因果応報とはこのことです!
この言い争いを聞きつけたのか、フーリン様がいつの間にか駆けつけていた。
「一体どうしたのですか? ……マードリア、どうしてここにいるのですか?」
「あ、フーリン様。実は部屋に戻れなくなりまして……」
「なるほど、女性陣にバレたくないのですね」
「はい。よく分かりましたね」
「マードリアは分かりやすいですからね。では、僕が責任をもって送りましょう」
「ありがとうございます」
寮父さんは私がフーリン様と親しげに話しているのを見て、驚いている。
「ちゃんと言いましたよね、友人だと」
「いや、でも信じられなかったんです」
「なぜ僕に知らせなかったのですか?」
「それは、皇子様にご迷惑をかけるかと思いまして……」
「寮父さん、言い訳なんて見苦しいですよ。寮父さんが面倒なだけだったんですよね。それに、以前も言いましたよね、もう問題を起こさないようにと」
「申し訳ありません」
フーリン様は目が笑っていない笑顔のまま、寮父さんをじっとみる。
寮父さんはまるで蛇に睨まれたカエルだ。
「僕の一存で寮父さんをどうするかは決められません。そんなことをしたら、両親に叱られてしまいます」
寮父さんの安堵のため息が聞こえた。
「ですので、この件は生徒組織に任せます。全校生徒の声で判断しましょう」
「そ、それは勘弁してください! これからは気をつけますので!」
生徒組織に託すということは、この人の末路くらいもう見えている。
お兄様は、私が絡んでいるのにこの寮父に生半可な罰を与えるとも思えないし、何よりフーリン様が自分で持ちかけたことなんだから、あまりに酷すぎない限りはお兄様に賛同するだろう。そうなれば、ほとんどの生徒が賛同するのは分かっている。
「もうチャンスは一度与えました。それでは、僕は彼女を送らないといけないので。行きますよ、マードリア」
「は、はい」
最後に見た寮父の目に、光は宿っていなかった。
◇◆◇◆◇
フーリン様は外に出てから少し警戒するように歩く。
「あの、どうかしました?」
「いや、マードリアと二人でいるところをカーター様に見られたら色々と厄介だと思って……」
フーリン様は私とコリー王子様に対してだけ、少し砕けた話し方になる。
「なんか、色々と申し訳ないです」
「寮父のことでしたら気にしなくていいよ。あの人は以前も平民にやらかしていたし、男尊女卑や貴族と平民で差別をする人だったから、良い機会ですよ」
そう語るフーリン様の顔は、少し晴れやかだった。
「カーター様のことも気にしないで。もう十年前からだから。ほんと、マードリアが好きになった人やマードリアのことが好きになった人は大変ですよ。
──それが、僕がマードリアのことを好きになりたくてもなれない理由ですけど」
「ん? 最後何か言いましたか?」
「いいえ、何でも。ただ、カーター様は婚約者ができるのか少し心配です」
「確かに。お兄様、お父様と協力して私の婚約者候補を門前払いしているみたいだけど、お兄様自身はどうなんだろう?」
ま、いないってことは分かりきっているけどね。
「カーター様、そんなことしていたのですか。まあ、想像つくよ」
フーリン様は少し呆れていた。私だって呆れたのだから、当たり前の反応といえる。
「どんなこと?」
「「わっ!」」
「て、コリー王子様でしたか。びっくりしましたよ」
「コーリーどうしたの?」
「入り口前で寮父と争っている令嬢がいるって聞いて、マードだと思ったから来た」
「何でそれだけの情報で私って分かるんですか……」
「マードの気がしたから」
コリー王子様は幼少期の頃に比べて表情が豊かになった気がする。
基本真顔なのは変わらないが、今もこうしてほんの少し口角を上げて、自然と笑顔を見せている。
何気に一番逆らったら怖いのはマードリア。
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