緊急召集されました
たっぷり絞られたらしく、これから一日が始まるというのにもう疲れている表情をしているチコとガーラ。
朝から雷を落とすことになり、少々顔がきつくなっているアイリーン様が戻ってきた。
「おはよう〜二人とも。レンちゃんももう一回おはよう」
「おはよう……」
「「お、おはようございます」」
「朝から散々だったね」
「一体誰のせいだと……」
普段のガーラなら絶対噛みついてくるが、今はその気力すらもないようだ。
「本当にごめんね。私もこうなるなんて思っていなかったから」
「これからはマードリアに言うことは気をつけないといけないって身をもって痛感したよ」
「本当よ、私も疲れるのだから今後は気をつけなさいよ」
「──そもそも、さっさと告白しないのが悪いんじゃん」
「今、何か言ったわよね」
「言ってませーん」
チコが何を言ったのかは全然聞こえなかったが、それがある意味でチコの勇気ある行動だってことは分かった。
「みんなここにいたのか」
ビケット王子様が私達に声をかける。
「兄上。──時間には余裕があると思いますが?」
「急遽全校生徒に召集がかかったんだ。鞄を持ったままでいいから講堂に行きなさい」
『はい』
ビケット王子様は他に召集を知らされていない人たちにも伝えにいくため、すぐに別れた。
召集。いきなりってことはたぶん、生徒組織関係だと思う。
私達は教室に向かう足を止め、講堂に向かった。
講堂には意外と人が集まっており、みんな何事かと動揺している。
「一体なんなのかしら?」
「急遽ということですので、生徒組織関係で間違いないとは思います」
「あたしちょっと兄様に聞いてくるね」
チコは二年生の男子達が集まっている方に、早歩きで向かった。
「またマードリアが絡んでたりしてるでしょう」
ガーラはやれやれといった感じだ。
私をトラブルメーカーみたいな扱いにしないでほしい。
「ガーラちゃんはどうしてそう思うの?」
よく言ったレンちゃん!
「簡単なことだよ。急な召集、生徒組織、会長はマードリアのお兄さん、そしてシスコン。こんだけ揃ってたらマードリアが絡んでるって分かるでしょう」
「いや、たまたまでしょ」
「いえ、マードリアが絡んでいるとすれば全て納得がいくわ。あなた、迷子の時に何かに巻き込まれたの?」
なぜこの人達はお兄様が絡むと私を関係者にするのだろうか……。
「ここはマードリア様に聞くよりもフーリン皇子様かコーリー王子様に聞く方が良いのではないでしょうか?」
「そういえば、マードリア様を部屋に案内されたのはそのお二方でしたね」
「そうね。チコが何も分からないようなら、フーリン皇子様に聞いてみようかしら」
そこでコリー王子様の名前が出ないのは、あの性格を考慮してなのか、あるいはフーリン皇子様と話したいからなのか……。
うーん、やっぱりアイリーン様の好きな人は全然分からない。
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