精霊が宿っちゃいました!
洞窟内は暗く、ランプは設置されているが、それでも目の前さえはっきりと見えない。
「ああ、言うの忘れていたが、精霊はこれから君たちのパートナーになる。精霊にとっていくら君たちが貴族だからって関係ない。嫌われれば魔法なんて使えなくなるから、肝に銘じておくように。
──よし、着いた。一番前の子から順番に行って」
石扉が開き、女の子が中に入って行った。
女の子が中にいるであろう間は隙間から青い光が漏れ出ている。
「はい次」
光が消えたらすぐに、女性は次入るように指示をした。
そして、ついにアイリーン様の番がやってきた。
「それじゃあ、行ってくるわね」
アイリーン様はそう残すと、石扉の中に入って行った。
もしこれがハイファンタジーの世界なら、確実に死亡フラグが立っている。
「あ、終わったみたいだからあたし行ってくるね。マードリアもすぐにおいでね」
「うん、行ってらっしゃい」
チコがいなくなったことにより、さらに興奮が増してきた。
ただ、それと同時に何故か不安も募ってくる。
例えるなら、今まで行くの楽しみにしていたのに、いざ前日とかになると何故か行きたくなくなっちゃうあれだ。
「次」
ついに呼ばれた。私は緊張しながらゆっくりと部屋の中に入る。
部屋に入った瞬間、部屋全体が青く光った。
そして、床の魔法陣的なやつから女の子の精霊が現れた。
「えっと、あなたが私のパートナー?」
「はい、よろしくお願いします」
女の子が差し出してきた半透明の手を握ろうとすると、また新たに精霊が現れた。今度は天井から。
「なあなあ、どうせなら俺のパートナーになろうよ。君、すごく面白い。今までいろんな面白い奴見てきたけど、君は別格だ。“異世界転生者”、いいね〜」
褐色の男の精霊が、私の目の前に降りてきた。普通ならきっと驚くところだろう。
だが、それ以上に異世界転生者だと見破られた事に驚いた。
「ああ、異世界転生者ってことを見抜いた事に驚いてる? いや〜こう見えて俺、片手に入るくらいしかいない最上位精霊なんだよ。だから、そんな中位精霊なんかより俺と組んだ方が得だよ」
そう言って褐色精霊は私に手を伸ばしてきた。
「あら、最上位精霊の中で“一番最弱”ってことを忘れているわよ」
また新たな精霊が現れた。一体何が起こっているの?
「あなた」
「わ、私ですか?」
「ええ、絶対に彼と契約してはダメよ」
「おい、変なこと吹き込むなよ!」
「吹き込むわよ! 第一、精霊と人間の性別が違えば大問題よ!」
「えっと、具体的にはどんなことが起こるのですか?」
「分かりやすいのだと、体が中途半端に男になるわ。そういう感じで、いくつもの急激な変化に体が追いつけなくなって、すぐに死ぬ」
「まじっすか」
それは本当に勘弁してほしい。
「平気だよ、俺ちゃんと力の制御するし」
「そういう問題じゃない! そこの精霊、早くパートナーになっちゃいなさい!」
「え、ああ、はい!」
さっきまで空気と化していた精霊は、急いで私に近寄ってきた。しかし、透明な壁みたいなものができ、彼女と私は触れることができなくなってしまった。
「中位精霊なら引っ張り出すことは可能だ」
ドヤ顔でそう言う彼に少し、本当に、本当にほんとーに少しだけど殺意が湧いた。
「それもそうね」
女性の精霊は男の精霊を風魔法? で吹っ飛ばすと、私に近づいてきた。
「あなたが私の力を使う度、体に負荷がかかってしまうけど、彼から守るためには私があなたと契約した方がいいと思うの。どうかしら?」
「えっと、早死にとかは?」
「大丈夫よ。魔法を使う度に体に負荷がかかることは避けられないけれど」
もしこの女の子の精霊を宿したところで、あの精霊は契約解除ができる力を持っていると、今までの流れからそう捉えられる。なら、魔法を使う度に負荷はかかるけど、この精霊と契約した方が安全ではある。
「分かりました、よろしくお願いします」
私が手を差し出すと精霊が私の手を握る。すると、精霊は粒子となって私の体に入っていく。
「ごめんね、君と契約できなくて」
「いえ、私こそ力不足ですみません。これからの人生に幸があることを、陰ながら願っています」
女の子の精霊は笑顔を見せると、どこかに消えていった。
めっちゃいい子だな〜、あの子と契約したかった。
「ちぇっ、仕方ない。ここは引くか」
男の精霊もどこかに行ってしまった。
精霊が完全に宿ると、向かいの壁が開いた。その先には言われた通り、青い光が道を示すように光っていた。
次話 2月2日
の予定ですが、できれば10歳編は早く終わらせたいのでもしかすると今日もう一話投稿出来るかもしれません。
(書き溜め無くなってるんで本人の気力次第です)