みんな心配してくれました
ふかふかの地面だ。 ……て、んなわけあるかーい!
目を開けると、大多数の方々に見つめられていた。
少し恥ずかしい。
「マードリア、大丈夫? 心配したのよ」
「マードリア様、目が覚めて何よりです」
「びっくりしたよ。本当に、びっくりした……」
「何ともないですか?」
「今起きたばかりの人にそんなに話してもびっくりするだけですよ」
「だ、大丈夫だよ。みんな心配してくれてありがとう」
どうやら医務室に運ばれたみたい。そりゃ運ぶよね。
「あ、あ、リアー! リアが起きた‼︎」
医務室のドアが開いたそうそう、お兄様が目に涙を溜めながら駆け寄ってきて、痛いほど私を抱きしめた。
「リア、リア〜」
「お、お兄様、少し苦しいです」
「あ、ごめんよ。でも、本当に良かった」
お兄様は私の肩に頭を置いて本当に嬉しそうにしている。
「マードリア、起きたんですね。良かったです」
「マードリア起きたの? それは良かった」
「マード、生きてて良かった」
「…………」
お、多い、多いよ。医務室にいる人の様子を見にくる人数じゃないよ。
「みんな、マードリアが倒れたって聞いて心配してたんだよ。だから、これからは気をつけてね」
「マードリアはみんなに愛されているんですね。なんか、不思議」
「マードリア様、この後部屋には戻られますか?」
「うん、戻るよ」
「それでは、私は部屋に戻って整えておきますね。失礼します」
レンちゃんは私の前とドアの前で二度お辞儀をすると、医務室を後にした。
「マード、頭大丈夫?」
コリー王子様の手が私の額を触る。
「ちょ、コーリー何してるの⁉︎」
「マードの頭が大丈夫か確認してる」
その言い方なんかやだな〜。
「大丈夫だと思いますが、コリー王子様的にはどうですか?」
「大丈夫」
「大丈夫じゃないわよ! コーリー、一体何をやっているの!」
「……? マードの頭が大丈夫か調べた。マードやっぱり頭悪いの?」
「大丈夫ですよ。アイリーン様も少し落ち着いてください」
「私は落ち着いているわよ!」
どうみたって落ち着いてないよ。なんかお兄様は怖い笑顔浮かべてるし、リリーは固まっているし、チコはなんか嬉しそうだし、フーリン様、ビケット王子様、ガーラはなんか呆れたような顔をしてるし、カヌレ様は……よく分からない。
うーん、このヒートっぷり、すごい心配してくれてたからアイリーン様も確認したいのかな?
私はアイリーン様の手を取って自分の額に触れさせた。
「マ、マードリア、何しているのよ⁉︎」
「いえ、アイリーン様も私が大丈夫なのか確認したいのかと思いまして。違いましたか?」
あ、また赤面。本当、アイリーン様は照れ屋だなぁ。でも確認したいわけじゃなかったみたいだからまた怒られるかな?
「はあ」
アイリーン様の顔はその溜息とは真逆の笑顔だった。
「本当、マードリアには敵わないわね」
アイリーン様は私の耳に口元を近づけると
「いつか私が、あなたの顔を赤く染めてみせるから楽しみに待っていなさい」
と囁いた。
アイリーン様の言葉の意図はよく分からなかったが、怒ってないようで安心した。
自分で書いててなんだけど、マードリアも一種の天然なのではと思い始めた。いくらなんでも鈍感すぎだ。まあ、そもそも自分が恋愛の中心にいるなんて思っていないから仕方がない……のか?
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