お買い物です!
私達は馬車を降りて、一度振り返る。
「御者さん、ジェリー、今日はありがとう。来週お願いするかどうかは手紙で知らせるね」
「帰りはよろしいのですか?」
「ずっと待たせるのは申し訳ないから、町にある馬車で帰るよ」
「分かりました。お二人とも、楽しんでくださいね」
「あ、あの、ありがとうございました!」
ジェリーはレンちゃんに頭を下げると、扉を閉めた。
私達は馬車から少し離れて、出発した馬車にもう一度頭を下げる。
「よし、行こっかレンちゃん」
「はい」
馬車の中にいる時から薄々分かっていたが、王都ということもあってものすごい繁盛している。
市場の数も私がよく行く町とは比べ物にならないし、店も大きく立派だ。
「さすが王都……」
「本当にすごいですね。私は田舎育ちなので、正直ここは別世界のように感じてしまいます」
「私も、ここまで凄いとは思っていなかった。とりあえず、どこか店入ろう。ずっと圧倒されているわけにもいかないしね」
「そうですね」
本当は、最初に本屋! っていきたいところなんだけど、この世界の本って一冊でも十分重いから後回し。
「最初に服屋に行こう」
「服屋ならあそこにありますよ」
レンちゃんの指す方向に、女性物の服を扱っていると思わしき店があった。
私達二人はその店の中に入る。
「いらっしゃいませ」
笑顔を浮かべた店員が駆け寄ってくる。こういうところは前世と変わらないなと思う。
「本日はどのような服をお探しで?」
「この子に合う服を見繕ってほしいのですが」
私はレンちゃんの肩に手を置いてそう告げる。
予想通り、レンちゃんは驚いてこちらを見た。
「かしこまりました。ではサイズを測らせていただきますね。測りを持ってきますので、少々お待ちください」
店員が裏に行っているときをチャンスとばかりに、レンちゃんが私に向き合った。
「マードリア様、なぜ私の服なのですか? 私はお金を持っていませんよ」
「私が持っているから大丈夫。今後外出やら学園内での社交界とかで服がないと困るでしょう。だから、日頃のお礼も兼ねてプレゼントだよ」
「私、お礼をされるほどのことはしていません」
「──レンちゃん、人の好意はちゃんと受け取らないと、時には相手を傷つけることになるよ」
レンちゃんは口を閉ざしてしまった。
「レンちゃん、私はレンちゃんの一言が聞きたいだけなんだよ」
レンちゃんの頭を撫でると、レンちゃんの頬が少し赤くなった気がする。
「ありがとうございます、マードリア様」
レンちゃんの笑顔があまりにも可愛すぎて、もし画面越しであれば私はしばらく一時停止をして、フォルダに何枚も収めて悶えていただろう。
「──どういたしまして」
レンちゃんはほんの少し驚いた顔を見せると、少し笑った。チコやガーラに近い笑い方だ。
「マードリア様がそうやって顔を隠すの初めてみました」
「…………」
今は何も言えない。
「お待たせしました。それでは測らせてもらいますね」
店員が来たことでなんとか助かった。
私達は端っこにずれて、レンちゃんのサイズ測定が始まった。
「買った買った。よし、次は本屋に行こう」
「はい」
本屋でも、最新の百合本とシリーズ物の百合本を買えて満足だ。
帰って読むのが楽しみ。
「マードリア様は本当に好きですよね、女性同士の恋物語」
「うん、本当に好き。もう私が好きな物ランキングの片手に入るくらいには好き」
「そのランキング、一位が気になります」
「一位はね、レンちゃん達みんなのことだよ」
「つまりあたし達がマードリアの天下を取っちゃっているんだね」
後ろを振り向くと、チコとガーラがいた。なぜかチコが荷物を持っている。
「チコ達も本屋行ってたんだ。それで、どうしてチコが荷物全部持ってるの?」
「本当は行きたい場所の優先権を賭けていたんだけど、二人とも行きたい場所が一緒だから、荷物持ちに変更したんだよ」
ま、姫女子の二人ならそうなるよね。
「あ、もう一組きた」
ガーラの言葉を聞いて後ろを見ると、アイリーン様とリリーがこちらに向かってきていた。
次話 2月16日
マードリアは照れただけで(たぶん)赤くはなってないです。推しを見ると興奮はするけど赤くはならないでしょう?
(え、なる? そっか、気づいてないだけか)




