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ゲームの主人公だって間違えます!

 リリー達の部屋をノックする。


「あの、マードリアですけどリリーいますか?」


ドアが開いてリリーが顔を出す。


「どうしたのですか、マードリア様?」

「マードリア、あなた今日は部屋で大人しくしといた方がいいと思うのだけど」

「あはは……レンちゃんにも言われました。ですが、こういうのは早い方がいいと思いましたので。それでリリー、ついてきてくれる?」

「はい、構いませんが。ここではいけないのでしょうか?」

「リリーと二人で話したいから」


床に本が落ちる音がした。


「アイリーン様、大丈夫ですか?」

「大丈夫よ!」


え〜、どうしてそんなに怒ってるの……。


「そ、そうですか。それじゃあリリー、行こう」

「はい」


 私はさっきガーラと話した場所と似たような場所で、リリーに話を切り出す。


「私が倒れた時率先して動いてくれたり後処理してくれたのってリリーなんでしょう。ありがとう」


リリーは罰が悪そうに目を逸らした。


「私は、そんなことを言われるほど立派なものではありません。むしろ、マードリア様をあんな目に合わせてしまったのは私のせいでもあるのですから」

「その、()()()()を教えてもらえる?」


リリーは何も言わない。言わないというより言いたくないのだろう。


「別に言いたくないなら言わなくてもいいけど、そうやってずっと罪悪感を背負っているのはものすごく苦しいことだと思うよ」


私だって、さっきのガーラの様子を見ていて本当に申し訳なかったし、苦しかった。残していった家族のことは正直考えたくない。だって──


「……怖い?」


リリーの肩がびくついた。正解みたいだ。


「リリーは何が怖い?」


私は、みんなの反応を見るのが、どれほど悲しませたのかを見るのが怖い。


「幻滅、されてしまうのではないかと」

「そっか、大丈夫だよなんて言葉をそんなに軽くは言えないけど、私も少なからず小さな失態から取り返しのつかない大きな失態を犯してきたから。それに、少なくともリリーがもしそんな行動をしたとしても、ちゃんと理由があるって私は知っているから」


リリーの頭を撫でると、涙が少しずつリリーの顔を濡らしていく。

ハンカチでその涙を拭う。


「マードリア様、申し訳ありません。私、クレア様のことをあまり快く思えず、クレア様が魔法の制御できなくなって焦っているのを見て、私、少し喜んでしまったのです。あの魔法が放たれたら大変な事になると知っていたのに、私は、クレア様が困ることになるのなら、多少の被害くらい起こっても構わないと思ったのです。私は、無詠唱で魔法が使えるので、クレア様の魔法を防ぐことができたのです。ですが、私はあえてしませんでした。そのせいで、マードリア様が倒れてしまって、マードリア様に、迷惑をかけて──」


「そっか、頑張って話してくれてありがとう」


半強制的に話させた私が言うべき言葉ではないと思うけど……。


未だに泣き止むことのないリリーに、私の()()の胸を貸す。


「リリーの気持ちは分かるよ。でもね、その行動に関心はしない。悪意を悪意で返しちゃだめだよ。それだとリリーもクレア様と同じ。だから、次からは気をつけてね。今度は私が防げるとは限らないし。

あと、私にならいくらでも迷惑をかけてよ。私は気にしないし、そんなことくらいでリリーに幻滅するほどちっちゃい器なんて持ってないからね」

「ありがとう、ございます」


 しばらくしてリリーも落ち着いたのか、泣き止んだ。


「もう大丈夫?」

「はい。あの、ハンカチ洗って返します」

「いいよいいよ。私のお古でいいならあげるよ」


リリーは手にしているハンカチを見ると、小さく微笑んだ。 


「マードリア様からいただくハンカチはこれで二つ目ですね」

「二つ目?」

「覚えていませんか? 洞窟での出来事を」


洞窟……ああーー!!


「ごめんね、全然気づかなくて」

「構いませんよ、五年前のフードを被っていた少女なんて、再会したところで分かりませんよ。それと、私はずっとお礼が言いたかったのです。あの時救われましたから」 

「ええ〜、私救うようなことしたかな?」

「はい。あの時握った手はとても震えていて、マードリア様もとても怖がっているのが伝わってきました。ですが、それでも初めて出会った私を第一に考えて下さったマードリア様に、私はとても惹かれ(救われ)ました。ですから、あの時はありがとうございました。また会えて嬉しいです」


なんか、そんなに褒めてもらえると少し照れくさい。


「あ、ありがとう。そ、そろそろ部屋に戻るね」

「はい。あ、マードリア様」

「どうしたの?」

「私も、マードリア様の頭を確認してもよろしいでしょうか?」

「いいよ」


リリーの手が迫ってきたので反射的に目を瞑る。そしてすぐに、額に柔らかい感触がした。


「それではマードリア様、失礼します」


リリーは上機嫌で部屋に戻っていった。

まだ額に感じた感触は消えない。


「リリーなりの感謝かな? それなら別に遠回しに言う必要もなかったのに」


そう言いつつも、私は嬉しさを噛みしめて部屋に戻る。

さすがのマードリアも何をされたか分かったと……。なぜそういう解釈になる!(作者ですが、マードリアに関してはもうツッコミながら書いてます)


次話 2月9日

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