居場所が分かったかもしれません!
人が多いせいで、アイリーン様を見失ってしまった。それどころか、自分が来た道すら分からなくなってしまった。
「どうしよう……」
いや、考えろ私! これでもこのゲームの百合ルート以外は全て攻略した。なら、アイリーン様がこういう時どこ行くかも、十年+ゲーム知識で絞れるはず。
「こういう時は、たぶん、人があんまり来ない場所! って、そんなのゲームの知識とか関係ないけど!」
とにかく私は人がいなさそうな道を見つけてはそっちの方に足を進めた。
しかし、どんな道を通ろうが人、人、人……。
「人がいない場所……ないじゃん!」
さすが王都……じゃない! え、え、本当にどこ行った? まじでどこ?
もしかして実家? そしたらビケット王子様かコリー王子様を探さないと。どうしよう。
「──ちゃん、嬢ちゃん!」
声をかけられて顔を上げると、荷車に乗った初老の男性がいた。
「久しぶりだな嬢ちゃん、でっかくなったな〜」
一体誰だろう? 相手は私を知っているみたいだけど。
「あの、申し訳ありませんがどなたですか?」
男性は目をぱちくりさせると、大きく口を開けて笑った。
「そっかそっか、嬢ちゃんちっちゃかったから覚えてねーか。俺の名はザルテだ、嬢ちゃんがこーんなにちっちゃい時に会ったんだ。たしかあの時は、嬢ちゃんが嬢ちゃんの姉ちゃんと町に行く途中で運んだな。嬢ちゃんに乗り心地悪いって言われたの、しっかり覚えてるぞ」
ザルテさんの表す私のサイズは、もはや人間じゃない。しかし、その言葉のおかげで思い出した。
本を買うために町に行ったときに、私達を荷車で送ってくれた人だ。
「思い出しました、あの時はありがとうございました。それと申し遅れました、私、マードリア・フレーバと申します」
「侯爵家の御令嬢だったか。そりゃ可愛いはずだ。俺が嬢ちゃんと同じくらいだったら、結婚を申し込んでいるところだな」
「たぶん振ってますね」
「あちゃー、振られちゃったよ」
ザルテさんはいかにもおっさんな態度だった。
そういえば、ザルテさんは運び屋だった気がする。
それなら、町のことについて詳しいかもしれないし、アイリーン様のことを知っているかもしれない。
「あの、ザルテさん。一つ、いや、二つお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「お、どうした?」
「私よりも少し背が高くて、金髪で髪が長くて、赤い目の女の子を見ませんでしたか? 上が白の服で下が黒のスカートの女の子です」
ザルテさんは顔を傾げて、記憶を巡っているようだ。
「ああ! いたいた、あっちの方に行ってたな」
ザルテさんは私にとっての正面を指した。
「あっちの方で人があまりいない場所ってありますか?」
「あるぞ。この道をまっすぐ行ったら、右と左の分かれ道がある。そこを右に曲がって少し歩くと、左手側に人一人入れるかどうかの小さな道というか隙間がある。その先は人があまりいないな。ていうか行かねえな」
「分かりました、ありがとうございます。それでは私は失礼します」
「おう、またどこかでな」
「はい!」
ザルテさんの言う通りに走る。
右に曲がると、本当に小さな路地裏のようなところがあった。
ここを通れば服は確実に汚れるけど、背に腹は変えられない。
私はカニ歩きでその路地裏に入っていく。
次話 本日中




