問題が発生しちゃいました!
r15に引っかかるか分かりませんが、念のため気をつけてください
暖かな和気あいあいとした空気を切り裂く厄介な人物がやってきた。
「あーら、たかだか合格一つでそんなに褒められるなんて、さぞ取り柄のないお方なんでしょうね。ドルチエ王国の公爵令嬢といってもその程度ですのね」
こいつ、あの一件以来私達に嫌味ったらしく絡んできて! しかも今回は取り巻きもついてるし。
「あのね!」
「ほっときなさいマードリア。そんなことしか言えない可哀想な人に構うだけ無駄よ」
「な、何よ! 私より身分が高いからって調子に乗るなんて!」
「なら、少しは私を超える努力をしなさい。あなたは既に私、いえ、私達には能力で劣っているのだから」
私達は学園で一番上のクラスで、クレア王女はその一個下のクラス。ちなみにクラスは全部で五クラス。能力順で分けられている。
アイリーン様は詠唱を済ませると、クレア王女に見せつけるかのように魔法を放つ。
「別にそれくらいの魔法、私なら容易いことですわ。もっと凄い魔法を見せてやりますわ!」
クレア王女は取り巻きを連れて別の的の列に並んだ。
「ほんと、くだらないわね」
「マードリア様、あの方は一体なんなのですか?」
「さあ、分かんない。たぶん自分が一番じゃないと気が済まないんじゃない?」
「マードリア様達が良い人達ですので忘れていましたが、彼女みたいな貴族もいるのですね」
「だね。私も、出会ってきた貴族に恵まれていたと思うよ。さ、どんどんやろう。次レンちゃんやる?」
「あ、はい!」
レンちゃんはこう言わないと、ずっとみんなに譲って順番が全然こなくなりそうだ。でもなんか、そういう消極的なところが守ってあげたくなっちゃうんだよね。背も小さいし。
そして、レンちゃん、リリー、ガーラと終わり、私の番になった。
できるだけ魔力を抑える。抑えてよ〜。
以前、精霊解放詠唱というのを唱えたら、体の中から精霊が出てきた。
そこで、別に詠唱をしなくともしっかりとイメージすれば魔法は使えるということを聞いたが、それをできるのは上位精霊以上を宿している人だけらしい。
だから、私は別に詠唱を唱える必要はないのだが、そんなことで目立ったらなんかいろいろ面倒くさそうなので普通に詠唱をする。
『我に眠りし精霊よ、今その力を放ち、かの的に水の玉を打ちつけよ』
できるだけ力を弱くしてもらうように精霊にお願いしたので、威力はみんなより劣るが無事合格をもらえた。
体への負荷は我慢できる程度の頭痛で済んだ。
「これで無事全員合格みたいだね。ボク先生に他にやることないか聞いてくるよ」
「うん、行ってらっしゃい」
さほど待たずして帰ってきた。
「なんか授業内容を書いた紙忘れたから取りに行ってくるって」
その説明を受けた後に先生も全員に同じことを言った。
「いいか、絶対危険なことはするなよ! いいな!」
先生は念を押してから学舎のほうに走る。
「これで、あなた方に私の力を見せつけられるわね。いい、見てなさい、これが私とあなた方の格差よ!」
クレア王女が詠唱をすると、雲行きが怪しくなってきた。
「ね、ねえ、あれ、やばくない?」
チコが口に出さなくてもみんな分かっている。
クレア王女の右手の前には直径三メートルは余裕でありそうな巨大な水の玉が今か今かと放たれるのを待っている。
「クレア王女! 今すぐ魔法を取り消しなさい!」
「そんなこと、私もできたらやっていますわよ!」
私たちはまだ魔法の取り消し方を学んでいない。つまり、今この場で対処ができない。
「ボク、先生呼んでくる!」
「クレア王女、先生がくるまで耐えなさい」
「む、無理よ、もう限界よ……」
このままでは少なからず被害が出る。下手したら怪我人も出てくる。
あの魔法を止めるには同じくらいの力を持った魔法をぶつける必要があるが、みんなに宿っている精霊は大体中位。つまりあれくらいの大きさの魔力が必要だが、そうなると被害は二倍になるかもしれない。
それに、あれほどの魔法を創り出すには時間もかかる。詠唱をしている間に放たれていてもおかしくないほど、水の玉は揺れ動いている。
私なら……。だけど、どれほどの負荷が体にかかるのか……。
「も、もう、無理」
クレア王女の魔法が放たれたその瞬間、きれいさっぱり魔法は消えていた。
それもそのはず、私が小さなエネルギー玉を水の玉に向かって放ったからだ。
「ふぅ、良かっ、だぁ──‼︎」
私の口からは胃の中の物が吐き出され、そのまま地面に倒れた。みんなが駆け寄ってきた気がするが、私は気を失ってしまった。
次話 2月5日