リリーの嘘と謎を聞いちゃいました
早速、レンちゃんにお礼を言うことにした。
「レンちゃん、この部屋まで鞄を持って帰ってきてくれてありがとう」
そう言うと、レンちゃんは不思議そうに頭を傾げた。
「私は持って帰ってきていませんよ。確かにこの部屋に入れたのは私ですが、マードリア様の荷物を持ってくださったのはリリーちゃんです。その、私は力もありませんし体力もないので、書物を入れた鞄を二つも持てなくて……」
リリーが? でもさっきレンちゃんが持って帰ってきたって言ってたけど……。あれ、でもさっきたしか先生にもお礼を言われていたけど、もしかして何か隠してる?
「ねえレンちゃん、私が倒れている時リリーって何していたの?」
「えーっと、そうですね」
◇◆◇◆◇
マードリア様が倒れた時、私は動くことが出来なかった。
あまりの光景に信じられず、そのまま呆然と立ち尽くしていた。
周りの人達もそうだった。
だけど、リリーちゃんだけはすぐにマードリア様の元に駆け寄り、ハンカチを取り出すとマードリア様の口元を拭い始めた。
そんなリリーちゃんの行動にハッとして、私達はすぐにマードリア様の元に駆け寄った。
マードリア様は、僅かに開いていた目を閉じて、完全に意識を失ってしまっていた。
「マードリア!」
「アイリーン様、マードリア様を心配なさる気持ちはわかりますが、無駄に動かさないでください。動かすと体に悪影響になる場合があります」
「ちゃ、ちゃんと生きてるよね?」
「脈はあるので大丈夫ですよ」
その言葉を聞いて、心の底からホッとした。それからすぐに、先生を連れたガーラちゃんが戻ってきた。先生もガーラちゃんもマードリア様の事を見て驚いていた。
「授業は中止だ! 全員教室で静かにしてろ! チャイムがなったら各自帰るように」
先生はすぐに担架を用意して、マードリア様を医務室に運び込んだ。みんなもそれについて行ったので、私もついて行こうとしたのだけど──
「リリーちゃんは行かないの?」
「マードリア様のこれをそのままにしていくわけにはいきませんので、私は後から行きます。レンさんは先に行ってていいですよ」
リリーさんはさっきのハンカチでマードリア様のものに土を混ぜて固形物にしていった。そして、全てをハンカチに包み込むと、少し離れた焼却炉に捨てた。
「リリーちゃんはすごいね。私、見ていることしか出来なかった」
「何を言ってるんですか。私の側にいてくれた。それだけで私はとても嬉しいです。それに、こうなったのは私のせいでもあるので当たり前です。……本当、最低です」
そんなリリーちゃんに私は何も声をかけられなかった。あまり踏み込んでいいこととは思えないし、かといって無責任にその言葉を否定するわけにもいかないから。
「レンさん、後処理も終わりましたのでマードリア様の様子を見に行こうと思っていたのですが、お目覚めになられたら寄り道せずに部屋に戻った方がいいと思うのです。マードリア様の荷物を部屋に持っていくのはどうでしょう?」
「い、いいと思うよ」
「それでは手を洗ってきますね。そのあと教室に行きましょう」
私達は教室に戻って、それぞれ自分とペアの人の鞄を持って教室をあとにした。
「大丈夫ですかレンさん? 少々苦しそうな顔をしていますよ」
「だ、大丈夫です」
そう笑顔を取り繕ったけど、リリーちゃんには意味がなかった。
「マードリア様の鞄も持ちますよ」
「そんな、悪いよ」
「ですが、もしレンさんが倒れてしまっては大変です」
リリーちゃんの言葉に一理あるので、私はリリーちゃんにマードリア様の鞄を渡した。
「ごめんねリリーちゃん」
「いえ、構いませんよ」
そして私達は、それぞれの部屋に鞄を置いてからマードリア様の元に向かった。
◇◆◇◆◇
「という感じです」
「そっか、ありがとうレンちゃん。また改めてリリーにはお礼を言わないと。それと、私のせいってところも引っかかるから聞けるなら聞きたいけど……」
気に障ったら申し訳ない。けど、知りたい。い、一応、私も無関係ではないのだし、し、質問くらいは別にいいよね。別に無理なら答えなくてもいいんだし〜。あっ、そうだ。
「そういえば、今何時?」
「十八時半ですね」
「それじゃあ夕食までまだ時間があるね。……ごめんレンちゃん、私ちょっと出てくる」
「え、マードリア様は気絶なさっていたのですから、今日は安静にしていないと……」
「すぐに戻るから。それじゃあ行ってくるね」
私は心配するレンちゃんを余所に、チコとガーラの部屋に向かった。
鞄はある一定の重さになると本人しか開けられないようになっています。
最初の頃はマードリア以外鞄の中身は空ですが、一定の重さに達してないのでリリーも開けられました。
(一旦完結したら番外編でこういうところの話は書きます)
次話 本日中
pv2万⁉︎ありがとうございます!