5 俺の転落人生
魔力0を宣告された俺には、魔力を得るべく厳しい訓練が行われた。
まずは魔法を覚える基本として体内の魔力感知を行うのだが、俺の場合そもそも魔力がないのである。ないものを感じることなどできない。
さらに、レベルを上げるためにモンスターの討伐にも参加した。モンスター討伐は通常であれば魔法が使えるようになってからである。
だが、ステータス上昇による魔力の取得に一縷の望みをかけ、たくさんの護衛を動員して、俺のレベルを上げていった。
魔力がなく魔法も使えない俺の攻撃方法は、剣で叩ききるだけだった。
魔法の跋扈するこの世界において、魔法の付与されていない武器を使うことは、この上ない恥とされていた。魔法こそが人間を人間たらしめる証であり、ゴブリンやオークなどの魔法を使えないモンスターたちは下等種族なのだ。
俺のレベル上げは決して明るみに出ないよう、いつも真夜中に行われた。
母エリザベスは顔を会わせるたびに無能な俺を口汚く罵った。
護衛たちは俺を嘲笑し、メイドたちは俺に見向きもしなくなった。洗濯されていない汚い服を着て、使用人たちの残飯を食べさせられた。
俺は新しい世界でも弱者であり、孤独だった。幸せになれなかった。
神はどこまで残酷なのか。
そしてついに魔力がないまま俺のレベルは5に達した。
8歳の誕生日を迎えて半年ほどたったある日、父エドに呼び出された。
父に促され部屋に入ると、そこには俺と同じくらいの年格好の少年がいた。
少年はおどおどと自信なさげに下を向いている。
髪の色は俺と同じ銀、目の色も俺と同じ青。
背中に汗がじわりとにじむ。嫌な予感がする。
そして、父は冷たく言いはなった。
「魔法が使えないお前はスチュアート家を継ぐことはできない。この子は分家からとった養子だ。水魔法に素晴らしい適性がある。
彼をアルド・スチュアートとして、我が家の後継者にすることに決めた。」
「そんな……。と、父さん、俺は、俺はどうなるのですか……?」
「今日からお前はもう我が息子ではない。スチュアート領を出て、生涯名を隠して惨めに生きるか、ここで潔く死ぬか。最後の情けだ。選ばせてやろう。」
数分の沈黙と熟考ののち、泣きそうになりながら俺は答える。
「……俺はまだ死にたくありません……。」
俺は惨めでも生きていたかった。
「そうか。では二度と我がスチュアート家の名を名乗るな。今すぐに出ていきたまえ。」
俺は二度目の人生でもうまくいかなかった。
5歳にして神に魔法と尊厳を奪われた。
そして8歳にして父と母を失い、名前すらも奪われてしまった。
主人公のステータス
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(名無し)
レベル 5
生命力 85
魔力 0
攻撃力 30
防御力 28
敏捷 20
知力 20
天運 10
適性魔法 水 風
固有スキル 超筋力
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