この時がやってきちゃいました!
ついに、ついにこの時がきた!
やっと、やっと王女と主人公の百合を間近で見ることができる!
あれから改良に改良を重ね、もう完璧とも言っていい攻略ノート。これさえあれば、百合の花を咲かせるのも時間の問題!
ああ、やばい、めっちゃ楽しみ。
「マードリア、あなた、どうして学園の門の前でにやけているの? あまり口にしたくないのだけど、少々気味が悪いわよ」
すっかり成長してゲーム時と同じ容姿になったアイリーン様。しかしその性格は悪役令嬢だとは微塵も感じさせない。
成長したな〜。いやー、立派になって。
「マードリア、あなたは気分が高揚した時かはよく分からないけれど、そうやって私の頭を何も言わずに撫でるのをやめてくださる?」
「あ、すみません、つい……。今後は気をつけます」
「マードリアはそう言うけど、あたしは無理だと思うな。半分癖みたいなものじゃん」
「チコ、そういうことは言わないくていいわよ。私も期待なんてしていないもの」
「なんか、成長するたびに二人とも私に対しての好感度が低くなってきてないですか?」
チコとアイリーン様は目を合わせて、二人は私の頭に手を置いた。
「逆だよ」
「マードリアはほんと、そういう余計なことは気にするのだから。わざわざ嫌いな人のそばにいるほど私達は優しくないわ」
それもそうか。
「三人とも、ここにいては他の生徒の邪魔になります。早く中に入りましょう」
優しい声色、甘い花の香り、そして感じる圧倒的オーラ。見なくとも分かる。フーリン様だ。
「フーリン様、おはようございます」
「おはようございます。そういえば、コーリーは一緒じゃないんですか?」
「あの子なら私よりも先に行きましたよ。間違えて執事と一緒に行ってしまったので」
「そうですか。それでは僕達も早く中に入りましょう。部屋の確認や明日の確認などしないといけませんしね」
「そうだね、それにフーリン皇子様がここにいるからみんなにすごく注目されちゃうし。は、早く行こう!」
チコは相変わらずの人見知り。でも、なんか人に弱みがあるのは安心する。
「それでは、男子寮はあちらですのでこれで失礼します」
「はい、また校内で会いましょう」
フーリン様が男子寮へと向かったので、私達は女子寮に向かう。
女子寮の入り口の脇には既に人集りが出来ている。あそこで部屋割りが張り出されているみたい。一昔前の受験の合否発表に見えなくもない。
「人が多いわね」
「平民の子達は貴族達に遠慮して見に行けないみたいだね」
平民の子たちは貴族たちと違ってメイドや執事が部屋に荷物を運んでくれているわけではない。
だから、大きな荷物を抱えて貴族が退くのを待っている。
「せめて見終わった人だけでも退いてくれたらいいんですけどね」
「そうだね、ここはアイリーン様にでもお願いしよう」
「私が?」
「だって、マードリアは侯爵家だからあたしたちより権力ないし、あたしはそういうの苦手だから。そもそもこの中で顔が広いのってアイリーン様でしょ」
アイリーン様は溜息をついて困り顔ながら微笑んでいる。
「仕方ないわね」
アイリーン様は前の人たちに、確認し終わったらすぐに退散する様に伝えていく。
流石にドルチエ王国の王女相手には逆らえないので、徐々に人数が減っていく。
かなり人も減ったので、私は一番近くの平民の子に声をかけた。
「人も少なくなったから確認しにいきなよ。荷物邪魔だったら見ててあげる」
「で、ですが」
「いいのいいの、ほら、見ておいで」
平民の子は一度迷いを見せていたが、頭を下げて走って確認しに行った。
「あの、ありがとうございました」
女の子は荷物を持つと、走って寮内に入っていく。
「マードリアは相変わらずだね」
「まあ、ずっと外にいるのも可哀想だし。でも、一人一人の荷物を見ていたらキリないね」
「だったら平民同士で荷物の見張りをさせれば? そしたらあたしたちが見る必要ないし」
「そうだね。そうしよう」
私は比較的近くにいる平民の子たちにチコが言った事を伝えた。
平民の子たちはすぐに実行してくれたのでほとんどの子が寮に入っていくことができた。
「マードリア、チコ、私達もそろそろ寮に入りましょう」
「そうですね、先程の様に混雑することはなさそうですし」
私達も部屋を確認しにいくことにした。
始まりました学園編!そして始まるマードリアの無駄な計画実行!(学園編は本格的に百合が入ってくるので女子同士の絡みが非常に多くなります)
必要かはわかりませんが、一応女子三人の口調です。
マードリア アイリーンがいる時は敬語、チコだけの時はタメ
アイリーン お嬢様口調
チコ タメ
次話 本日中(頑張ります)