帰宅します!
彼女の泣き声も落ち着いた頃、ようやくランプの道に出ることができた。
そこで彼女が薄汚れたフードを被っていることから、平民だということが分かった。
綺麗な青い目の周りは真っ赤に腫れ上がっている。
「やっと見つけました! 一体どこに行っていたのですか? 皆さんもう終わっていますよ」
「すみません、道に迷ってしまって」
「とにかく、早く行きますよ──て、貴族のご令嬢⁉︎え、何故こちらに、いえ、えっと、え⁉︎」
貴族担当の案内人よりも若そうな女性は、私を見てものすごく困惑している。
「ドルチエ王国侯爵家、マードリア・フレーバです。実は、部屋から戻る際に迷ってしまったのです」
「あ、えっと、ご無礼を働き申し訳ありません。このランプの道を辿って行けば外に出られますよ」
「そうですか、ありがとうございます。──もう迷子にならないようにね、お互い様だけど。あ、あとそれあげるね」
私は彼女に手を振って教えてもらった道に沿って歩く。今度はちゃんと上を見ながら。
「あ、あの、ありがとうございました」
背後からのお礼を背中で受け、そのまま歩き続けた。
あ、やばい。なんか今の私カッコ良かったかも。
そんな自惚れの時間は、外に出たと同時に終わってしまった。
「マードリア‼︎ あなたまた迷ったわね!」
あ、今回はマジでやばそう。よくよく見ると、チコとアイリーン様、それにコリー王子様以外の貴族はもう帰っていた。
「君、この子すごい泣きながら心配してたんだから謝りなさい。それとこれ、魔法を使う前にしっかり読むように」
女性は一冊の本を渡すと帰っていった。
「べ、別に泣いてないわよ。あの人が変なこと言っただけだから!」
案内人の女性とアイリーン様、どっちが本当のことを言っているのかは顔を見れば明白だ。
「アイリーン様、ご心配をおかけしてしまい申し訳ありません。それと、チコとコリー王子様も私が来るまで残ってくださりありがとうございます」
「全然いいよ」
「フーリンがね、マードリアが戻る前に帰って申し訳ないって言ってたよ」
「そうですか。フーリン様にはまた改めて謝罪しませんとね」
「マードリア、目瞑りなさい」
またデコピンかな、あれ何気に痛いんだよね。
「もういいわよ」
何もされなかった。いや、たぶん何かされてる。絶対してる!
「早く帰るわよ。もう暗くなってきているし」
「え、まってくださいアイリーン様! 一体何をしたんですか⁉︎」
「内緒よ」
「えー、チコ、アイリーン様何をしたの?」
「教えなーい」
「コリー王子様……」
「僕、チコに目隠しされて見てなかった」
「え、本当に何したんですかー!」
チコとアイリーン様は私が慌てているのを見て二人で笑っていた。
本当、今日は散々な日だよ。
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