」


 お姉ちゃんからチョコレートのパックを受け取る。


「それじゃあお姉ちゃん、今度こそ行ってきます!」

「おう、行ってらっしゃい!」


 歩いて十秒のゆうちゃん家のインターホンを鳴らすと、間髪入れずにゆうちゃんが家から出てくる。

どうやら玄関先で待機していたみたいだ。


「ゆうちゃん早いね」

「りーちゃんが家から出るところが部屋から見えたからね。上がって、今日親いないから自由だよ」

「奇遇だね、私の親も今日は二人とも仕事」

「大人は大変だねー」

「ねー。あとこれ、お姉ちゃんがゆうちゃんにって」

「ありがとう。って言ってもチョコレートだし、りーちゃんがほとんど食べるんだろうね」

「失礼な、ゆうちゃんが食べない分私が食べてるだけじゃん」

「そういうことにしといてあげる」


二階のゆうちゃんの部屋に着くと、さっそくゆうちゃんはゲームのコントローラーを渡してきた。


「今日こそゆうちゃんに勝つ!」

「それじゃあ今日も勝たせてもらうよ」


お互い真剣に画面を見つめる。ゲーム中に会話はない。ひたすらに相手を倒すため、試行錯誤を繰り返す。


「また負けた〜!」 

「りーちゃんはアイテムを事あるごとに取ろうとするからだよ」

「だって、アイテムないとゆうちゃんに勝てないもん」

「あってもなくても負けてるじゃん」


そのドヤ顔で放たれる言葉には、私に小さな火をつける効果があった。


「それじゃあもう一戦! 今度こそ勝つ!」

「よしきた! ってあれ、動かない。電池切れかな? ちょっと探してくる」


ゆうちゃんが下に行っている間、大人しくチョコレートを食べて待つ。


「ごめんりーちゃん、電池単三だけなかった」

「それじゃあ私の家にあるから取ってくるよ」


玄関に向かおうとしたが、昨日のお姉ちゃんの言葉を思い出してやめることにした。


「やっぱり窓から行くよ。お姉ちゃんが昨日二人にしてほしいって言ってたから、こっそり行かないと」

「念のためはしご用意しようか?」

「いや、大丈夫だよ。雨じゃないし、ジャンプしなくても届く距離だから」

「分かった、気をつけて」


私達の部屋の下には、小さな屋根がある。そこを使えば、わざわざ下に降りずとも、お互いの部屋を行き来できるのだ。

次話 本日中


過去編は二部構成となっております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