作戦会議です!
元々ガーラ達の部屋を知らずに飛び出し、適当に歩いていたら本当に迷子になってしまった。
「あなた! あなたのせいで私は先生に注意されたのよ!」
後ろからのキンキン声が耳に響く。
「クレア様……。注意だけで済んで良かったじゃないですか。それに、私のせいって言いがかり酷すぎですよ。むしろ感謝してください」
性格があまりよろしくない方にはこのくらいの物言いがちょうどいい。
「あなたが勝手にしたことじゃない!」
「それでも、私のおかげで大惨事にならずに済みましたよね」
クレア様は何も言えなくなり、じっと私を睨んでいる。
「そうだ! クレア様、あなたは今私に借りがある状態です。なら、それを相殺しましょうよ」
「あなた、一体何が目的ですの?」
「私達を目の敵にしているクレア様なら、私達の部屋を知っているんじゃないかなって」
「知ってるわけないじゃない!」
「へー、あのクレア様とあろうお方が、へー」
いや〜、私結構煽りスキルついてるんじゃない? チコとガーラの近くにいたおかげかも。
「あなた、腹立つわね」
「そうですね。しかし残念ですよ、クレア様は道案内という簡単なことで私への借りをなくせたのに、本当に残念です」
クレア様は唇をギュッと噛むと、いつもの堂々とした立ち方になった。
「いいわ、誰の部屋か言いなさい」
「チコとガーラの部屋です」
そう言うと、クレア様は嘲笑った。
「あなたは友人の部屋すらも分からないのね」
「分かりますよ。ですが、借りをなくしてあげる為にこの提案をしたのです。断るのなら別にいいですけど」
このプライド高々の王女が、侯爵家の令嬢に借りをつくったままにしないはず。それに、こんな簡単なことでなくせるのなら絶対に乗るはず。
「そういうことにしておいてあげますわ。早く来なさい」
クレア様は止まることなくさっさと歩き出したので、私もその後ろを追いかけた。
「ついたわよ。これで貸し借りはなしですわね」
「やっぱり知ってたんじゃないですか……」
「あなたと違って私は優秀ですもの」
「さすが、Aクラスの人が言う言葉は重みが違いますね!」
クレア様はこちらを睨むと、何も言わずに去っていった。
「──で、そのあとはガーラ達の部屋をノックしたよ」
「なるほどね、マードリアも悪くなったものだ」
「おかげさまで。そうそう、ガーラ、ちょうどいいから耳貸して」
「何?」
ガーラは少し腰を浮かせて私の近くで再度下ろす。
私はガーラの耳元まで口を近づけて小さめの声を出す。
「あのね、私ライバルキャラになって百合を見守りたいんだけど、私ができるいい感じのライバルキャラってない?」
「えー、うーん」
「二人でこそこそと感じ悪ーい」
「こういうのはチコに聞く方が絶対いいと思うよ。てことで、チコの出番」
「ほほう、マードリアとガーラ、それにあたしとなると百合の波動を感じますな」
チコはなぜか得意気だ。
「あたり、さすがチコだね」
「そこそこ付き合い長いし分かるよ。それで、あたしの出番とは?」
「マードリアがリアル百合を見るための自分の立ち回り方を教えてって」
「ふむ」
チコは少しの間腕を組んで考える。
「よし! マードリアは人に対して感謝や謝罪は述べるけど、好きとかはあの時あたしに言った時以外で使ったことないよね?」
「うん、たぶん。そんな簡単に好きとかは使いたくないから」
「そう! だからこそ、ふとした時に好きとかデートとか、恋人関係を思わせるフレーズを使うのだよ」
そういうのはあまり良い気がしない。
「それは嫌だな」
「別に良いじゃん。そういうのは女の子同士なら使ってるし」
「でも、私は嫌だ。本当に嫌だ」
それだけは、本当に駄目なの。
「ならそこに、ある文字を付け足せばいいよ。好きとかには使えないし、使う場面も限られるけど、出かけるって言葉を、デートみたいなって言うのはどう?」
みたいな、それならいいかもしれない。
「うん、それなら全然いい」
「よし決まり。それじゃあ、好きは大事とか、大切に言い換えよう。それならどう?」
「うん、いいと思う! ありがとうチコ、あとガーラも!」
「「どういたしまして」」
「マードリアはもう帰る?」
「うん」
「それじゃあボクが送って行くよ」
「別にいいのに……」
「よくないからこうしてるの。じゃあ、行ってきます」
「お邪魔しました」
よーし、ここから私のライバルキャラとしての活躍が始まる!
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