集合しました!
なんやかんやで結局みんな集合するんだなって思った。
ちょっと嬉しいかもしれない。
「ご機嫌よう。やっぱり揃ったわね」
「だね〜。本屋に行けば会えると思っていたからね」
「アイリーン様も、チコ様と同様のことをおっしゃっていましたよ」
「それじゃあ、二人はわざわざこっちに来たの?」
「たまたまよ」
「素直じゃないですね」
「ですが、皆さんと会えて嬉しいです」
学園外で全員集合とは、普段よりもワクワクするものがある。
休日に出かけたテーマパーク先で、友人とたまたま会うのと同じくらい特別感がある。
「いや〜、でもアイリーン様がリリーちゃんと出かけるとは思いませんでしたよ。もしかしてデートですかね?」
チコは完全にふざけているけど、そういうエンドがあることを知っている私としては、その一言で二人のお出かけ百合の想像をするのに良い刺激になる!
「そんなわけないでしょう」
「お相手が私なのはアイリーン様に失礼ですよ」
リリーは少し困ったように笑う。
「それこそ、あなた達の方がよっぽどデートじゃないのかしら?」
チコとガーラは顔を合わせてそれはもう息ぴったりに
「「ガーラ(チコ)とだなんて信じられない‼︎」」
とお互いを指しながら言い合う。
なんやかんや言っておきながら、ほんと仲良いな。
「それに、あたし達よりもマードリアとレンちゃんの方がよっぽどデートでしょう」
チコは軽くウインクをした。
なるほど、そういうことね。
「まあ、デートみたいなものだね。ね、レンちゃん」
「え、いや、あの、その、デ、デート……」
「あれ? おーい、レンちゃん?」
どうやら頭の処理が追いつかなかったみたいで、固まってしまった。
「マードリア、あなたそれ正気で言っているの?」
それに、なぜかアイリーン様は私にだけなんか厳しいし。
「ええっと……」
「またそこの二人が言わせたの?」
アイリーン様はチコとガーラの方を見る。眼光を鋭くして。
「違うよ! 本当に、今回はデートみたいなものだから」
「なんでもかんでもボク達のせいにしないでよ。それに、レンが持っている服って、絶対マードリアがレンにあげたものでしょ」
ガーラの言葉で、視線が一気にレンちゃんの持つ袋に集まる。
「そうですね、デザイン的にもレンさんの服みたいですね。ガーラさん、よく気づきましたね」
「マードリアはファッションなんかに興味ないだろうしね。それに、今レンが着てる服もマードリアの物でしょう」
「本当だ。ガーラって本当にマードリアのことよく知ってるよね。好きなの?」
「まあ、好きだよ」
次の瞬間、アイリーン様の手元から品物が落ちていく。
「大丈夫ですか、アイリーン様?」
「ええ、大丈夫よ」
そう言っているが、どこか上の空である。
アイリーン様が落とした物を拾って、本人に渡す。
「どうぞ」
「ありがとう、マードリア」
どこか元気がない。さっきまでは普通に元気だったし、あれがきたのかな? だったらすぐに帰った方がいいと思うけど。
「アイリーン様、気分がすぐれないのでしたら、早めに帰って体を休ませた方がよろしいですよ」
アイリーン様はうんともすんとも言わない。本当にどうしたんだろう?
「ごめんなさいリリーさん、私まだ買う物があったのを思い出したの。これ、持って帰ってもらってもいいかしら?」
「は、はい、分かりました……」
アイリーン様はそのまま来た道を戻っていった。
これでも十年の付き合いがあるから分かる。アイリーン様が嘘をついていることは。
それに、あれじゃないってことも。
「ごめんみんな、私も行ってくる」
本を何も持っていないガーラに押しつけて、アイリーン様の後を追う。
「やりすぎちゃったかな?」
「いや、やりすぎてないよ。これはアイリーンの心の弱さの問題でもあるし」
「心の弱さ?」
「レンは知らなくていいよ」
「私には分かります。アイリーン様が羨ましいです……」
次話 本日中