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過去を振り返っちゃいます!

少し長いです。そして、5歳編はこの話にて終了です。

 一通り本を読んだ私達。だけど、それぞれ読んだ本が違うため、私とチコはともかく、アイリーン様が語ることは不可能なので本の感想会はやめることにした。


「それにしても、カヌレ様はよく私に話しかけてくれたよね」

「あたし達が行っても意味ないでしょ。だから、兄様にお願いしたんだ」

「カヌレ様って無口な方よね?」

「そうですね。父様やあたしに対してはそうではありませんが、他の人には無口ですね。よく使用人達を困らせてますよ」


ああ、なんとなくその光景が目に浮かぶ。


「でも、本当に良いお兄様だと思うよ。すごくチコのことを大事にしているし」

「カーター様だって、マードリアのこと異常な程に大事にしているよ」

「たしかにそうね、何か決定打となるきっかけとかあったの?」

「うーん、物心ついた時から私に甘かった気はしますが……」


シスコン度が上がったのは、間違いなくあの出来事以降だ。


◇◆◇◆◇


 それは、私がもうすぐ三歳になる頃だった。


「マードリア様! 一体いつまで寝ているのですか! 早く起きなさい!」


この頃の専属メイドは性格がものすごく悪かった。

自分の出世しか考えておらず、その為に私をいかに優秀にするかで必死だった。


「まだお日様昇ってないよ」

「侯爵家の令嬢たるもの、奥様、カーター様よりも早く起きるものです! さあ、早く着替えて食堂に行きますよ!」


メイドは無理矢理ベッドから私を下ろし、強引に服を脱がせて着替えさせた。

正直ものすごく痛い。髪の毛を整える時も(くし)を乱暴に入れて無理矢理とかすから、終わる頃にはハゲるんじゃないかと思うくらいの髪の毛が落ちている。


「それになんですかその言葉遣いは。貴族たる者、常に上品でいなくてはなりません。本当に貴族としての自覚はあるのですか?」


いつもこんな感じだ。

本当に嫌気が差してくる。


「おはよう。マードリアは今日も早いわね」

「おはようございますお母様」

「おはようございます奥様。マードリア様はとても優秀で良い子でして、本当、マードリア様の専属メイドになれて誇らしいです」

「私も専属メイドにあなたを推薦して良かったわ。あなたは学生の頃から信頼がおけるもの」


お母様とこのメイドは学生時代ペアだった。ペアというのは、学園に入学した貴族と平民を一人ずつ組ませ、平民は貴族のお世話をするという制度だ。

そこで貴族の信頼を勝ち取れば、そのまま出世コースというわけ。

ちなみに、王女(悪役令嬢)と主人公もこの関係。


お母様はこのメイドに多大なる信頼を寄せており、私が訴えたところであまり意味がなかった。何せ、このメイドはお母様の前では本当に良いメイドを演じているから、信じられないのだろう。

