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迷子の裏側は修羅場でした?

 マードリアが精霊を宿している時、チコとアイリーンの間にある変化が起こっていた。


「マードリア、遅いわね」

「マードリアのことだしどうせ」

「「迷子になってる(わ)ね」」

「マードリアのあの迷い率はどう考えたって病的なものよ」

「一応自覚あるみたいだけど軽度なものだと思っているみたいですしね」


チコはしばらく洞窟を見つめた後、「よし」と溢してアイリーンの方を向く。


「アイリーン様、マードリアが来るまで時間がありそうですので、少しいいですか?」

「いいわよ、て、ちょっと……!」


 チコはアイリーンの返事を聞くなり、腕を掴んで人気の無い所に向かった。


「一体どうしたのよ」

「あまり人に聞かれたく無い話なので」


チコは不敵な笑みを浮かばせている。


「アイリーン様、あたし、マードリアを狙ってもいいですか?」


アイリーンは意味がわからないという表情を浮かべている。


「どういうこと?」

「そのままの意味ですよ。マードリアをあたしの恋人として狙ってもいいですかってこと」


アイリーンが明らかに動揺し始めた瞬間を、チコは見逃さなかった。


「ふ、ふざけてるの?」

「なんでおふざけでこんなことを言わなくちゃいけないんですか」

「だって、女性同士なんて……」

「あたしが女性同士の恋物語が好きなことは知っているじゃないですか」

「でも、あれは物語よ。現実はもっと非情で冷酷で残酷よ。周りからは奇異の目で見られるし、結婚だって認められていない」


チコの顔は笑みを浮かばせたまま、しかし、顔つきは厳しいものとなった。


「それが、アイリーン様の答えですか?」

「答えというか、世間の……」

「何故世間が出てくるんですか? あたしは、アイリーン様に世間の意見なんて聞いてません。ただ、マードリアを狙ってもいいですか? って聞いただけです。アイリーン様の正直な気持ちを教えてください」

「……や」

「なんですか?」

「いや、いやよ!」

「どうしてですか?」

「それは、分からないけど……」


アイリーンの顔が段々と赤らんでいく。

そんな様子を見てチコからは笑顔が消え、大きく長い溜息が出てきた。


「本当、煮え切らない返事ですね。もういいです、あたし知ってますし」

「何をよ」


アイリーンの手は震えている。アイリーン自身もこの後何を言われるのかは分かっている。


「マードリアのことが好きなんですよね、恋愛対象として。正確には、最近気づいたんですよね? でも、あたしが見る限りもっと前から好きだったみたいですけど」


アイリーンの顔は真っ赤になった。それはもう、湯気が出るのではないかと思うほど。


「ち、ちが!」

「それ、本気で言ってますか? マードリアの前で言えますか? 私はマードリアが恋愛対象に入ることはありませんって宣言できますか?」

「…………」


アイリーンは言葉を発せなくなってしまった。

チコはその様子を見て困ったように笑みを浮かべる。


「アイリーン様の言う通り、現実はとても残酷です。同性同士の恋愛なんて理解されないと思います。ですが、それで諦められるほど安いものでもないです。アイリーン様は後悔しませんか? 現実は残酷だと諦めて、マードリアが他の男性に取られるのを」

「それは……」

「愛に制限なんてないんですよ。愛は何よりも自由な感情です。それ故に強いんです。あたしは、諦めて欲しくないです。別に、結婚がゴールじゃないんですよ。抗ってみませんか? 現実という名の残酷な敵に」


チコはアイリーンに手を差し出す。


「私は、一国の王女よ」

「でも、恋をしているのはアイリーンという名のただの少女です」


アイリーンはチコの手を握る。そして、お互い柔らかい笑みを浮かべている。


「チコもマードリアのことが好きだったんじゃないの?」

「親友として好きですよ。ですが、アイリーン様が隙を見せればいつでも狙いにいきます。こんな中途半端な女に奪われたくなければ、ちゃんと自分の心と向き合って、後悔ない行動をしてくださいね」

「もちろんよ。でも、今のチコは少しマードリアに影響されたみたいね」

「実際、マードリアの言葉も混じってますよ」

「でしょうね」


二人は手を離し、お互い見つめ合う。


「戦ってみるわ、私なりに。チコは応援してくれるの?」

「残念ながら、あたしはマードリアを応援します。ただ一つ助言をするなら、マードリアはかなりの鈍感だから、本心を言うまで気づかないと思いますよ」

「それくらい知ってるわよ。ずっと片思いしていたのだから」

「ですね。そろそろ戻りましょうか。結構暗くなってきてますし。流石にマードリアも戻ってきている頃でしょう」

「そうね。でも、毎度毎度同じ罰っていうのも張り合いがないわね。今日は何かしたふりをして、実際は何もしてないっていう罰でもしようかしら。マードリアならしばらくの間は気にしていそうね」

「あたしも協力します。でも、もしまだ戻っていなかったら結構まずい状況に直面しているかもですね」


チコの何気ないこの言葉が、アイリーンの大号泣に繋がるのであった。

10歳編完結です!

皆さまここまで読んでいただきありがとうございます!

次話からは遂に学園編です!

これからもよろしくお願いします!


次話 本日中


ここまで読んで少しでもいいなと思いましたら感想、レビュー、ブクマ、評価お願いします!

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