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失態を犯しちゃいました……。

 チコの家に着いた私達は、公爵家の客間に通された。


「お嬢様がいらっしゃるまで、こちらで少々お待ちください」

「はい」


あまり待つことはなく、意外とすぐにチコはやってきた。


「いらっしゃい! マードリア、王女様」


チコは少し息を切らしながら、本を数冊腕に抱えていた。


「これ、あたしのおすすめ! でもね、父様と母様に聞いたんだけど、侯爵家って一番本を持っているみたいだから、もしかしたら全部持ってる本かもしれない」

「ううん、もし持っていてもチコと話が出来るだけで嬉しいよ。私も何冊か持ってきたよ」


チコは向かいの席に座ると本を並べた。

私も鞄から本を出して並べる。

ちなみに、お母様にはちゃんと許可を取っている。


「これは何の本なの? 見たところ恋物語のように見えるわね」

「これは恋物語ですけど、男女ではなく女性同士の恋物語ですよ。今日はマードリアと一緒にこの事について話すんです」

「マードリアは男性よりも女性が好きなの?」


あー、まー、アイリーン様にとってはそう思えちゃうかもしれない。

実際、前世でも百合女子ってバレた時は恋愛対象が女だと思われてたし。


「いえ、そういうことではないのですが、ただ、女性同士だからこその苦悩、愛、美しさ、心の繊細な繋がり。正直、百合の良さを伝えることはとても難しいですね。全身全霊で百合の素晴らしさを感じる。そして、何より見守りたい。それこそ、百合の醍醐味と言えるのではないでしょうか!

自分自身が百合の対象になる、もしくは百合の間に入るなんて以ての外! 私がするべきことは百合の踏み台となり、より素晴らしい百合の糧となること! 自分があの美しい百合の一部にでもなれることを誇りに思うことこそが私の宿命! 

私が百合の中心? そんなのおこがましい以外のなんでもありません! 

百合を愛す、しかし愛されるなんてことがあってはならないのです! 曲がっていても捻くれた愛でもいいのです! 結果的に美しい百合となれば問題などありません!

──あ……」

※人それぞれです。


やってしまった、百合のこととなると変なスイッチが入ってしまう。

文脈なんてお構いなしの、オタク特有の興奮するあまりの早口が出てしまった。

絶対引いてるよ、ほら見てよ、アイリーン様なんてポカンとしてるじゃないか!

チコも苦笑いだし。


「えっと、よく分からなかったけど、マードリアが女性同士の恋物語を心の底から大好きだってことは分かったわ」

「えと、マードリア、百合ってもしかしてこれの別称?」

「あ、うん。私はそう呼んでる」

「そっか、じゃああたしもこれからそう呼ぼうっと」


気まずい……。


「私も、マードリアがこんなにはまるのだから読んでみるわ。何かおすすめの物はあるかしら?」


気まずい……。


「あたしはこの本をおすすめします。友人以上恋人未満の関係ですから入りやすいと思いますよ。マードリアはどんなのをお勧めする? マードリア?」


気まずい……。


「え、ああ、うん。私もそれがおすすめおすすめ」


あまりの恥ずかしさに頭が一瞬ショートしてしまった。

冷や汗もかいてるし、顔も赤いのではないかと思ってしまう。


「チコ、アイリーン様、申し訳ありません。私ちょっと外の空気吸ってきます」

「あ、じゃあ着いてくよ」

「私も行くわ。また迷うでしょうし」

「ごめんなさい、すぐそこなので少し一人にさせてください」

「さっきのことなら気にしてないよ」

「私も特に何も思わなかったわよ」

「ごめんなさい、二人が気にしてなくても私が気にしてます。失礼します!」


私は二人が追いかけてこないように、走って庭に出ていった。

次話 1月31日

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