私もそれが分かっているから、お母様を責めたりはしない。

それに、今はお父様が仕事で出張をしていて家にいないから、迷惑もかけられない。


 専属メイドは担当の子の勉強を教える必要がある。

だから、専属メイドは頭が良くないと務まらないのだけど、このメイドに教え方の脳はない。


一度適当に教えただけで問題を解かせる。もちろん、子どもにやらせる問題くらい解けるが、奴は時間までも測っている。

一秒、いや、それ以下でも遅れたら、きつい叱責と罰が待っている。

何よりたちが悪いのが、傷跡が出ないように殴るなどはしない。ただ、魔法で私の周りの空気をなくしてしばらく息ができないようにさせたり、内臓を痛めつけたりしてくる。


 だから私は、今日も庭にある大きな木の下で震えながら小さくなって隠れている。

あのメイドは勉強時間内であれば絶対に探しに来ない。私が逃げたなんてバレたら出世に響くから。

問題なのは、勉強時間が終わった後。メイドは私を見つけるなりすごい形相で痛ぶってくる。


そして、ついにこの時間がやってきた。


見つかる前に一つだけ教えよう。どうして私が庭の木の下に隠れているか。

我が家の庭には木が沢山生えており、私を見つけるにはその木一本一本探さなければならない。

それに、木には落ちた枝や葉っぱがあり、その音のおかげで近くにきたらすぐに分かるため、こっそり逃げることができるからだ。


私は耳を済ませて逃げるタイミングを伺う。

この時間はいつも心臓が止まるのではないかと思うほど激しく動いている。

こっちに近づいてきている。音が近くなるたびに私の鼓動は速くなる。


「マードリア」

「いや!!!!!!」


 肩を叩かれたせいで思わず大声を出し、大きく退いてしまった。


「マードリア、どうしたの!」


あのメイドと違う。

私に駆け寄ってきたのはお兄様だった。


「勉強は? どうしてそんなに怯えてるの? ごめんね、大丈夫?」


安心のあまり、私は(心の)年甲斐もなく泣き出してしまった。

お兄様はそんな私を見て慌てながらも、ゆっくりと私を抱き寄せた。


「大丈夫だよ、マードリア。大丈夫、大丈夫。僕がいるよ」


あまりに大きな声で私が泣いていたのか、ゾロゾロと使用人が集まってくる。その中には例のメイドもいる。

冷たい目で私を見ている。きっと、今まで以上の罰が待っているのだろう。


私は背筋が凍り、お兄様をより強く抱きしめた。


「誰だ」


お兄様の冷たい声が響く。


「マードリアをこんなに怯えさせてるのは誰だ!」


周りの空気が冷たくなったのが分かる。

よく見えないが、お兄様が今まで見たことのない冷たく、怖い顔をしているのが分かる。


「マードリアは良い子だ! 強い子だ! そんなマードリアをこんなにさせた奴は誰だ! 名乗り出ろ!」


お兄様は私を抱き上げて、使用人達の方に向いた。


「早く名乗り出ろ! ここにいるのは分かっている。マードリアはお前たちの誰かの顔を見てさらに怯えた! 早く前に出て来い!」


お兄様はずっと私のことを撫でながら、言葉を繰り返していた。


「一体何の騒ぎだ? カーター、マードリア、一体どうしたんだ?」

「この集まりは何? 誰か説明しなさい」


 出張から帰ってきたお父様と、屋敷で仕事をしていたお母様も、この異質な光景に驚いてやってきたのだろう。


「お父様、お母様。実は、この中にマードリアを酷い目に合わせている者がいます。僕がマードリアに声をかけた時、尋常じゃないほど怯えていました。あのマードリアが僕の前で泣きました」


私の行動がよほど異常だったのか、お父様とお母様も厳しい目つきをした。


「マードリア、教えてくれないか? 一体どうしたのか」


怖い。口にしたら何をされるのか。本当に怖い。


「マードリア、僕がついてるから大丈夫。もしマードリアに手を出す者がいれば、僕が絶対に許さない」

「カーターの言う通りよ。お母さんもついているわ」


お父様とお母様の手が私の頬に触れている。

お母様には本当に申し訳ない。だけど、もう耐えられない。それに、私を守ってくれる家族がついている。


「お、父、様……」

「うん、どうした」

「専属のメイドを、変えて、ほしい……です」


この一言でお母様はメイドに詰め寄る。

お父様の顔付きはさらに厳しくなった。


「一体何をされたんだ? いや、やっぱり言わなくて良い。見せてもらった方が早い。少し待っていなさい」


 お父様は屋敷から魔道具の指輪を持ってくると、私と自分の指に嵌めた。


「少しだけ、マードリアの記憶を見せてもらうからね」


お父様は私の手を握って目を閉じる。

次に目を開けた時は、とても優しい顔をしていた。だけど、ものすごく怒っていた。


「あとは親に任せなさい。カーター、マードリアと一緒に屋敷に戻っていなさい。それと、そこのメイド以外も仕事に戻りなさい」


お父様の声は極めて穏やかだった。それはもう、怖すぎるくらいに。


「ごめんねマードリア、僕何も出来なくて」

「いえ、お兄様のおかげです。あの時私を見つけたのがお兄様で良かったです」

「…………リア」

「え?」

「あの時、マードリアって呼ばれてすごく怖がらせただろう。だから、僕はこれからリアって呼ぶよ。そしたら、もう怖がらなくて済むでしょ」


お兄様はあの時のことをものすごく気にしていたんだ。申し訳ないことをしてしまった。


「はい、お兄様だと分かれば安心します」

「決まりだね。マードリアのことをリアって呼ぶ人はこの世界で僕だけだよ」

「はい」

「それに、これからはリアが傷つく前に僕が守ってあげる。絶対、絶対だから。神に誓って約束するよ」


神に誓って。それは、この世界で一番強い口約束の文言である。それほど、お兄様は本気なんだ。


「お兄様、ありがとうございます。それと、もしよろしければ今日一日、お兄様と一緒にいてもよろしいですか?」

「もちろん! リアの気の済むまで一緒にいよう」


 それから、あのメイドがどうなったかは知らない。あの出来事の後、お母様にはものすごく謝られた。私はそれを許し、お母様も今まで通り振る舞っている。


だけど、私は知っている。私には見せないように、影ですごく反省し、責任を感じていることを。そのせいか、しばらくはやつれていた。


 そして、ジェリーがやってきた。学園は出てないが、とても優秀である。

そして、私を守る代償として、お兄様のシスコンが酷くなったのであった。


◇◆◇◆◇


 まあ、こんなこと二人には言えないけど。


「そろそろお開きにしましょうか、時間も時間ですし」

「そうね、今日はありがとう。マードリアはもちろん、チコもね」

「こちらこそありがとうございました。またいつでもいらして下さいね」


いつの間にか二人が仲良くなっていて嬉しい。


 私とアイリーン様はチコに別れを言って馬車に乗り込んだ。


「マードリアとチコは町で会ったのね」

「え⁉︎ チコがおっしゃったのですか⁉︎」

「ええ、チコは別に言ってもいいのにと言ってたわよ」


ならわざわざ隠す必要なかったな……。


「今度、私も二人と行こうかしら」

「ええ、流石にアイリーン様は王女様ですからバレてしまうのでは……」

「ちゃんと変装すれば大丈夫よ」


そう語るアイリーン様はとても上機嫌だった。

どうやら、アイリーン様の中ではもう決定事項のようだ……。

皆さま、ここまで読んでいただきありがとうございます!

お兄様の話が書けて満足です!お兄様本当イケメンですね!男キャラの中では結構お気に入りです。

そして、次話からは10歳編が少し、その後15歳編である学園編が始まります!

さらに百合度が増していきます!

これからもよろしくお願いします。


次話 2月1日


ここまで読んで少しでも良かったなと思いましたら、感想、レビュー、ブクマ、評価お願いします!


pv 5000越え本当にありがとうございます

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― 新着の感想 ―
[一言] とてもとても面白いです!応援しています!
[良い点] とても面白く一気に読ませてもらいました これからも頑張ってください 応援しています
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