パーティー後もやることはたくさんあるのです!
家に入ると、ソワソワしているお父様が私を見るなり抱き上げてきた。
「マードリア、王子様の誕生日パーティーは緊張したかい?」
「ええ、少し。ですが、良い友人ができました」
「そうかいそうかい、さすが我が娘マードリアだな〜」
正直お兄様のシスコンはこのお父様が原因だと思っている。ていうかこのお父様が原因としか思えない。でも、大事にされているのが分かるから別に嫌じゃない。どちらかというと嬉しかったりする。
「マードリア、パーティーは楽しかった?」
「はい、とても。あ、お母様、この家の図書室ってどこにありましたっけ?」
「あら、とうとうマードリアも書物に触れる気になってくれたのね、お母さん嬉しいわ。ついてきなさい」
図書室は二階と三階にあってすごく広い。侯爵家は四番目に権力があるから屋敷も大きい。上流貴族に位置するのだが、ゲームでは公爵家以下は攻略対象にならないから存在はあんまり知らなかった。
「どんな本が欲しいの?」
「魔法と地形の本が欲しいです」
「それじゃあ一緒に取りにいきましょうか」
「はい!」
高い所にある本は母が、低い所にある本は母に抱いてもらって私が取る。
「字は読める?」
「大丈夫ですよお母様。流石に文字の読み書きはできます」
「そうよね。もし分からない言葉とかあったら遠慮なく聞いてね」
「はい」
母は優しい笑顔で私が本を読むのを見守っている。
しばらく本を読んでいると、使用人が母を呼びにきた。
「マーフィ様、文書が届いております」
「分かりました、すぐに行きます。それじゃあマードリア、行ってくるわね」
「はい。それでは、私は自分の部屋で本を読んでいます」
母は笑顔を向けると部屋から出て行った。
私も本を二冊持って図書室から出て行った。
「マードリア様、よろしければそちらの書物お持ちいたします」
「ありがとうジェリー。よろしくね」
「はい」
ジェリーは私のお付きのメイドだ。
ジェリーは元は(別の国ではあるが)子爵の娘だった。だがその子爵というのが結構なクズだっただしく、お金の為にジェリーを売り飛ばす寸前のところで、お父様が二年前に買い取った。
二年前までは私には別の専属のメイドがいた。しかし、自分の出世しか考えていないメイドに嫌気が差して、お父様に訴えて変えてもらった。そして新たにきたメイドがジェリーというわけだ。
ジェリーは元貴族というだけあって貴族らしさがある。しかし、どちらかと言うと放置気味だったので、冷遇ではあるものの比較的自由に過ごしていたらしい。そのおかげで庶民的でもある。
だからなのか、ジェリーは基本私にノーということはない。他のメイドだったら止めるようなことも、ジェリーはこっそりやらせてくれる。手伝ってもくれる。
「マードリア様、本日はいかがでしたか?」
「凄く充実した時間を過ごせたよ。正直、気疲れはするけど勉強になる」
「それはよかったです。年齢を重ねる度にこういう場は増えていきます。今回は御子息、御令嬢のみの参加でしたが、いずれは大人も参加するパーティーに出席することになります。その時に、今までの経験が活かせてよかったと思えるように学んでいけるとよろしいですね」
「そうだね。……ジェリーはまたそういう場に参加したいと思う?」
「正直に申し上げますと思いませんね。マードリア様の言う通り疲れてしまいますから」
ジェリーは苦笑いでそう答える。私も同意の意味で同じ苦笑いをする。
「着きましたよ」
ジェリーがドアを開けてくれたので、私は真っ直ぐに机に向かって引き出しからノートを取り出す。ここには幼き頃に書いた紙が挟まっている。
「本はこちらに置いてよろしいですか?」
「うん、ありがとう」
「何を書かれるんですか?」
「それはジェリーにも秘密。私だけの秘密だよ」
「そうですか。では私はドア付近にいますので、何かありましたらお申し付け下さい」
「別にイスに座っててもいいよ。たぶん結構時間かかるから」
「私はメイドですので」
ジェリーはそう言い、私から離れていった。
やっぱり、貴族社会は面倒くさい。
ジェリーは年上だから、普通なら敬語を使いたいし、出来るだけ対等な関係でいたい。
だけど、それができないのが貴族社会。
どんなに立場が上の人に命令されようと、周りが無礼だと判断すればより悪い方向に落ちてしまう。
そんなことを考えていると、いつの間にか無意識にジェリーの絵を描いてしまった。
絵の腕は落ちてないようだ。
せっかくだし、この絵はジェリーへの日頃の感謝を込めたプレゼントにすることにした。
まあ、渡すのは調べ物が終わってからだけど。
マードリアは結構絵が上手いです。
前世では百合小説を漫画にしたりなど。
少しでもいいなと思いましたら感想、レビュー、ブクマ、評価お願いします!
次話 1月24日