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乙女ゲームのことについて教えてもらいました!

 私達はしばらくの間、久しぶりの再会を喜んだ。


「さて、これ以上泣いたら目赤くしちゃう。レンちゃんに心配かけられないからこの辺で終わり」

「そうだね。あの公爵令嬢にまたからかわれたらたまったもんじゃない」

「ゆうちゃん、チコとはうまくやれてる?」

「ゆうちゃんは前世までのボクだから、これからはガーラだよ、マードリア」

「そっか、そうだね」

「うん。チコとはうまくやれてるよ。思ってた以上に中々手強い相手だけど……」


この顔だと主導権はチコだな。いや、まあ普通平民と貴族ならそうなんだけど、相手はあの怖いもの知らずのガーラだから、主導権を握れるとはチコ、やるな。


「まあ、人見知り同士仲良くね」

「べ、別にボクは人見知りじゃないよ!」

「え〜本当〜? 出会った当初は私のことをことあるごとに突き放そうとして、仲良くなったらなったで私の周りの人達ずっと睨みつけてた癖に」

「そうだ、そのことで文句あるんだった!」


ガーラは私の頬を引っ張る。

なんでみんな私のほっぺを引っ張りたがるのか。


「あんたのせいでボク生涯一度も恋人できなかったんだからね!」

「ひゃんでわたひのへいなの!」


ガーラは私の頬を引っ張ったまま、意地悪っぽく笑った。


「理由はもうとっくの昔に墓石に言った。それよりも、マードリア一時期太ってた?」

「ふほっへはい!」

「この柔らかさ、この伸び、癖になりそう……。たまに触らせてもらうからね」


ガーラはやっと手を離してくれた。


「決定事項……。一応ここでは私の方が身分高いんだけど」 

「うーん、でも中身はりーちゃんだから」

「左様ですか。……あ、そーだガーラ!」

「何?」

「ガーラもここにいるってことは、たぶんこの乙女ゲームやってるよね⁉︎」

「遺品としてもらってやったよ。百合ルートだけね」

「ナイスゆうちゃん!」

「うわ、いった! だからガーラだって!」


勢いよく抱きついたせいで、少しきつく抱きしめてしまった。


「ごめんガーラ」

「気をつけてよ、相変わらず平地なんだから」


とりあえずここでガーラの機嫌を損ねれば、私の聞きたいことは聞けない。だから、一旦無視することにする。


「それでなに? どうせ百合ルートのことでしょうけど」

「そうそう、どうやって悪役令嬢(アイリーン様)との百合ルートを攻略したか教えてほしいの」

「別に教えてもいいけど、参考にするなら無駄だよ。この世界はストーリーとだいぶズレてるもん」

「え、そうなの?」

「え、気づいてなかったの?」


ガーラは額に手を当てて、長く大きいため息をついた。


「あのねえ、そもそも悪役令嬢が悪役令嬢じゃないし、アイリーンは元々チコと仲良くないはずなのに仲良いし、リリーが男性キャラと初めて接触するのは入学式のはずなのに、ここでは医務室だし。それに何より、マードリアとボク、それにレンがメイン達と絡んでいる時点で、いろいろと歯車は狂ってるんだよ」


ショック以外の何ものでもなかった。私が良かれと思ってやっていたことが、全てストーリーを狂わすことだけだったとは……。

いや、でもまだ百合ルートが消え去ったわけではない! ライバルキャラを参考にして、これからの私の立ち回りを考えなければ!

(いろいろあって未だに実行できてないし)


「それでもいいから教えて! 特にライバルキャラについて!」

「ああ、なるほどそういうことね。いいけど、マードリアには絶対無理だと思うよ」

「それでも頑張る」

「はぁ、まず、ライバルキャラはチコ」

「え! チコ!」

「普通なんとなくでも察するでしょ。て、できるわけないか。で、チコのやり方は悪役令嬢が主人公に好意を持ち出したのを見抜いて、すぐに仕掛ける」

「どうやって?」

「前提として、チコとリリーは既に仲良いからね。それで、あたし実はリリーさんのこと気に入っているのです。て、悪役令嬢本人に言うの」

「ええ〜」


チコって変なところで勇気あるよね。人見知りで他人と話すときはほぼほぼ私達の背後に隠れているくせに。


「そんな反応すると思ったよ。続きは、あたしに取られたくなければちゃんとリリーと自分の気持ちに向き合え的なことを言ってた」

「なるほどなるほど、参考になる」

「ならないよ。だってマードリア、人の恋心とかには鈍感だし、アイリーンがリリーのこと好きじゃなければ意味がないし、それにアイリーンとリリーの好きな人は……。いや、これに関しては本人たちの問題だからやめとくよ」

「ちょっと待って! それ一番気になるところなんだけど!」


私がガーラの肩を揺すったら、真顔で口を一文字にしてじっと私の目を見てくる。


「そんなに知りたいならチコにでも聞けば。案外答えてくれるかもよ」

「チコも知ってるの⁉︎」

「まあね。そろそろ戻ろうか、あと三十分ぐらいで夕食の時間だし」

「あと三十分あるなら私リリーに用があるからそっち行くね」

「一人で行ける?」


ものすごく訝しんだ目でこちらを見てくる。


「行けるよ!」


そう言ったのに、半信半疑といった感じだ。


「まあ、ボクがついていけばいいか。行くよマードリア」

「ええ……」

「行・く・よ!」

「はーい」


 私は手を引っ張られて、リリーの部屋の前まで連れてきてもらった。


「ちなみにさっきの平地という言葉の意図はどういうものでしょうか?」

「自分の胸に手を当てて考えたら。じゃあ、ボクはこれで」

「あ、こら! くそ、逃げられた」


いつか絶対仕返ししてやると心に誓った。

次話 本日中

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