十歳になりました!
あっという間に五年が経ち、十歳になりました。
貴族のみんなと仲良くなって、私の貴族生活が大きく変わりました。
でも、その話はいつかまたってことで。
さてさて、もう言っちゃいますが、今日の私はテンションが高いです。そりゃもう、脳内で一人語りしちゃうぐらいには。
十歳最大のイベント、それは何といっても魔力精霊を宿すこと!
お兄様が魔法を使っているのを見て、私はより一層この日を楽しみにしていた。
馬車を走らせて約三時間、ついにやってきました精霊の洞窟!
「おはようマードリア」
「おはようチコ。相変わらず早いね」
「後に来ると、みんな誰が来たんだだろうって注目するでしょ。人見知りは相変わらずだからそういうの嫌でね」
確かに、降りる時だけ異様に視線を感じた気がする。
「あんな感じで」
みんな、馬車がやってくるとそっちの方を向いた。
見知った馬車からは見知った二人が降りてきた。
二人は私達を見つけると、少し大人びた笑顔を見せた。
「おはようございます、アイリーン様、コリー王子様」
「おはようマードリア、チコもおはよう」
「おはようございます」
「マード、前見たときより小さくなってる」
「コリー王子様が成長なされただけですよ。それに、一ヶ月前も同じこと言ってましたよ」
「じゃあ、会う度に小さくなってるんだ」
「だから私が小さくなったわけではないですって……」
あれから可愛らしさと引き換えに美しさを手に入れた二人は、ゲーム時の顔に近づいてきた。
チコはゲームで見たことがないが、大人びてきたのは間違いない。
そして最後に、一際目立つ馬車から降りてきたのはフーリン様だ。
「皆さんおはようございます。ついにこの日がきましたね」
『おはようございます、フーリン(皇子)様』
「フーリン様もやはりこの日は楽しみでしたか?」
「もちろんです。魔法が使えるようになるのは子どもの夢です」
「そうですよね、私もお兄様が使っているのを見てとても羨ましかったです」
「あたしの兄様もよく使ってるよ。使用人達は兄様が喋っているのを見てよく喜んでるんだけど、本当、一体兄様をなんだと思っているのか」
まあ、カヌレ様が喋っていたら、うん。
アイリーン様も同じことを思っていたのか目が合った。が、すぐに逸らされた。
最近こういうことがよくある。
今までなら絶対私の隣なのに、ここ最近はチコを間に挟んで距離を取ってる。
別に嫌われているわけではない。
よく三人で遊ぶし。
「兄上もよく使ってる。魔法ではカーターにライバル視してもらうって部屋でぶつぶつ言ってる」
コリー王子様、それはたぶん言っちゃダメなやつ……。
あとお兄様、やっぱりライバル視してなかったのか……。
「貴族の子どもたちは揃ったか? 男女分かれて一列に並べ。男子は俺に、女子はこっちの女の前に並べ」
今回の洞窟内の案内人と思わしきローブの人が男女一人ずつやってきた。
「では、また後で会いましょう。コーリー、行きますよ」
いつの間にか二人は結構仲良くなっていた。
コリー王子様は良くも悪くも自由だ。だからフーリン様とは対極の存在である。でも、だからこそ、相性が良いのかもしれない。
「二人とも、私達も行くわよ」
「「はい」」
アイリーン様、チコ、私の順で並ぶ。
女性は私達一人一人に名前を聞いてチェックを入れていく。
男性陣はもう終わったのか洞窟に入っていく。
「はい、全員揃っているな。男性陣が先に中に入ったから、一定の距離を取るために先に注意事項だけ伝えとく。まず、精霊を授かる部屋に入るために石扉を開ける必要がある。ちゃんと押し開けてから入るように。石扉は一人じゃないと開かないからうちは手伝えないから、それ以降は一人だ。もう十なんだ、一人になるくらいできるでしょ。それと、精霊を授かった後は青い光に従って出ること。まあ、中に入ったら分かる。以上、離れないようについて来て」
私達は彼女の後に続いて一列に進んでいく。
10歳編始まりました!(といってもそんなに長くないですが)
次話 (できたら)本日中
頑張ります……